Altec 9062A パッシブグラフィックEQ | junker-life

Altec 9062A パッシブグラフィックEQ

今回は超レアな機材、Altecアルテックパッシブグラフィックイコライザー「9062A」の紹介。

検索すると海外では売れた後の売買情報は出てくるが、中身にまで踏み込んだ情報はあまり無い。国内でも数年前のヤフオクの出品くらい。自分もまったく詳しくはないですがなんでも60年代のモータウンレコード関連のスタジオでは頻繁に使われていて象徴的な機材だったらしい。

 

 

製造開始年は不明だが1960年代なのは確か。Langevinというメーカーがオリジナルらしくまったく同じものが出ていてその後OEM生産かaltecが買い取ったのか。

7バンド、周波数は1.5オクターブ刻みで2バンドほど現在普及している1/3オクターブとは微妙にずれている。

 

増減は+/-8dB。パッシブながらちゃんと増幅される、気はするが、実際は既定値ですでに全体で16dB減衰している。センターのみクリック付きの非連続での1dB刻みの可変だが、中間で0.5dB刻みも可能とカタログには書いてある。本当かどうか後日測ってみようと思う。

パッシブが故に減衰しているので後段に何らかのゲインを稼ぐアンプは必要だが、本来はミキサーに内蔵されるのモジュールだったようなのでとくに純正のアンプというものは無い。ネットを見ると個体で運用している場合はオリジナルで作ったり何かを流用したり様々。

 

ちょっと小さい6バンドの「9073A」というものもあるが、こちらは放送のトーク音声向けで周波数も異なり、64、160、400、1K、2.5K、6.3Kと音響屋にはおなじみの周波数。

 

プラスチックの安っぽいツマミを外し、フロントパネルを外すと周波数ごとにスロットインされている。

この写真は工具がない環境で開けたので向きがおかしい。

全部抜くと

カードエッジコネクタが互い違いに並ぶ。

バンドごとのモジュールは一つづつ鉄のケースに入っているので重い。

 

パーツ面。インダクタ(コイル)、コンデンサ、抵抗のみ。これは低域側で、高域に行くに従ってインダクタとコンデンサが小さくなる。

 

摺動面。右寄りのプレート内にベアリングとセンタークリックの溝が仕込まれている。ツマミのところがフリーになっていて垂直がキープされる構造。

 

故障箇所は無いので分解して掃除とグリスアップのみ行う。

 

ここまでとシルバーのプレートをバラして掃除。金色の部分はアルコールを垂らして少し置いてから掃除。ブラシは綿棒とアルコールでやさしく。

2枚の金属プレートはツマミ部分を抑えるフロント面のパネル。ここと内部のプレートは古いグリスを落として新たにグリスアップ。

この作業を繰り返して元に戻せば作業は終了。フェーダーのセンター合わせには少々気を使う必要がある。

フロントパネルとツマミはいつものようにセスキ炭酸ソーダでヤニ落とし。

 

そして試聴。

これは・・・体験しないとわからない感動かも・・・

パッシブだからと舐めてかかると、確かに効きはナローなんだけどブーストするとその帯域はきっちりと存在感を主張してくる。8dB突き上げても足りなくないし破綻しないし嫌味もない。気持ちいい。カットすれば大人しくなるけど切るにはもったいない。

使いようによっては例えば、夜中の雰囲気のホリー・コールが真夏にたまに吹く涼しいそよ風のような雰囲気になってしまうくらい聴いてて気持ちいい。(わかりづらい)

ま、ワタシのほとんど無い職歴と語彙力ではこんなもんです。もしどこかのスタジオなどで見かけることがあったら利用時間延長してでもぜひ使ってみてほしい。きっちりとした仕事をしている人ほどもっと大げさな感動を得ると思うので。

 

国内にどれだけ残っているのかわからないけど、売りに出たら何を質に入れてでも買うべきですな。いや、海外からでもチャンスがあればたとえ円安でも。

ミックス素材ほどより映えるのでミキシングやマスタリングまでやる人は持っていると強力な売りになるかも。

 

回路図もネット上を探せば出てくると思うけど、精密なコンデンサとインダクタが必要になるので自作しようとは考えないほうがいいです。特注できても膨大なロットと高コストを要求されるでしょう。モータウンはコピーして「MotownEQ」作りましたが。

 

今後は、高さがちょうど88mmなので2Uに仕込もうかと。

それくらいですね。いじるとこ無いし。いやすごいよほんと