女のふくらはぎは、その女の強さを表している。そう思う。
ならば私はどうだ。隆々としたかたいふくらはぎを持っている。私の心はこんなに脆弱なのに。
忍は自らが秘めている可能性を知らない。
去年の冬、忍の恋人は、忍以外の知らない女のもとへ行った。忍は彼とその女に対する激しい悲しみと怒りに苛まれ、しばらくの間仕事も手につかなかった。
そんな最中、忍に近づいてくる男が現れた。忍は彼を心の中でこう呼ぶ。
くまさん
まるで蜂蜜を食べているときの熊みたいに人畜無害にみえてしまう。そんなわけはないのに。
彼はしかし忍を優しく抱いたのだ。決して傷つけはしなかった。その点も、最初の男と違うところだった。
忍は情という鎖を初めて知った。切っても切れない。
愛してるけど報われない。
無力。わたしのふくらはぎはもう、やせ細っていいはずなのに。ちっとも細くならない。
忍はふと思ったのだ。
失わなければ得られない。
そう信じていたが、そんなことはないと。地平はまだ、もっと広い。
忍のふくらはぎは、ますますかたくたくましくなってゆく。
光生は夏になるとひとりで宮崎の郷里へ帰る。
妻の泰子も娘の綾香も連れていかない。
泰子は光生を送り出したあと、泣く。少しだけ。
以前光生は綾香だけを一緒に連れていこうとしたことはあるが、泰子があまりにもそのことに激怒したので、やめた。
光生の郷里は空き家だ。
廃屋。
蔦は家中を覆いつくし、光生は自分がその蔦のなかで死んでいく夢をみた。

光生の抱えるものを、誰も一緒に抱えてくれない。
育ちのいい泰子には無理だ。
綾香なら大丈夫かもしれない、いつか、未来には。
光生は厭世感が嫌いだ。
自分がこの世でいちばん不幸な顔をしたくなかったし、しかしたぶん、光生はこの世でかなり不幸な人間なのだ。
光生は現実も嫌いだ。
漫画や映画が日常の楽しみだ。しかしそれでもたまに煮詰まって、郷里へ帰る。
ひとりで。
誰かが光生の荷物を少しでも軽くしてくれたらいいのに。
しかししっかり者の光生は、これから先もずっと、自分だけで荷物を抱え込んで、歩いてゆくのだろう。
アメリカンです。
癖がなく酸味もないですが、とてもまろやかな味です。
クッキーがついてきますが、アメリカンとよく合います

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