茨城県常陸大宮市に御前山まんじゅうのお店があります。
店の名は「ひやま」。
山と川、緑と青に囲まれた風光明媚な土地に、
今では一軒だけ残った、おまんじゅう屋さん。

僕は昔、ここを通った時に人に教えてもらって、
1個70円のその味に、めちゃくちゃ感動しました。
味というかね、ホカホカなんですよ。
温度というかね、愛情を感じるんですよ、
おまんじゅう1個の、
そのあんこの、絶妙な甘さからも、
アズキの皮をすこ~し残したこし具合からも。
そして、作りたての熱が残ってる、
命さえも感じる魂のおまんじゅうです。

50年間、作り置きしないで、注文がはける度に
作り増しして、いつもホカホカで食べてもらってきたんですって。

50年間、甘さや食感を変えて、人の味覚の変化に
合わせてきたんですって。

すごいな~、ブレずに変化し続けてる。

朝7時の開店前にはお客さんが待っていて、
午後4時にはいつも閉まってます。
こないだは多摩ナンバーの車でお母さんが
買いに来てたので聞いてみたら、
わざわざおまんじゅうを買うためだけに、
3時間以上かけて来たんですって!

で、僕はそんな親方の姿勢に感動して、
その商売のやり方を尊敬して、
こんな人がいることを、もっと知ってほしくて、
こないだ団体様をお連れしました。

ところがまあ、あんこ離れが進む昨今、
(まわりの10~20代で好きという子はレアなんですよね)
真夏に朝からおまんじゅうというシチュエーションで、
売上げはなかなか厳しかったんです。
伝えたかったことが伝わらなかったもどかしさ…

いろいろと反省点はあって、

まずは「愛にあふれた味」を知ってもらおうと、
試食で提供してもらったんですが、親方が、
「1人に2個あげる」ってきかなかったんです。
いや、1個の半分くらいにして、「もう少し食べたい!」って
欲をあおって売上げにつなげるもんでしょう?
と言ったんですが、親方の商売のやり方と
そのサービス精神にも感服していたので、
そのまま2個提供してもらったんです。

でもね、3人家族なら試食で6個もらえたわけで、
さらに箱で買いますか?っていう結果だったんですね。

「せっかく買ってもらうチャンスだったのに!」
と思うと悔しくて、
しばらく心の中でグチってたんですが、
あるとき、気づいたんです。

あのシチュエーションで、買ってくれた人がいる。

もてあます量の試食をもらいながら、
2箱以上買ってくれた人だっている。
この人たちは、これからも車で買いにくるような
コアなファンになってくれるかもしれない。
少なくとも、あの愛情が伝わった人たちが、
確実にいた!

それで、こないだ行ったとき、
またおまんじゅう2個とアイスコーヒーと
おみやげをいただきながら1時間以上お話する中で
言ってみたんです、

「ひやまさん、僕はずっと、あの試食に2個ってのが
心にひっかかってたんです。でも最近思ったんです。
あの時買ってくれた人は、おまんじゅうに込められた
気持ちも、商売のやり方も、その愛情を感じてくれた人
だったんだって。」

そしたら親方は自分で自分にうなずくように、
「おれは50年前からそういうやり方を変えてないんだ。」
と言いました。

そして、移り変わる時代へのちょっとさみしい話と、
未来への希望を話してくれました。

僕は、親方の希望につながるような
返事をできたと思います。

この出会いに心から感謝します。



心屋認定カウンセラーを目指すマスターコース35期受講中
日本メンタルヘルス協会認定カウンセラー