Late For The Sky

一番町は片側1車線で、車がのどかに往来していた。
歩行者天国は、まだ実験的な響きがあった。
ゲームもケータイもインターネットもない。
あのころは本屋か、映画が、茶か、パチンコか、
そんな類しかあそびの選択肢はなかった。
けだるい夏の日の午後、
ただで時間をつぶすには、本屋はもってこいだった。
なかでも空調のきいた一番町丸善は、広いフロアに知性が流れていた。
1時間や2時間は平気で立ち読みに歩きまわり、
自分の世界に耽っていた。
立ち疲れするまでいて、ふと通路から顔を出し
出入り口のガラス越しに外を見ると、
いいかげん陽射しも熱さのピークを過ぎていた。
棒になった足で出口に向かう。
店内の蛍光灯と自然光とでは明るさが格段に違い、
しだいに眩しくなってくる。
自動ドアが、俺一人のために大げさに開いた。
涼んだこころと体を覚醒させるかのように
都会の風が吹き寄せ、ふわっと全身をつつみ込んだ。
まちとひとが絡み合い、ざわめきと熱を含んだにおい。
日常に引き戻されるまでの、ほんの数秒のタイムラグ。
あこがれや希望、あきらめと孤独。
やがて自分の想いは雑踏の中にまぎれ込み、かき消されていった。

この記憶は、青空と夕暮れの2トーンのアンサンブル。
俺にとって出発であり、帰着であるイメージ。
よどみに浮かぶうたかたのように、いまも予告なしに消えて
は結ぶ、うつろうThese Daysの象徴であり、残像です。