2015年9月21日(月・祝)

渋谷公会堂で、BONNIE PINK。「20th Anniversary Live“Glorious Kitchen”」。

乃木坂のビルボードライブ東京で須長和広のライブを観たあと、急いで渋公に移動(渋谷の駅からマジでダッシュした)。僕が会場に着いたとき、ちょうどBONNIEがステージに登場したようで、大きな拍手と歓声が扉の外にも聴こえていた。

その1曲目は「So Wonderful」。こうしてデビュー20周年を晴れやかな気持ちで迎えられたということの思い…「なんて素晴らしい日なんだろう!」というその気持ちが、この曲をオープナーに選ばせたのだろう。

デビュー20周年。BONNIEは決してはしゃいでるわけではなく、序盤から落ち着いて歌うことに集中しているように見えたが、但し衣装は「今日くらいは着てもいいじゃない?」と自分でも言ってたように、ピンク中心のヒラヒラしたもの。はしゃぐ気持ちがそういうところに表れるのがBONNIEらしいw

この日のバンド名の由来となった「Bad Bad Boy」、それに「Gimme A Beat」といった曲でジワジワと引き込んでいった序盤、僕の記憶が合ってれば確か4~5曲目あたりで「カイト」が歌われたのだが、個人的に大好きなその曲が今回久々に聴けたのは嬉しかったし、その際の鮮やかな映像も曲に新味を加えていた。そう、20周年だからか、今回はスクリーン上に曲とマッチした映像を映し出すという試みもなされていたのだが、「カイト」に限らずその効果は大きくあったと僕は思う。

そしてBONNIE自ら「赤毛だった時代」のことに触れ、メドレーも含めつつ「It's gonna rain!」や「Silence」、それに「犬と月」「金魚」といった初期の人気曲を次々に投下。終盤に持ってくることの多い「Heaven's Kitchen」もこの日はその流れで早々と歌われたのだった。

で、ここからが20周年ならではのスペシャルなパート。「forget me not」がバンドで演奏されているその途中、フラリと…といった感じで背の高い青年が袖から出てきてステージ中央のDJブースの前へ。ごく自然にバンド演奏に自分の音を加え始めた。大のBONNIEファンでもあるtofubeatsだ。
その曲が終わるとバンドメンバーはいったんステージを去り、彼はそのあとひとりでBONNIE楽曲をあれこれ繋いでスピン(その間、BONNIEは衣装チェンジ)。そこからはtofubeatsのハイセンスとBONNIE楽曲への愛が大いに感じられ、しかも後方スクリーンの映像もこの場面で最大限に機能していた。
そして落ち着いたパンツルックで再登場したBONNIEに正式に紹介されたあと、続いてふたりだけでコラボ曲の「衣替え」を。これもよかったが、さらにそのあとの「Thinking of You」がなんといっても圧倒的に素晴らしかった。ふたりだけで始めたこの曲の中盤から再登場したバンドメンバーたちが混ざる形で演奏されたのだが、その音の新鮮さといったらもう!  バンド音とDJ音の合わさりは、その曲を…というかBONNIEらしい音のあり方を軽々と刷新していて、僕の耳は喜びまくり。こういう音のBONNIEの曲をもっと聴きたい!と、瞬時にそう思ってしまったぐらいだ。というわけで、この「Thinking of You」こそが僕にとっては間違いなくこの日のハイライト。BONNIEの歌声とtofubeatsの音との相性のよさを改めて強く実感することになった一場面であった。なんならふたりだけでアルバム一枚作ってほしいくらい。

この素晴らしかったtofubeatsとの共演パート以降、ライブ全体のムードもどこか変化したようで、だからそこから終わりまでの曲はどれも前半の数曲以上に強度を伴って響いてきた。聴きなれた「A Perfect Sky」も、晴れ渡った…まさにパーフェクトな空が映し出された映像効果と相まってやけに新鮮に響いてきたし、そこに広がりがあった。

本編のラストは、20周年を迎えたことと両親への感謝の気持ちも合わせて述べながら、なんと96年の2ndシングル曲「Surprise!」を。その際の魂のこもったヴォーカルはとりわけ凄味があったが、バンドの演奏も彼女の歌に同調したもので、特にBONNIEがステージを去ったあとの八橋義幸のギターはプリンスの「パープルレイン」のエンディングを彷彿させるくらいにエモーショナルなもの。うん、あれは凄かった。

そしてアンコールでは、久々の(3年2ヶ月ぶりだそうな)新曲「Spin Big」も初披露。これも十分サプライズだったが、それをも上回るビッグサプライズがその直後にあった。なんと「結婚しました」と発表したのだ。
「4月に結婚したんですが、皆さんに直接報告したかったので今日発表させてもらいました」とBONNIE。というわけで会場は一気に祝賀モードに。多幸感、溢れまくり。まったくデビュー20周年で結婚発表とは、なんとめでたいことよ。
「おめでとう!」の声が飛び交うなか、BONNIEはといえば喜びを素直に表しながらも「結婚しても、これからも失恋ソングも片思いの曲も書き続けます。だって私はストーリーテラーだから!」。そのキッパリとした表明にまた観客たちは大きな拍手を送ったのだった。

で、ラストは「鐘を鳴らして」。これ以上ない最高の選曲。
思い返せば、オープナーの「So Wonderful」、本編最後の「Suprise!」、そしてアンコール最後の「鐘を鳴らして」と、どれもこの日ならではの思いのこもった選曲であった。

いいライブだった。
長年ファンのみんなと同じ時代を生きて、一緒の時を歩んで来たことに歌いながら気付いた……といった最後のMCも胸に響いた。

思えば僕もそんなファンのひとりで、95年のデビュー盤『BLUE JAM』が出た際に初めてインタビューをし(それは『CUTiE』誌の取材だった)、以来、何度も取材でその時々の彼女の思いを聞いてきた。因みに僕がフリーのライターを始めて2年目の年がBONNIEのデビューの年でもあったりする。また、2ndアルバム『Heaven's Kitchen』を出す際の取材に立ちあってくれた(『TOKYO SANTA』という情報誌の)編集者が実はいまの僕の奥さんだったりもして、そんな意味でも確かに同じ時代を生きてきた感を僕は勝手に彼女に抱いている。そんなふうに思えるシンガー・ソングライターはほかにいないし、だから余計に彼女がとにかく20年間歌手活動を続けてきて、そしてその道がここからも明るく続いていくだろうことを嬉しく思う。

ところで、このライブが僕にとっての渋公おさめ。いままで数えきれないぐらいの数のライブを渋公で観てきたが、2週間前にチャボの45周年記念ライブを観て感動し、そして最後にBONNIEの20周年記念ライブをここで観ることができた。何れも非常に感慨深いもの。いいライブで渋公おさめをすることができてよかった。