青木木米(あおきもくべい Mokubei Aoki)
明和4年―天保4年
江戸時代後期に活躍した陶工・絵師の巨匠。
野々村仁清・尾形乾山とともに「日本三大陶工」
永樂保全、仁阿弥道八とともに「京焼の幕末三名人」と称されています。
陶工の巨匠である奥田穎川に師事し作陶を学んでいます。
高温の窯に耳を近づけて
火が爆ぜる音で温度を測っていたために晩年は聴覚を患い
ほとんど聴こえない状態になってしまったとため
自らを「聾米」と号したのは有名な話です。
また、青来・百六散人・古器観・亭雲楼・九九鱗(九々鱗)など
いくつもの別号を使用していたことでも知られています。
そんな木米自身が漢詩を書き込んだ土瓶です。
高さは蔓製の把手を含み、およそ17.5cm
胴回りの直径およそ14.5cm×12cm
全体を前後左右から見てみます。
非常にシンプルな土瓶です。
胴回りには、土見せの素地の上から白文字で漢詩が書き込まれています。
漢詩を拡大してみます。
達筆な筆使いで見事な漢詩が書かれています。
落款部分です。
この土瓶には陶印は捺されておらず、
そのかわりに「九々鱗 木米造」と署名が書かれています。
「九々鱗」とは青木木米の別号であり
また「木米」と書かれていることから
まだ耳を患い「聾米」と称する前の作品であることがわかります。
「九々鱗」「木米」銘や漢詩の筆跡などと比較するため
参考資料を掲示してみます。
参考資料:左側が 淡交社 刊「落款花押大辞典」から抜粋。
右側が 集英社 刊「日本美術絵画全集 21 木米/竹田」から抜粋。
土瓶の底部です。
経年の使用感とともに一本のニュウが入ってしまっています。
側面から底部にかけてのニュウは残念ではありますが
全体的には洗練された非常に素晴らしい作品であると思います。
さすが名工・青木木米の作品です!
高さなどちょうどいい大きさに設えた箱はありますが
無記名の用心箱となります。