変わった形の雲、美しい夕方の空。


残業を終え私の帰りを駐車場で待つ旦那の元へ、いざ。自動ドアを出ると空は一面の夕暮れ、半日窓もない建物に閉じ込められていた心身は広い空の下で精一杯深呼吸。(…さて、と)、すると少し後ろを歩く人の口笛が聞こえ始めた。それは、異世界へ引き込まれそうな程物哀しい旋律を奏でたメロディだった。…なんというか、ただひたすらに悲壮感を漂わせ、この世のものとは思えないコード進行である。(どんな人が吹いているのか?)何度も振り返ろうとしたが、余りにもこの世的なメロディとは思えなかった為、頑なに振り向く事はできなかった。本当に妖怪か何かが私を異世界へ引き込もうと誘うメロディなのか…(!?)と、絶対に振り向きたくなかったし、怖くて振り向けなかった。数十秒後、口笛の主は途中に停車していた車に乗った気配を残し、どこかへ走り去った…はず。


おそらくフツーの人だと思う。


…が。