2015年10月17日(土)

赤坂BLITZで、GLIM SPANKY。

チェルシーホテル、キネマ倶楽部ときて、3度目のワンマン。前の2箇所はハコ自体に予め独特の雰囲気があり、それを味方につけてのライブだったわけだが、今回のハコ…BLITZは無味。そういう場所をいかにGLIMの色で染め上げられるか。それがひとつのテーマでもあったかもしれない。

「サンライズジャーニー」で始まり、11曲目の「夜風の街」が終わるまで、「ありがとう」以外にMCはまったくなし。バンドは続けざまにどんどん曲を繰り出していった。「ダミーロックとブルース」「FLOWER SONG」ときて、間髪入れずに「褒めろよ」。とりわけこのあたりの畳みかけが効いていた。

ロックバンドのライブにおいて曲と曲の間の時間は大事だ。どんなに前の曲で昂っても、次の曲が始まるまでに時間があけばあくほどその昂りやノリは波のようにひいてしまう。ストーンズほどのバンドのライブでもそれを感じることはわりとよくある。
GLIMは恐らくそのこと…つまり昂揚やグルーブの持続ということに対する意識が高い。故に極力MCは減らし、1曲が終われば畳みかけるように次の曲へと展開させる。「FLOWER SONG」が終わってすぐに「褒めろよ」のイントロをドラムがドドダダドドダダと叩きだしたそのときに、昂りながら僕はそんなことを思ってた。

そもそも言いたいことや思いは曲に込めている。その場の歌と演奏に全て込めている。自分たちはロックバンドであり、演奏して歌うためにここに来ているのだ。恐らくそんな思いが、MCなしで続けざまに曲を放つあり方に結びついているのだろう。

松尾レミの喉はこの日どうやら本調子とは言えなかったようで、本来この曲はもっとガツンと強く響くはずなのに…と感じた場面も正直少しあった。が、彼女は休むことなく、何かに挑むかのようにあの魅力的なしゃがれ声を出し続けていった。一方、ギターの亀本は、この時間を誰より自分が楽しむのだとばかりに、いつも以上にオープンなあり方でどんどん前に出て、前半から何度も腕をあげたりギターで客を煽ったりしていた。それもあって1階フロアの観客たち(←見事に男ばかりだ!)は曲に合わせてガンガン拳を突き上げ、最高だぜという気持ちを態度で表していた。2階席から観てるとそれはなかなか壮観な眺め。これほどの人数(キネマ倶楽部の倍近くか)が一体となって「褒めろよ」のオー・オッオオオオッオーで腕をあげているのだから、いよいよここまできたんだなと、そう思わずにはいられなかった。

11曲目「夜風の街」以降、終盤は2~3回MCを挿んだが、いつもより言葉少なめの松尾に対してこの日は亀本がよく喋った。初めての景色を前に彼自身が明らかに昂揚しているようで、嬉しさが素直に言葉になり、客もそれに対して声を投げる。そう、GLIMにはふたりよりずっと上の年代のファンもたくさんいて、だから最近の若いバンドのライブには珍しく、客が自由にメンバーに声を投げるという光景が見られるのが面白い。それに対し亀本は「喋らせてよー」と言って、自身の喜びをしっかり伝えようとしていた。

初めにMCを挿んだあとの12曲目「WONDER ALONE」以降、ステージからの熱の放たれ方も少しだけ変化したように僕には感じられた。ある意味での緊張感がこのあたりから少し和らぎ、ステージ上とフロアの間の風の通りがよくなったというか。

13曲目「リアル鬼ごっこ」の歌の終わりの「私たちは いま輝きのなか」というところでは、松尾が「いま」まで歌うと、観客が「輝きのなか」とシンガロングして返した。そこ、思わぬいい場面だった。彼女も嬉しかったんじゃないか。そして続く「Gypsy」のドライブ感は破格のものとなった。この1曲にいまのGLIM(ふたり+サポートふたり)のバンドとしての凄味が凝縮されているようだった。

本編終盤では新曲の「NEXT ONE」を披露(来年早々にこの曲を含んだミニアルバムがリリースされるそうだ)。NEXT ONE。次の一手と読むこともできそうなこの曲はウイ・ウィル・ロック・ユー型のどっしりロックで、アンセムにもなりうるもの。ここで「次」を感じさせ、そして本編最後をいつものように大事な1曲「大人になったら」で締めた。「私たちはやることがあってここで唄ってる」。歌詞のその一節が、この夜はいつにも増して説得力を伴いながら響いてきたのだった。

アンコールはまずふたりだけで「さよなら僕の町」。これがふたりの原点を感じさせ、味わいもあってとてもよかった。松尾の表情は前半に比べて柔らかくなり、何より声の出と響きが本編中盤までに比べてグッとよくなっていた。歌うほどに内側の熱が外へと出て声の強度と艶を増していく、そんなタイプの歌手なのかもしれない松尾は、そういえば本編終盤あたりでいつのまにか靴を脱いで歌っていた。

最後は再びベース&ドラムを呼び込んでのバラード「ロルカ」で、「さよならだね、今日も一日ありがとう。明日もお互い元気でありますように」という歌詞がなんともこの日の終わりに相応しかった。

無味だったBLITZはそういえばいつのまにかGLIMの色としか言いようのない色で染め上げられていた。
ここまできた…という感慨もそれなりにあったが、それよりもここから始まっていくのだということを強く感じられたライブだったし、完全にいい意味でまだまだこんなもんじゃないとも思えたライブだった。
最後の松尾の言葉になぞって書くなら、売れても遠くに行ってしまったなとサヨナラしないで、一緒に新しい景色を観に行きたい……GLIMはホントにそう思えるバンドなんだよなと強く感じながら地下鉄に乗った。