2017年8月21日(月)
ビルボードライブ東京で、ホセ・ジェイムズ(1stショー)。
サマソニではお昼のマリンステージという「ねえねえ、それってホセの音楽性わかって決めてんの?」と言いたくなる時間帯&場所での出演だったが、それでもアリーナの前のほうにはファンが詰めかけていたし、何よりホセの気合が十分。その気合は関西のボクサーのようなカッコにも表れていて(終って帰るときTVカメラに向かってパンチを繰り出す動きをしてたので、彼自身明らかにボクサーを意識していたのだろう)、かなり短い持ち時間ではあったけど内容的には十分「いいぞ」と思えるものだった。トキオ~!といった煽りやメンバーの名前を呼ぶ際の声の大きさもスタジアム対応で、アクションも普段のライブより大きめ。僕的には何よりこのような短めの野外セットで彼がどういう選曲をしてくるかに興味があったのだが、新作からのファンキーな曲(「Live Your Fantasy」や「Ladies Man」)を軸にしつつ、「Promise in Love」などお日様の似合う曲もうまく配置して、実に開放的なモードのパフォーマンスを展開してみせていた。それでもアリーナ後方(残念ながら人は少なかった)やスタンド席の観客を巻き込むまでには至らなかったけど、例えばあれを夕方のビーチステージでやったら相当の盛り上がりになったことだろう。ビーチであれ、観たかったな。
で、翌々日のビルボードライブ公演。サマソニがアウェイだったとしたら、こちらはホセにとって、やり慣れたホーム。球場と違って、そこまで動きも声も大きくする必要はないはずなのだが、スタジアムでのモードがまだ彼の中に感触として残っていたのか、いつもより喋りや煽り(そもそもいつもはそこまで煽らない)の声を大きめに出していた。また、前半からステージをおりて2階席や1階席を歩きながら歌ったりといったところも、通常のライブより開かれた様を強調していたよう。作品ごとにモードを変化させる人であるからして、これからもずっとこのように開放的でエンタメ性の強いライブをするということはないだろうけど、とにかく今はこのような開かれ方のライブを見せるのだと決めて臨んだのだろう。
構成としては、サマソニの30分のショーにいろいろ加えて発展させたもの。つまりサマソニでやった曲は(確か)全部やったし、流れ的にもそれらの曲を主軸に組み立てていた。が、こっちの興味はむしろサマソニでやった曲以外のところで何を歌ってどう見せてくれるのかのほう。そっちに関してはまず、前半で新作収録のスロー「Let It Fall」を聴けたのがよかった。ボブ・マーリィっぽいというかアフリカ的というか、そんな雄大さのあるこの曲が僕は大好きなんですよ、ホセの歌い手としての実力がよく現れてる曲な気がしてね。
それからこれは観た人の意見がみな一致するだろうけど、サマソニではなかったメンバーたちのソロ演奏が十分に聴けたのもよかったところで。とりわけ今回はちょい久々のリチャード・スペイヴェンを途中で大フィーチャー。彼のドラムとホセのスキャット(それ、ボイパっぽくもあり)によるインプロにかなり十分な時間をとっていたのだが、ホセにとってそれは決して珍しい出し芸ではないとはいえ、やはりそこには引き込むものが大きくあって、明らかに今回のライブの見せ場として成立していた。それと大林武司のジャジーソウルな感じのキーボードね。その音色のステキさにうっとり。ベースもよかったけど、本音を言うならやっぱりリチャード・スペイヴェンにはソロモン・ドーシーを組ませてほしかったかな。
終盤ではホセはギターを弾いて、前回公演でもやったボウイの「世界を売った男」を歌ったりも。というふうに、「R&Bもファンキーなやつもバラードもロックもいろいろ歌えるオレ」を開いた態度でアピールしてたのが今回公演と言えましょうか。
んで結論。よかったですよ。よかったんですけど。個人的には新作『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』の曲でまだまだ聴きたかった曲があったなー。単独のほうはもっとガッツリ『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』中心の濃いものを期待してたんですよ僕は。うん。こう言っちゃなんだけど、今回は「開かれたライブ」ではあったけど「攻めてるライブ」ではなかったというかね。前回のビルボードライブ東京公演が相当攻めてて熱量の高いものだったから、そういう意味においては正直ちょいと物足りなかった。僕にとってのホセ・ジェイムズの魅力のひとつは「常に新しいステージを目指している」ところでもあるからして。