~「こころのABC」を軽やかに使って、新しい自分になる~

 

 

「価値観への挑戦:メカニズム編」はこちら
「価値観への挑戦:感情編」はこちら

 

 

この記事の内容

  • ポジティブシンキングが危険なわけ

  • 自分にとってちょうどいい「価値観」に変えていく手順

  • 20代後半から40代前半は、価値観の棚卸のグッドタイミング

 

 

ポジティブシンキングが危険なわけ

 

 

「こころのABC」では、自分を成長させるように、「価値観(ものの見方や考え方、信念、先入観、偏見)」を変えていきます。その具体的な方法に入る前に、ちょっと大切なことに触れたいと思います。

 

 

これは成長に向けて考え方を変えていくので、一見、「ポジティブシンキング」と似ているように見えるのですが、まったく違います。安易なポジティブシンキングは、危険です。なぜなら、深く考えることなく気軽にポジティブと言うときは、世間一般からみてポジティブかどうか、という話になってしまうからです。
これには弊害があります。

 

 

 

  • 自分を大切に扱うより、日本に根強くある同調圧力に屈する思考パターンが強化される

 

  • 世間の言う「ポジティブ」になれない自分を責めて罪悪感にさいなまれたり、自己肯定感を下げてしまう

 

 

では、そうならないように、どのように挑戦していったらよいのでしょうか。

 

 

自分にとってちょうどいい「価値観」に変えていく手順



「こころのABC」を使った自己成長の手順は、次のステップを踏みます。

 

✔Step1 自分が変えたい「言動」を一つ、みつける



日ごろ仕事をしながら、また家族や友達との関係の中で、あるいはよくないクセなど、「これを変えたい、変えよう」とするものを1つ、決めます。

 

✔Step2 それを引き起こす「感情」を確認する



言動のもとになるものは、感情のエネルギーでしたね。ごく一例をあげると…


 

  • (感情)怒り→(言動)殴る、攻撃する、怒鳴る、悪口や皮肉を言う、口をきかなくなる、ドアをあらあらしく閉める、ものに当たる…

 

  • (感情)自己嫌悪→(言動)なげやりになる、ふさぎこむ、引きこもる、自傷行為をする、人に依存する、暴飲暴食する、食べなくなる…



ですので、ここでは、Step1で選んだ変えたい「言動」を引き起こしている「感情」を確認します。

 

✔Step3 その感情を生じさせる「価値観」を見極める





感情は、出来事が、あらかじめ大脳新皮質にあるものの見方や考え方、信念、価値観、先入観、偏見などにぶつかってできるものです。ここでは、それを見極めます。

 

 


その場で少し考えればすぐに発見できる場合もありますが、数日、折に触れて思いを巡らせながら生活しているとひょっと見つかることもあります。あるいは、なかば忘れながらもなんとなく頭のスミで気にかけながら生活していると、ふと、「あ!これ?」と気づくこともあります。誰かとの会話の中で、はっと気づかされることも、よくあります。


ものの見方や価値観というものは、ものごころついて以来、体験した無数のことが折り重なってできあがっています。子供のころ、親に教えられたこと、友達のお母さんに叱られたこと、お砂場でお友達と遊びながら経験したこと、学校の先生から受けた教え、頑張って成功したこと、挫折経験、誤解されて悔しい思いをしたこと、友達に受け容れられて自分の居場所がもてたこと…とても思い出しきれないくらいの数限りないことがらが、あなたのものの見方、価値観、偏見などをつくりあげています。


苦しい経験、つらい経験がつくりあげた価値観ほど、深いところに入り込んでいて、なかなか思い出せないことも多いです。もし、ここを意図的に行おうとすると、瞑想やカウンセリング、精神分析などが役立ちますが、そこまでしない場合は、むしろあまり執着せず、ぼんやり考えていると、ふと浮上してくることが多いです。


 

✔Step4 その「価値観」を別のものに置きかえるシミュレーションをしてみる





さて、いよいよ価値観を変えることに挑戦です。といっても、机上の空論でかまいませんし、ふんわり考えてみる、というゆるやかな感じがベストです。


「もし、仮に○○○という考え方ができたとしたら、感情は、今と違って、ずいぶん楽な、いい感情になりそうだな。そうしたら言動もかわるだろうな」というようなことを思い巡らせます。


たとえば、私のクライアントさんに圧倒的に多いのが、「仕事では、絶対に間違ってはいけない」という考え方、価値観です。これがその方にとって、ちょうどいい具合に作用しているときは、安定的な気持ちで、生産性と充実感がともに高い、いいお仕事ができることでしょう。



ところが、ここがちょっと強く作用してしまうと、感情は…
   

 

  • 間違ったら大変なことになる

  • 間違えるなんて、無能な人間だ


 
と、不安や焦燥感にさいなまれ、その結果、仕事がスムーズに進まない、ムダな動きが多くなる、ミスを多発する、という真逆のことが起こります。


では、ここを変えていこうと思ったらどうするのか。
少し落ち着いて10分程度時間がとれるときに、静かに考えてみます。


 
  • 絶対間違わないようにしようと思っているのに、むしろ間違いだらけだというのは残念なことだ

 

  • 絶対間違わないなんて、人間にはできないことだ

 

  • そんな無理を自分に要求しているから緊張し、むしろ仕事が遅くなっているのかも

 

  • 仕事は、決められた時間の中で、最高のパフォーマンスを出すことだ

 

  • ならば、時間のなかで精いっぱいやって、それで間違ったら素早く修正し、同じミスを繰り返さないようにすれば十分じゃないか



というような感じです。

 

✔Step5 新しい「価値観」を定着させる


ある程度、自分なりの新しい考え方、価値観が見えてきたら、今度は、それをときどき思い出して、自己対話、つまり自分の頭の中で会話をしてみます。

 
  • 頻度は週に3,4回くらい

  • 期間は1、2か月くらい

  • 一回の自己対話時間は、2、3分前後

  • リラックスしているときに実施 



そうすると、古い考え方や価値観が薄れてだんだん抜けていき、かわりに自分にしっくりくる新しい考え方や価値観が定着してきます。そうなれば、感情も言動も変わっていることでしょう。 

 

 

20代後半から40代前半は、価値観の棚卸のグッドタイミング

 


私は、おそらくですが、日本で一番たくさん、リーダー層のビジネスコーチングをしてきた人間の一人だと思います。一人1時間程度のコーチングを、一度に数百名依頼され、それを数年間続けて組織を変えていくお手伝いをしてきました。


その中で、ほんとうにいろいろなことを教えていただいたのですが、その一つが、「こころのABC」をつかった、価値観の棚卸です。


40代になって、魅力的で部下からも慕われ、成果も出し、自分のことが好きで、家族にも愛されているリーダーに共通の、数少ないことの1つがこれでした。 
つまり、だいたい30代の10年くらいをかけて、自分の中の価値観やものの見方、考え方を一つ一つ見直し、よいものはそのまま大事にし、変えたほうがいいなと思うものは変えていく、という内的な作業を、誰に教わるともなく、自発的になさっていたのです。


「こころのABC」を成功させるポイントは、力を入れすぎないことです。少しゆるい感じで、頭だけではなく、心や身体の感覚にもちょっと意識を向けながら、軽やかにやってみてください。



「価値観への挑戦」は、以上で完結です。お疲れさまでした!