久しぶりの図書レビュー。

2週間ほど前に読み終わっていたのですが、なんともレビューを書く時間がなくて…


今回読みましたのは、ただいま「国家の品格」で大ブレーク中(ワタシのブログでも読後レビューをしてますが →http://ameblo.jp/junko15/entry-10009150389.html )の、藤原正彦先生の「祖国とは国語」です。


藤原 正彦
祖国とは国語

【読みやすさ】★★★★☆

【内容】★★★★☆

【わかりやすさ】★★★☆☆

【オススメ度】★★★★☆


かなり高評価の書籍となります。

藤原先生の主張は、ワタシにとって非常に分かりやすいのです。

すごく納得できます。


本書の内容は、大きく3つに分けられます。

「国家の品格」とほぼ内容がかぶる“国語教育絶対論”。

藤原家の点景を書いた“いじわるにも程がある”。

そして、藤原先生が産まれた満州を家族揃って訪れた際の“満州再訪記”。


最初の「国語教育絶対論」は、その名が示す通り、国語教育を重視せよという主張が延々と書かれたものです。

「国家の品格」とかなり内容がかぶりますので、あちらの本を読まれた方は、読み飽きたなぁと感じるかもしれません。

でもワタシは、小学校に週1回の英語教育が導入されようとしている昨今、藤原先生の主張のすばらしさを思うのです。

例えば17ページの、

“読書は教養の土台だが、教養は大局観の土台である。文学、芸術、歴史、思想、科学といった、実用に役立たぬ教養なくして、健全な大局観を持つのは至難である。 大局観は日常の処理判断にはさして有用ではないが、これなくして長期的視野や国家戦略は得られない。…”

というところなんかに、ぐぐっと来てしまったわけですよ。

今はなんでも実用主義、即戦力。

ワタシが日頃接している、大学教育なんかにおいても、こういうことがすごく叫ばれています。

しかし、ワタシが思うに、大学出てすぐに即戦力なんてあり得なくね?って思うのです。

社会とはなんぞや、仕事とはなんぞや、生活とはなんぞやって、そんなこと教育の場で教えられるわけがない。

それよりも教育の場で教えるべきことでもっと重要なのは、長期的スパン・短期的スパンでものごとを考える力、目標を立てて達成するまでの戦略的思考、そんな力を養うこと。

少なくともワタシはそう思って、教育にあたっているつもりです。

で、その基礎となるのは教養であり、なんだか今は即戦力になりそうな専門的能力(それも専門かどうかも怪しいレベル)が重視されているようですが、でも、教養って大切だとワタシは思うのです。

そして、さらに大切なのが、論理的思考をするための日本語能力。

(ていうか、「論理的」という概念もまた難しいところではありますが…)

英語を学ぶよりも先に、漢字や文章の読み書きだろうとワタシ自身も思います。

ていうか、そもそも、中高6年間の英語教育で、マトモな英会話もできない日本人が多いのに(ワタシ含む)、小学校で週1時間やったくらいで、英語ができるようになるわけないだろーと思うわけですが。

なんか、役所の考えていることって、いまひとつ理解できません。


次の「いじわるにも程がある」。

これは、藤原家の奥さま、息子さんたちやお母様との日常のやりとりをおもしろおかしく書いたものです。

思わずぷっと笑ってしまうこと多々。

そして、藤原先生の、奥さまやお子様たちに対する愛情を、ひしひしと感じることができます。

これを読んでいる限りにおいては、「あぁ、いいご家庭だなぁ」って思うのでした。


そして最後、「満州再訪記」。

戦時中、満州で生まれた藤原先生が、奥さまと息子さんたち、そしてご自身のお母様の6人で満州を訪れるというものです。

ワタシは戦争についての記述を読んだり、お話を聴いたりするのは嫌いな方ではないのですが(って不謹慎な言い方ですね…スミマセン)、やはりこの満州再訪記を読んでも、なにがなんでも戦争はいけないと思います。

なんだか小学生の読書感想文みたいになりましたが…

戦時中のこと、そして戦後のこと、こういうことは、次の世代に伝えていかなければいけないことです。

戦争を体験された、藤原先生のお母様の手記をぜひ読んでみたいと思いました。

そして、一人でも多くの人に、戦争体験の話、そして戦地の話など、読んでもらえればなぁと思いました。

僭越ながら…


というわけで、この本のトータルのオススメ度は高めです。