下北沢GARDENで「花田裕之 55 BLUES ~流れ~」。
花田裕之の55歳のバースデイ・ライブ。
「55歳」ということで、開演も19時ではなく、18時55分だ。
ROCK'N' ROLL GYPSIES、band HANADA、THE ROOSTERZと、主役の花田が3バンドかけもち演奏。
まずはGYPSIESからで、終わりの2曲にはゲストの土屋公平が加わった。すると、会場からは「蘭丸~!」という声援がいくつも。おいおい、蘭丸と呼ばずに公平と呼びなさいよ…と思ったりもしたが、まぁこのあたりからも観客の年齢層の高さが窺えるのだった。
公平はとても明るいバイブレーションを放っていた。昔は言葉少ななギタリストだったが、言葉少なという点では花田がさらに上をいく。公平は「せっかくジプシーズと一緒だからロックンロールやらせてくれよ」とチャボからの影響を感じさせる口調で話して、ゴキゲンなトーンで歌うのだった。因みにそんな公平は、花田のことを「花田くん」と呼び、下山のことは「下山さん」と呼んでいて、それはちょっと興味深かった。
セットチェンジして、次はband HANADA。終わりの2曲には三宅伸治が加わった。「ほかの誰もやりそうにないから…。誕生日おめでとう!」と花束を花田に渡す伸ちゃん。照れる花田。ここ、いい場面だった。そんな三宅伸治はこの日唯一のヴォーカリストと呼んでいいひと。それだけに歌声の伸びが素晴らしい。「Forever Young」の歌詞はやけに沁みたし、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の花田とのギターのかけあいも最高だった。
GYPSIESとband HANADA。どちらも花田が歌ってギターを弾いているとはいえ、やはりメンバーが変わればグルーヴも変わるもの。それぞれに特徴的なグルーヴがあって、どっちも素晴らしい。そう思った。
再びセットチェンジして、最後はTHE ROOSTERZ。
因みにこの日のチケットは完売とあって、会場はパンパンだったのだが(しかも男性客のまあ多かったこと)、大半のひとは恐らくTHE ROOSTERZが観たくて来てたのだろう。ここのセットチェンジの間にフロア前方の人口密度がグッと高まったように感じた。
メンバーは花田裕之、下山淳、穴井仁吉 、三原重夫、そして木原龍太郎。曲は「鉄橋の下で」に始まり、「SUNDAY」、「ストレンジャー・イン・タウン」、「ガン・コントロール」、「LAND OF FEAR」、「Everybody's Sin」(←下山のヴォーカル)、「ネイキッド・ヘビー・ムーン」、「Crossroad」、「バーニン・ブルー」ときて、本編ラストが「再現できないジグソーパズル」。アンコールで「Lady Cool」と「ヴィーナス」。
と、わざわざセットリストを記したのは、THE ROOSTERZを追いかけていたひとだったらこれを見ただけで興奮するに違いないものだから。実際僕も、「うわ、これ来たか」「うおっ、これもやるのか」といった感じで、いちいち興奮しながら聴いていた。わけても「再現できないジクソーパズル」には解散時のいろんな思いを重ねて聴いたひとも多かったんじゃないか。「ヴィーナス」を大江ではなく花田の歌で久々に聴けたのも嬉しかった。
GYPSIESもband HANADAも素晴らしかったが、若い頃に聴き親しんだ曲ばかりとあって、やっぱりTHE ROOSTERZのときにはちょっと特別な感情が起こる。これはもうしょうがない。
しかも、「ヴィーナス」でライブは終了したかと思いきや、まだ続きがあった。メンバーがひっこみ、少ししてステージに登場したのは、花田と、そして柞山一彦だったのだ。やはりメンバーだった彼にも1曲だけでも弾かせたい…というのは、これは花田のバンド愛というものだろう。そして柞山がベースを弾き、花田はアコギで「明日への橋」を。この歌詞に、この歌に、これからも続けていくのだという花田の思いがこもっていた。シメに実に相応しい曲だった。
アラバキ、そして今回と、それぞれの形で「花田裕之 55 BLUES ~流れ~」という現在の花田のあり方を僕は観ることができた。そして思うのは、やっぱりいい歳の取り方をしているな、ここからさらにブルーズマン的な境地に立つことになるのだろうなということ。ああいうスタンスで貫き通し、いろんなミュージシャンたちに愛され、そしていまもこうしてフロントに立ち続けてるミュージシャンは日本にはそういない。60になったときの花田の歌とギターは、どんな味わいを持つことになるだろう…。
