現代詩人で誰が好きかと聞かれたら、迷わず、谷川俊太郎さんと吉野弘さんの名前をあげます。彼等の詩は本当にすばらしい。このブログでも紹介したいのはやまやまなんですが、なにせ著作権というものがありまして。特に谷川俊太郎さんは、著作権に厳しい方なので……。

というわけで、今日は吉野弘さんの「祝婚歌」という詩をご紹介したいと思います。


    祝婚歌    吉野弘


  二人が睦まじくいるためには
  愚かでいるほうがいい
  立派すぎないほうがいい
  立派すぎることは
  長持ちしないことだと気付いているほうがいい

  完璧をめざさないほうがいい
  完璧なんて不自然なことだと
  うそぶいているほうがいい

  二人のうちどちらかが
  ふざけているほうがいい
  ずっこけているほうがいい

  互いに非難することがあっても
  非難できる資格が自分にあったかどうか
  あとで疑わしくなるほうがいい

  正しいことを言うときは
  少しひかえめにするほうがいい
  正しいことを言うときは
  相手を傷つけやすいものだと
  気付いているほうがいい

  立派でありたいとか
  正しくありたいとかいう
  無理な緊張には
  色目を使わず
  ゆったり ゆたかに
  光を浴びているほうがいい

  健康で 風に吹かれながら
  生きていることのなつかしさに
  ふと胸が熱くなる
  そんな日があってもいい

  そして
  なぜ胸が熱くなるのか
  黙っていても
  二人にはわかるのであってほしい



結婚式でよく紹介される詩ですが、これから結婚する人だけでなく、既婚者にとっても、結婚とは何か、結婚生活とはどうあるべきかをもう一度思い出させてくれる、とてもいい詩だと思います。

え?著作権はいいのかって?実はこの詩、吉野さんが「民謡のようなものだから」と、著作権フリーになさっているそうです。いつまでも、語り継ぎたい詩ですね。



  


吉野 弘
贈るうた