猛烈な暑さも過ぎ去って冷たい飲み物から温かい飲み物を欲する今日このごろ…今回は渋いジャズBlack coffee を取り上げたいと思います。


https://youtu.be/GVnrEh56f_g 

 
 この曲はペギー・リーの歌唱(1953年リリース)が有名ですが当初はサラ・ボーンが1949年にリリースしてチャート入りもした人気曲でした。今回はややとっつきやすいペギー・リーの音源を引用しました👍

 作曲はSonny Burke、作詞はPaul Francis Webster
 ペギー・リーはディズニーの『わんわん物語』の作詞を担っているのですがその時に一緒に組んだSonny Burkeとの縁でこの仕事の翌年に自身初のアルバム『Black Coffee』に収録したそうです。
 
 『わんわん物語』ではベラ・ノッテというとても素敵な曲をペギー・リーが歌っていますね。これも彼女の作詞。美しい曲です!
 Black coffee はほの暗きジャズの世界を醸し出していて、トランペットのブルージーな感じも相まって確かに暗い印象! でも歌詞を見るとそんな先入観にはない世界がありました。
 私はペギー・リーの基本的に優しい感じの歌い方ががとても好きなのでこの曲も一押しです。
 興味のある方は他の曲も是非聞いてみてください!

 では意味をくみ取っていきましょう。

Back coffee
I'm feeling mighty lonesome
Haven't slept a wink
I walk the floor and watch the door
And in between I drink

Black coffee
Love's a hand me down brew
I'll never know a Sunday
In this weekday room

 すごく寂しいの 
 ちっとも眠れない
 部屋を歩き回ったり ドアを見つめたり
 そしてそのあいだに
 苦いコーヒーを飲んでる
 愛なんて出がらしの一杯よ
 日曜はきっとくることはない
 こんなかわりばえのない日々の部屋には
 

 まず、歌の切れ目として行間があいてるところで曲調が変化するのですが、歌詞がつながってるんですよね。〜drink で区切るのかと思いきや〜drink black  coffeeと続くわけで…😅ちょっとくらっとするところです。このワザは続く2番3番でも同じように使われてますね。

 例えばI love youと言いたいとき、I loveまで言っといていったん収めて、次のフレーズでYou〜〜!!!と叫ぶ感じでしょうか?😅
 
 a hand  me down brewですが a とあるのでかたまりの名詞的なものだと思います。hand -me -down とはお下がり、とか中古とか一回使っちゃったもののニュアンス。brewは品質のこと、またはお茶などの一回量、とのことなので、コーヒーにからめて二番煎じのお茶的な意味もあるのかな。good brewとは良い品質のことだから、良くない品質のことを表現したかったのでしょう。

 Sundayとweekday が出てきますがここは文字通りの日曜と平日のことなのか比喩的に毎日つまらなくて楽しい日はこないだろうと言ってるのか?
 昭和の歌謡曲で小林明子さんの『恋に落ちて』という曲の中でサビに♪土曜の夜と日曜のあなたがいつも欲しいから〜♪っいうのがあってこれは元祖不倫の歌(?)という共通認識なのですが…もしかしてこの曲もそんな感じ?
 ここはその点はスルーして進めましょう〜

I'm talking to the shadow 
One o'clock to four
And Lord, how slow the moments go
When all I do is pour 

Black coffee
Since the blues caught my eye
I'm hanging out on Monday
My Sunday dreams to dry

 暗闇に話しかけてるの
 夜中の1時から4時
 ああ、なんてゆっくり時はすぎるの
 私はただ
 苦いコーヒーを注いでいる

 何を見ても気がふさぐから
 月曜には乾かすのよ
 私の日曜の夢たちを

 先にも書きましたがキメのBackcoffeeというフレーズがズレていてその落差がカッコいいところです。
 またAnd ,Lord というところは大げさに神様を出さなくてもああ!とか、おお!というニュアンスでしょうね。
 そしてたくさん韻を踏んでますね。
 shadow, four, Lord, slow,  moments, go, all, pour はオ~的な音でたたみ込んでいる感じがします。
 かっこよく歌いたいところです!

 そのあとのsince the 〜からはとても詩的でいろんな方のサイトを参考にさせていただいたところ "涙を乾かす" と訳してる方もたくさんいらっしゃいます。文章的には月曜日に乾かすのはmy sunday dreamsということではあるのですが、そこをどう表現、理解するかとても難しいです。blues caught my eyeからの解釈の余地がありすぎですね。私としては日曜の夢を月曜にリセットするニュアンスのみを残しました😵 


(サビ)
Now a man is born to go a lovi'n
A woman's born to weep and fret
To stay at home and tend her oven  
And drown her past regrets
In coffee and cigarettes

 男は愛を追い求めるために生まれて
 女は泣いて悩むために生まれるのよ
 家にいてオーブンの手入れをしたり
 過ぎ去った後悔を
 コーヒーとたばこに沈めている
 
 
 ここのNow ですが接続詞的に訳しましたが間投詞的に話の切り替えとして使っているのかもです。
さて、とかところで的なのかも。
 fretはギターのフレットとも同じスペルだけどここは悩む、ヤキモキする。
 tend  は別の意味もあるけどここは世話する、手入れする、番をする意味。そしてdrown は溺れさせる。Woman's born to〜のあとに動詞原型でいろいろつながっていくながれですね。


I'm  moody all the morning
Mourning all the night
And in between it's nicotine
And not much heart to fight

Black coffee
feel'in low as the ground 
It's driving me crazy just waiting for my baby
To maybe come around


 朝はずっとふさぎこんで
 夜はずっと悲しいの
 そしてその間はニコチンと
 苦いコーヒーをやめられない心
 地のそこにいるみたいな気分で
 彼がぶらっとやってくるかもしれないって
 待っているのは
 ホントおかしくなっちゃいそうなのよ
 
 
 ここのBlack coffee〜も前のフレーズからの続きをあえて切り離したかのように歌ってますね。
 落差を楽しみましょう!
 morningとMourningは似て非なることば。
前者は朝で後者は嘆き。ちなみに発音は同じとか。(ジャズの名曲でMourningってありましたね😚)

 and not much heart to fight black coffee となるわけですが、前のフレーズの朝と夜の間にあるものは、ニコチンとnot much heart〜があるんだよという意味でしょうか。
 苦いコーヒーにあらがう心はない、すなわちコーヒーの誘惑に負けちゃうということですかね〜。
 続くwaite for…to〜は…が〜をするのを待つという流れでしょうか。

 以上今回の訳はこんな感じですが、過去にはほんとによくあるシチュエーションで歌謡曲や演歌のテーマになっていた内容ですね。
 でも男と女をこのようなテンプレートにはめ込むのは今の若い人たちにはピンときませんよね。若い人でなくても私なんかはこういう気持ちで苦しむより切り替えて前に進みたいと思いますね! ストレスに耐性がなくなっている年頃でもありますので。😅(笑)
 
 でも、でもですよ。
 あえてこのスタイルを望む生き方もあるとは思いますね。何かに(誰かに)依存する気持ちと時々やってくる憂鬱と喜び、それは古くからずっと続いてる人間の心の働きでありますね。人にとっては生きる意味そのものなんでしょう。

 それは時代を超えるものなのかな?
それとも人権とか女性の意識が進化した時代においては前時代的なものと扱われるのか?
 私としては男性がこのように恋人を待ってるのに来てくれない、朝から晩まで憂鬱で苦いコーヒーとタバコに気を紛らわせているよっていうような歌を聞いてみたいな。それも心の叫びならきっと胸を打つはず…女々しいって非難される筋合いじゃないですよね!

 あ、でも今はスマホのアプリとか連絡ツールが山ほどあるから恋愛の悩みもややこしくなるような予感もします…ね😵