高校2年の夏前から付き合って、結局卒業しても付き合ってた彼氏S。

卒業すると、遠距離恋愛することになった。

アタシは広島に残り、彼は福岡へ。

当時は携帯電話が普及する前で、みんなの主流の伝達方法は「ポケベル」。

懐かしいなぁ(;´Д`A ```

でも、彼は寮に入ることになったので、ポケベルにメッセージを送ろうにも、まずは公衆電話を確保しなきゃいけない。

電話の数には限りがあるし、しかも先輩優先。

入りたての1年生は、なかなか使わせてもらえない。

しかしながら、夏にはアタシが彼の住む福岡へと行き、一緒にラブホに泊まってみたり。

ま、そのお金は全部アタシ持ちだったけど。

アタシはその頃、看護学生だった。

毎日ハードだったけど、アルバイトもして、お金も貯めてた。

彼は、寮規則かなんかで、アルバイトはできない状態で。

アタシは元々、あんまりお金に執着がないタイプなので、別にお金を出すのは良かったんだけど。


看護学校は女ばっかりだったので、毎日「男の話」に溢れていた。

忙しいのに毎日のようにコンパの誘いがあった。

当時は身持ちの固かったアタシは、行かなかったけど。


そんな折の秋。

事件が起きてしまった。

看護学校で実習で担当していた患者さんが亡くなってしまったのだ。

何もかもに対して、やる気が失われてしまった。

見た目の割りに打たれ弱いアタシは、人と関わっていく「看護師」という仕事が、恐ろしくなってしまった。

学校をやめようか、どうしようか悩み始め…。

いつの間にかアタシの生活の中心はアルバイトになっていった。

悩みがあっても、彼にはほとんど相談できなかった。

ほとんど電話なんてできなかったし。


その頃、アルバイト先で、いろんな人と遊ぶようになった。

そのほとんどの人が車を持っていて、いろいろなところへ連れて行ってもらった。

同級生(18歳)なのにベンツに乗ってるやつがいて、それにはちょっとびっくりしたけど(;´Д`A ```

アタシ自身も、免許取ったばかりだったけど、親が練習用に、と車をプレゼントしてもらっていた。

もちろん、おんぼろの軽自動車だったけど。


そして、悩みながら登校していたとき、事故ってしまった。

いわゆる「カマを掘る」というやつで、前の車に突っ込んでしまったのだ。

もちろん、初めてのことで、どうしたらいいのかわからなかった。

結局、たいしたことにはならず、あっさり示談で終わったんだけど。

でも、そのときにすら、彼氏とは連絡がつかなかった。


悩みはピークに達していた。


そして決断した。


「学校を辞めよう。」


もう続かないと思った。

一生涯、誰かの命のやり取りを見つめていくことになるのかと思うと、気が遠くなりそうだった。

学校は好きだったし、看護するのも好きだった。

でもこれを仕事としてやっていくのは無理だと思った。


だからやめた。


それから、本当にアルバイトだけの生活になった。

アルバイトはガソリンスタンドで、社員で働いている人のほとんどが元ヤンだった。

いや、今ヤンな人もいたかな(;´Д`A ```

でも、みんないい人だった。

そんな中で女の先輩に連れられて、いろいろと遊びを覚えた。

飲みに行く事、車に乗ること…。


楽しかった。

何もかもが新鮮だったし、何より車に乗ることで、行動範囲が広がるのが楽しかった。

女の先輩ではあったけど、夜景スポットを教えてもらったりもした。

男の友達を紹介してもらうこともあった。

「すっごいいいやつじゃけぇ、潤子と付き合ったらいいと思うんじゃけど…。」

ま、これはうまくいかなかった。

相手はいい男の人だったけど、アタシは一応彼氏がいたし。


でもその頃、同じアルバイトの男の子と、よく遊ぶようになった。

車でドライブに行って、深夜の母校に忍び込んでみたり。

一緒にご飯を食べにいったり。

楽しかった。


遊びに夢中になっていたけど、毎日のベルは欠かさなかった。

今思えば、自分の中で「義務化」されてたと思う。

「しなければいけないこと」だった。

そうして1ヶ月が過ぎたころ、相変わらずあまり連絡のとれない彼氏に、なんだか疲れてきた。

こうして連絡を取り続けることに何の意義があるのか。

悩んだときに相談もできない、寂しいときに声も聞けない。

果たしてそれで付き合ってるといえるのかどうか…。


そもそも、なんとなく恋にあこがれて、彼氏くらいいないと恥ずかしい、なんて気持ちで付き合い始めたので、考え方が変わり始めたら、歯止めが利かない。


はっきり言えば、飽きたんだと思う。

恋してる振りをする自分に。


そして11月。

もう一度だけ会ってみることにした。

会いに行って自分の気持ちを確かめようと思った。

まだ好きなのか、もう好きじゃないのか。


なぜか伸びっぱなしの髪の毛。

お風呂に入ってないわけじゃないだろうし、洗濯してないわけでもないとは思うけど、なんだか汚らしく見える外見。

それは、クラブと学校が忙しく、寮の規則でアルバイトもできない状況で、親からの少ない仕送りだけを頼りにがんばってる苦学生としては、仕方のなかったことかもしれないけど、アタシには我慢できなかった。

いつも自分の周りにいる人は、みんな綺麗な服を着ていた。

ご飯を食べに行くお金もない、というので、いつものようにコンビニでお弁当を買って、ラブホに行く。

そのラブホで、アタシはカレを受け入れることができなかった…んだと思う。


もうよく覚えてないけど。


「ごめん」

と言った。

「いや、いいよ」

と、彼は答えた、と思う。

そしてただ一緒に寝て、次の朝を迎えた。


駅のホームまで見送りに来てくれた彼に、アタシは、別れの言葉を言えなかった。

なんて切り出していいのか分からなかった。


そんなアタシを、彼はぐっと引き寄せてキスした。


それすらも、どちらかというと「気持ち悪かった」。


広島へ帰る新幹線の中で、ただひたすら、別れをなんて告げればいいのか考えて、少しお腹が痛くなった。