横浜赤レンガパーク野外特設ステージで、「Blue Note JAZZ FESTIVAL」。
初開催となる「Blue Note JAZZ FESTIVAL」。
マウントフジとか斑尾とか、これまでも野外のジャズフェスはいくつかあった。が、今のようにフェスが増えたのなら、もっと様々な形のジャズフェスがあっても当然いいわけで、特に海外のジャズフェスのようにロックやワールドミュージック側からの出演者を混ぜた形の大規模なものが日本にもあって然るべきだと前々から思っていたのだが、そこでできたのがこの「Blue Note JAZZ FESTIVAL」。
なかなか高額だし、そのわりに出演者の数がそこまで多いわけでもなく、正直しばらく迷っていたんだが、2週間前くらいにやっぱり行こうと決意し、チケットを買ったのだった。
理由は単純に野外フェスが好きだからということと、そろそろ野外フェスの季節も終わりだからということと、グリーンルームフェスに毎年行ってて赤レンガパークのあの場所が気に入っていたから。
あと、ジェフ・ベックを観るなら、ZEPP東京の単独公演が指定席13000円でスタンディングが10500円、ブルーノートフェスはS席が25000円でA席が17000円でスタンディングが10000円。僕はそもそも野外でライブを観るほうが好きだし、これぐらいの料金差ならばフェスでいろんなバンドが観られるほうが得じゃんと、そう考えたのだ。
因みに僕が買ったのは17000円のA席だったのだが、これ、正解だったと思う。大きなほうのステージ(BIRD STAGE)を間近で観られるS席は25000円で、そもそも高すぎるし、そのわりに大きなステージでやるのは3アーティストのみ。あとの3アーティストはS席と真反対側の小さいほうのステージ(DIZ STAGE)でやるわけで、その間はどうせ席を離れるわけだから(席からは観えないからね)、なんというか勿体ない。スタンディングは10000円と一番安いがしかし、スタンディングのエリアから大きいほうのステージを観るにはさすがに距離が遠い。というふうに考えると、A席がまあ距離と値段のバランスがちょうどいいのだ。いや、それでもそこにドリンクチケット代500円が乗るのだから、やっぱりロックフェスに比べると高額だなとは思うけど……。まあ、ギリギリかな。来年も同じ値段で開催されるなら、僕はA席を選ぶでしょうね。
で、フェスとしてどうだったかといえば、これが非常に楽しめた。まず、天気はいまにも降りそうな雲行きだったが、結局降らず…どころか夕方近くにはパアッと晴れ渡った。ロケーション的にはもともと最高なので、だから気持ちよくあれこれ聴くことができた。
ただ、指定の席があることがよかったことなのか、それともオールスタンディングでもよかったのか、そこはなんとも言えないところだ。結果として、例えばパット・メセニーとかロバート・グラスパー・トリオのようにじっくり座って聴きたいジャズものに関しては、椅子に座って聴くことができてよかったなと思ったのは確か。でも、ジェフ・ベックのときにノッて観たくなって立ちあがった人が近くにいたのだが、その際、その人は後ろの席の人に「座れ!」と注意されシブシブ座っていて、立ちたいのに立てないのはちょっと不自由だなと感じもした。
あと、最も問題だと感じたのが動線で、特に会場入り口付近があっちに行きたいひととこっちに行きたいひととで常にグッチャグチャ。席があるエリアにはチケット持った人しか入れないようにするため柵がやたらとあって、それが動きの邪魔になっているのだ。オールスタンディングにすれば当然そんな問題は起きないわけで、そのへんを来年以降はどう改善するのか……よくなることを期待したいところだ。
以下、観たアクトに関して、簡単に感想を。
ハイエイタス・カイヨーテ。
オーストラリアはメルボルンの話題のソウル(ジャズ)ユニットで、CDもそれなりに気に入ってたので絶対観たいと思ってたんだが、これが期待を遥かに上回ってめちゃめちゃよかった。エレクトロをまぶした未来的なネオソウル。変拍子と転調の妙技。つまり複雑そうな曲構成ながらも聴いてるとスッとカラダに馴染んで揺れたくなるような、まるでなんかの魔法にかかったような聴き心地だった。ヴォーカル女性のネイ・パームの歌にはエリカ・バドゥ的な気怠い感覚もありながら、でも基本的には陽性であって、歌いながらずっとニコニコ。ほかの男性メンバーたちは彼女の歌とギターに感覚的に即対応できてて、バンドとして高いレベルで一体となっていることが伝わってきた(ドラムの叩きにはクリス・デイヴに通じる跳ね感あり)。宮崎駿の「ラピュタ」にインスパイアされたと言って始めた曲とか、ちょびっとフライングロータスっぽいウニョウニョしたニュアンスもあって、ホントかっこよかったな。だから曲を進めるごとにどんどん観客の歓声やら拍手も大きくなっていって、最後の曲が終わっても拍手鳴りやまず。フェス初っ端だというのにアンコールもありました。いやぁ、よかった。野外フェスにピッタリ。この時点で僕、「ああ、やっぱ来てよかった!」と思いましたね。
パット・メセニー with ブルーノート・トーキョー・オールスター・ジャズ・オーケストラ。
パット・メセニーはほとんど通ってきてないので何も語る資格がないのだが、そんな僕でも知ってる曲が多かった(ってなことしか書けないのがなんともアレだが)。席に座って優雅という言葉のピッタリくる演奏をときどきウトウトしながらフワ~っと聴いてました。ホント、雨降らなくてよかった(ってなことしか書けないのがホントにアレだが)。
スナーキー・パピー。
最高。とにかく全員が超絶技巧の持ち主で、それが一体となったグルーヴがとてつもなかった。特に目に見えて超絶っぷりを発揮してたのが黒人メンバーたちで、とりわけキーボーディストとドラマーがハンパない。なんだあれはっていう。これぞライブバンド。ただでさえ開放的な音なのに、彼らの演奏中にそれまで曇ってた空がぱあっと晴れて、開放感倍増。ハイエイタス・カイヨーテに続いて、またもや「ああ、来てよかった!」と僕は思いましたね。これまたアンコールもあり。ただ、ちっちゃいステージのほうの出音がちょっと弱めだったので、今度はフジとかの最高の音響設備のところであれを存分に味わいたい。
ロバート・グラスパー・トリオ。
エクスペリメントのほうはサマソニとタイコでも観てるが、トリオをフェスで観るのは今回が初めて。どっちかというとエクスペリメントの音のほうがフェスに向いてるんじゃないかと始まる前はイメージしてたんだけど、別にそんなことはなくて、トリオの演奏も野外で聴くのが気持ちよかったです。始まりからプリンスの「サイン・オブ・ザ・タイムズ」で、そこからもうほどよいスリルとほどよい優しさがいいバランスで伝わってきて。グラスパーのピアノはエクスペリメントのときよりも繊細さがあるんだが、ベースとドラムとそれが混ざるといい具合にまろやかにもなるっていう。これは座ってじっくり聴けたのがよかったかな。で、途中でなんとスペシャルゲストとしてパット・メセニーがそこに参加。グラスパーもさすがに「緊張しちゃうなー」みたいなこと言ってたけど、でも演奏終わってハグしてるときとかホント嬉しそうでしたね。あ、あと、これは前半のことだけど、グラスパー、ポロポロって弾いて「ありがとうございましたー」とお辞儀してステージをはけようとして、で、振り返ってベーシストの顔見て、「あ、まだ? 終わりじゃない? こりゃまた失礼しやしたー」ってな感じでまた演奏を始める……っていうギャグを2度ほど繰り返してて、それはなんか吉本新喜劇っぽいセンスでお茶目やなぁとも思いました。
インコグニート。
かなり久々に観たけど、安定感ありつつ盛り上げ方も上手で、さすがだなぁと。初っ端から「トーキンラウド」で懐かしくなったりも。ヴォーカルは今回もトミー・モムレル、ヴァネッサ・ヘインズ、ケイティ・レオーネの3人。僕はヴァネッサ・ヘインズが一番上手いと思う……というか彼女くらい濃いめの歌唱の人こそがこのバンドには合ってるんじゃないか。観客、みんな大盛り上がり。最後はブルーイが、人種なんて関係ない、僕たちはひとつだ、ワンネイション・アンダー・ア・グルーブ、ラブ&ピース…みたいなことを言って、ボブ・マーリィの「ワン・ラブ」がかかっておしまい。グリーンルームフェスみたいだな。という感じでライブは非常によかったんだけど、ただ、スナーキー・パピーにも増して出音が小さかったことだけが残念…というか勿体なく感じた。それはバンド側の問題ではなく、このステージ側の音響設備の問題だけど。
ジェフ・ベック。
ジェフ・ベックを観るのもそういやけっこう久々。前回観たときはベースが若くて可愛くて凄腕のタル・ウィンケンフェルドだったけど、今回はタルちゃんに代わってもう少し年上のかっこいい姉御。そう、ロンダ・スミスだった。プリンス・ファミリーの。というわけで、僕は正直ロンダ・スミスばっか観てました。やっぱかっこいいんだよな、姉さん。あと、ドラムのジョナサン・ジョセフもよかった。で、ゲストヴォーカルはジミー・ホールという、いかにもアラバマ出身らしいおっさんなんだが、この人のオールドファッションな歌いっぷりと動きっぷりとカッコはハッキリと好き嫌いの分かれるとこだよね。なんか古臭いな~、イナタイな~って思った人は多かったと思うけど、でもそこがいいという言い方もできるし、あの人の歌があんな感じだからジェフ・ベックのギターが際立つのだなとも思えるし。僕はというと、歌はともかく、あの人のブルーズハープは泥臭くてかっこいいと思いました。そして主役のベックさんは、ブルージーな曲でもファンキーな曲でも幻想的な曲でもザッツ・ジェフ・ベックな音色といった感じで、その“どこをどうきってもジェフ・ベック”であるという行き方を十分に堪能。欲を言えばもう少しアッパーでギンギンに弾きまくる曲も聴きたかったけど、まあ十分にエレキギターの快楽といったものを味わいました。
そんな感じでひとつひとつがけっこう長めのライブを6組分観ることができたんだが、僕的に強く印象に残ったのは大御所よりもむしろハイエイタス・カイヨーテとスナーキー・パピーという現行のバンド二組。このふたつをいま、野外で観ることが出来たのは大きかったし、どちらも大勢の観客たちがしっかり盛り上がって観ていたのも嬉しかった。つまり昔ながらのジャズフェスとは違って、ちゃんと今の音楽を聴いている比較的若い音楽ファンもたくさんいたということだ。それはなんというか、このフェスの大きな可能性に繋がるんじゃないか、と。
ということで、来年以降も続けていってほしいですね。出来ればもう少しだけ料金下げて…。
ということで、来年以降も続けていってほしいですね。出来ればもう少しだけ料金下げて…。
あ、そうそう、ジェフ・ベックを観てるときにクッキリと中秋の名月が拝めたのもよかったです。野外フェスのよさって、例えばそういうことだもんね。
