渋谷・オーチャードホールで「ALFA MUSIC LIVE」。
ALFA MUSICの創始者である村井邦彦氏の古希を祝って、当時のALFAの所属アーティストたちが再集結した音楽イベント。その2日目を観た。プロデュースは村井邦彦、総合演出は松任谷正隆が担当。
素晴らしい演奏会だった。
まずプレゼンターとして登場した方々が日本のポピュラー音楽史においての非常に貴重な話(証言)をされ、そのあとで紹介されたアーティストが演奏を始めるという構成がよかった。それ故、1曲1曲が尚更深みを伴って響いてきた。音響も驚くほどによかったし、ちょっとした演出も気が利いていた。演奏曲のアレンジも全てよかった。全体の構成も練られたもので、だから4時間という長尺ライブながらもダレる場面がまったくなかった。しばらく余韻に浸りたくなるような感覚すらあった。これは心底、観に行ってよかったと思えたものだ。
4時間に及ぶ長尺ライブで、日本のポピュラー音楽史に残る名曲がたくさん聴けて、出演者も何人か被っているため、どうしても先頃観た松本隆作詞活動45周年記念イベント『風街レジェンド』と比較してしまうのだが、音響・演出・構成・アレンジと全ての面でこっちのほうが洗練されていた。深みもあった。「風街」に感動したひとの気分を損ねたら申し訳ないが、正直に書くなら僕的にはあれの何倍もの感動を得ることができたのだった。
ざっと振り返って記しておこう。(自分用の備忘録として)
のっけから荒井由実(松任谷ではなく荒井由実として出演)がプレゼンターで登場。ALFAの設立についてなどを話し、「一番最初に契約したのは当時高校生だった私……荒井由実でした」。そしてユーミンが「恩人」として紹介し、最初に歌ったのは加橋かつみ。「愛は突然に」「花の世界」。
2番目のプレゼンターは吉田美奈子。「当時のコンテストで2位になったのがオフコース。1位は赤い鳥でした」と、赤い鳥を紹介。といっても赤い鳥のメンバーは他界してたり都合で来られなかったりで、登場したのは後藤悦治郎・平山泰代夫妻のみ。即ち、紙ふうせん。歌われたのはもちろん「竹田の子守唄」。これ、迫ってくるものがあった。
3人目のプレゼンターはミッキー・カーチス。「オレはこう見えても日本で最初にロックンロールを歌った男です」「でも今は一回ロカビリーをやると、そのあと1週間はリハビリー」。さすが落語家、喋りが面白い。そしてガロをプロデュースしたときの話をし、「ガロの3人のなかでただひとりの生き残り!」と大野真澄を紹介。曲はもちろん「学生街の喫茶店」。グッときた。
続いて服部克久が雪村いづみを紹介。バックはティン・パン・アレー(キャラメル・ママ)! 名盤『スーパー・ジェネレイション』収録の「蘇州夜曲」と「東京ブギウギ」を、あの盤の通りに再現した演奏にのせて歌唱。80に近いお歳ながら、それはそれは豊かで弾力もある歌声。演奏も歌も圧倒的に素晴らしかった。
5人目のプレゼンターは野宮真貴で、ユーミンを紹介。黒いハットで再登場したユーミンは、ティン・パン・アレーをバックにまずはピアノを弾いて「ひこうき雲」。「純正キャラメル・ママとステージに立つのはこれが初めてです」「当時、村井(邦彦)さんから、“キャラメル・ママってひとたちと組んでもらうから”と言われて」と昔を振り返って話し、林立夫、鈴木茂、細野晴臣と出会ったときのエピソードを紹介したあと「まったく会ったことのなかったのがあの方で」と夫の松任谷正隆の話を。「最初、印象悪かったんですよ」とも。「そんなわけで、(今日は)昔の名前で出ています」と言って「中央フリーウェイ」を。
続いて細野晴臣がプレゼンターとして前に出て、小坂忠を紹介。「最初に会ったのは21のとき。はっぴいえんどの元になるバンドを小坂忠と一緒にやろうと目論んでいたんだけど、彼は(ミュージカルの)“ヘアー”で海外に行ってしまった。じゃあということで誘ったのが大滝詠一だったんです」。小坂忠は「ほうろう」と「機関車」を。バックはティンパン・アレー+高橋幸宏。「機関車」の歌唱にしびれた。
前半最後には桑原茂一が登場。第一声は「コナサン、ミンバンワ」。スネークマンショーの当時のエピソードを話し、「ふたりの天才…小林克也と伊武雅刀に感謝します」。
ここで休憩。
ライブ後半はまず向谷実がプレゼンターとなり、吉田美奈子を紹介。バンドは武部聡志(Key)・河村”カースケ”智康(Dr)・須長和広(B)・鳥山雄司(G)・本間昭光(Key)という豪華な面々。「朝は君に」と「夢で逢えたら」。言うまでもなく素晴らしい。
このあとのプレゼンターが誰だったか忘却してしまったのだが……続いてサーカスがオリジナル・メンバーの4人で登場。曲はもちろん大ヒット曲「Mr.サマータイム」。これもよかったが、僕的にはそのあと新メンバーを加えた現在形で歌われた「アメリカン・フィーリング」にグッときた。というか、当時好きだったこの曲の存在を久しぶりに聴いて思い出した。サーカス、いま聴いてもやっぱりいいな。オリジナルメンバーの女性ふたりは今もおキレイでした。
続いて当時シティポップの貴公子と呼ばれていた山本達彦が「ピアニスト」を。
そしてブレッド&バターの登場。まずはユーミン作の大名曲「あの頃のまま」。ALFAでアルバムを制作してた当時、ピッチに厳しいディレクターの有賀恒夫氏と対立してたことを告白。「(そんなに完璧なピッチにしなくても)雰囲気でいいんじゃないの?」というのがブレバタ側の主張だったが、有賀氏は完璧なハーモニーに拘った。そして一度はほされそうになったものの、言うことをきいて完成させたのが海3部作のうちの2作『パシフィック』と『マンデイ・モーニング』だそうな。というわけで「マンディ・モーニング」も。
ブレバタ岩沢幸矢氏がプレゼンターとなり、次に登場したのは(何の接点もなさそうな)コシミハル。そういや彼女の『チュチュ』は(ALFA内の)YENレーベルから出てたんだった。あの頃はテクノポップ系だったが今現在の表現はこうといった感じで、エディット・ピアフの「ラヴィアンローズ」を彼女らしく。
そして鮎川誠が登場するとひときわ大きな拍手が。「今年はシーナが天国に旅立ちました。(中略) シーナは最後に野音で歌ったときも“ずっとロックを好きでいてね”ってみんなにメッセージを送って…」。そして奈良さんと川嶋さんを呼びこみ、3人だけで「ユー・メイ・ドリーム」と「レモンティー」を。この日、唯一の轟音ロックンロールタイム。オーチャードは基本的にああいう轟音ロックは禁止されてるそうだが…。演奏中、後ろのスクリーンにシーナの写真がたくさん映される。それまでこのイベントは映像演出がなかったため、ふいをつかれて泣いてしまった。みんな座って聴いてたが、このときばかりは僕は立ってノリたくてしょうがなかった。たぶん「レモンティー」を座って聴いたのはこれが生まれて初めてのことだ。スクリーンには最後に「クイーン・オブ・ロックンロールハート。シーナ・フォーエヴァー」の文字(涙…)。
ところで鮎川さんはこんな話もしていた。スネークマンショーのアルバムのジャケは、当初シーナとプラスチックスのチカのヌードを描いたものになる予定だったが、それを見た村井さんが「シーナちゃんは裸になっちゃダメだ」とシーナを守るように言い、アートディレクターや鮎川さんらの前でそれをビリビリと破り捨てたという。それ、僕は初めて聞いたのだが、村井さんの人柄が伝わるエピソードだ。そう、このイベントは村井邦彦さんがどのようなひとで、どういう熱さと優しさと粋さをもったひとだったかをよく知ることができるものでもあった。
ところで鮎川さんはこんな話もしていた。スネークマンショーのアルバムのジャケは、当初シーナとプラスチックスのチカのヌードを描いたものになる予定だったが、それを見た村井さんが「シーナちゃんは裸になっちゃダメだ」とシーナを守るように言い、アートディレクターや鮎川さんらの前でそれをビリビリと破り捨てたという。それ、僕は初めて聞いたのだが、村井さんの人柄が伝わるエピソードだ。そう、このイベントは村井邦彦さんがどのようなひとで、どういう熱さと優しさと粋さをもったひとだったかをよく知ることができるものでもあった。
次に高橋幸宏がプレセンダーで登場し、日向大介と氏が現在やってるバンドのencounterを紹介。日向氏は当時、テクノポップのInteriorsでALFAからデビューした。
ここでユーミンが再々登場。当時のALFAの思い出を話し、「どこか街の明かりが見えるような、ホコリが舞ってるような、それがALFA RECORDSだったのかもしれません」と。そして細野晴臣、高橋幸宏、村井邦彦の3人を紹介。予想してなかった変形YMO。ラテンジャズっぽいアレンジで「ライディーン」を。これがよかった!
村井さん、「夢を見てるような気持ち」と言って、このイベントの実現の喜びを。そして「今日来れなかった仲間たちもいます」。スクリーンには亡くなったミュージシャンたち(ガロのトミーとマーク、佐藤博、深町純、ハイファイセットの山本俊彦、大村憲司、シーナら)の写真がグラミー賞のトリビュートのコーナーのように映しだされ、村井さんはそのひとりひとりへの思いを故人に語り掛けるように言葉にしていく。涙。
続いて大村真司(父親は大村憲司)、林一樹(父親は林立夫)、Asiah(父親は小坂忠)という若い3人と村井さんとで赤い鳥の「翼をください」をレゲエ・アレンジにして演奏。途中から赤い鳥のメンバーだった紙風船のふたりが加わり、アレンジも原曲通りに。因みにドラムは村上ポンタ秀一だった。
そしてこのあと、新曲だという「ウイ・ビリーブ・ミュージック(音楽を信じる)」を小坂忠と娘のAsiahが熱唱。村井さんによれば、信頼する作詞家の山上路夫氏は現在体調を崩して入院中とのこと。だが力を振り絞って書いてくれたのがこの曲の歌詞だそうな。なるほどそれは山上さんの願い、祈りが込められた、とても心をうつ歌詞だった。
アンコールは村井さんの弾き語りで「美しい星」。最後、ステージには出演者全員が。大団円。
といった感じの約4時間。
個人的には山本潤子さんがここにいなかったのがなんとも寂しかった……がしかし、自分が若かった頃いかにALFA MUSICの音楽をたくさん吸収したか、その頃の感性にどれだけフィットし、どれだけ影響されてきたか、そんなことも改めて思った4時間だった。
因みにパンフレットの販売はなかったがしかし、村井邦彦氏がご自身で全て書かれた十分パンフと呼んで差し支えないものが来場者全員に配られた。それ、知らなかったエピソード満載の非常に充実したもの。そのあたりにもこのイベントの誠実さというか、伝承していくのだ、残していくのだという村井さんの思いのようなものが感じ取れて、素晴らしいなと僕は思ったのだった。
