上野水上音楽堂で、チャラン・ポ・ランタン。
『唄とアコーディオンの姉妹劇場千秋楽~結成6周年記念~』“ブタ音楽祭”。
天候が危ぶまれたが、午前中に降っていた雨は午後になってやみ、(小春ちゃん曰く)「ある意味、私たちらしい天気」。
前売りチケットも売り切れたと聞いてはいたが、見事にひとで埋め尽くされた水上音楽堂(約1200人の来場だそうだが、感覚的にもっと大勢のように感じられた)をなかからグルッと見渡して、ふたりだけのライブにこれだけのひとを集められるようになったのだからスゴイよなぁ、確実に認知度があがってるんだなぁと、10人~20人程度の路上ライブ時代から観てきた僕はちょっとした感慨を抱きながら開演を待った。
実際、ツイッターのTLなど見ていると、「これから初チャランポ。楽しみ!」みたいなつぶやきもけっこう流れていたし。きっと初めてのひとには初めて観たなりの驚きと嬉しさが、何度も観てきたひとには何度も観てきたひとなりの再発見と嬉しさが、そして久々に観たひとには久々に観た人なりの驚きと嬉しさがあったに違いない。
ふたりだけのライブといえば、2013年11月の素晴らしかった青山円形劇場公演(『つがいの悲喜劇』~『ふたえの悲喜劇』)が未だに忘れられないが、独特の緊張感のようなものも含まれていたあの濃密なライブとは、今回は方向性のまったく異なるもの。「最期の準特急」や「空中ブランコ乗りのマリー」のようなダークではりつめた曲が円形劇場のライブでは重要な位置をしめていたが、今回はブタ音楽祭という名の野外公演であるからして、あのときのあり方とは(真逆とまでは言わないまでも)別方向。悲喜劇の「悲」要素は抑えられたライブだった。
そもそもインディーズ期の曲は「カシスオレンジ」「人生のパレード」など数曲のみ。ふたりだけの公演ともなれば当然あの頃の曲も多めに演奏されるだろうと漠然と思っていたのだが、そうではなく、今回の公演は現在進行形のチャラン・ポ・ランタン曲にふたりが好きな(大事にしていると言ってもいい)時代の日本のいろんな曲を混ぜて、いまのふたりだけでやってみましたというものだったのだ。
始まりの曲はセットリストにも書かれていない曲でタイトルもわからないが、まずそれにつかまれた。そしてそこからの流れで「さよなら遊園地」。この2曲のトーンと、水上音楽堂特有の雰囲気と、そのときの温度や空気感。あるいはカラスの鳴き声。それが僕にはずいぶんと印象的だった。
思い出していたのは、子供の頃によく遊んだ、そう賑わってるわけでもないデパートの屋上だ。昭和のいつかの夕方の、あの温度や空気感。そういうある種の郷愁がその1曲目~2曲目には特にあった。個人的にはこのライブにおいて、この2曲がもっともグッときたところだったかもしれない。
若いひとにはわかりづらい感覚かもしれないが、そのような“昭和のデパートの屋上感”みたいなものは、思えばこの日のライブ全体に通底するものだった気がする。たとえば「サントワマミー」や「明日があるさ」や「見上げてごらん夜の星を」といった昭和の名曲。または昭和の頃から親しまれ続けているお馴染みのCM曲。こういった曲は、僕は行かなかったツアー初日のゴールデン街劇場でもさぞかしハマっていたに違いないし、地方のいろんな会場も(行ったことのない会場ばかりなのでわからないが)そういった曲が映えるところばかりだったのかもしれない。
そもそもツアー・タイトルからして「唄とアコーディオンの姉妹劇場」だったのだから、ツアー・コンセプト的にも昭和感というか、聴くひとそれぞれがそれぞれなりの日本の原風景を想起させて唄と音に浸れる、そういうあり方を始めから意図してはいたのだろう。
それを考えれば「さよなら遊園地」という曲は、なるほどこのツアーのテーマソングのようなものでもあったことがわかる。
いや、観ながらそこまで考えていたわけではなかったのだが、だからきっといままで何度も聴いてきたこの曲がこの日はやけに印象的に響いたのかもしれないし、この日のライブをあとになって思い出したとき、恐らく僕の頭のなかで真っ先に流れるのは「さよなら遊園地」だろう。
以下、思ったことあれこれを簡単に。
小春ちゃんのコーラスが今回特に美しく思えた曲がいくつか。曲によってはコーラスの域を越え、実質ももちゃんとの二重唱的なあり方も。
以前は歌は二の次という意識で、コーラスの声の出し方も控えめだったように思うが、前回のカンカンバルカンとのライブではメインで歌った曲もあったことだし、彼女のなかで“歌う”ことへの意識が変化しているのかもしれない。うむ、よき傾向。本人は嫌がって(恥ずかしがって?)いたけど、小春ちゃんの歌声が好きというひとは僕を含めたくさんいるし、それをもっと聴きたがっているひともたくさんいるのだから。
「歌舞伎町の女」、よかった。昔(インディーズでミニアルバム出すよりもっと前)、チャランポについてのツイートで「ヴォーカルは椎名林檎みたい」などと書かれることがたまにあって、それについて小春ちゃんが「どこがだ」みたいな感じでキレてたこともあったものだけど、そんな時代が懐かしく思えるほど今回実に堂々と、実に豊かにこの曲はももちゃんの声で歌われていた。それはまるでもとからチャランポの曲のようであり、馴染んでいるというレベルを超えていた。
「CMメドレー」。ツイッターのTLを見ると賛否両論あるようで、長すぎたという感想も少なからず見受けられたが……うーん。でもあそこまでやるのがチャランポらしさだし、「あれもいい曲だったよね」「これも歌いたいよね」ってなったら、そりゃ歌うでしょう。実際、回を重ねるごとに少しずつ増えたり順番が変わったりもしたそうだし。
「泣き顔ピエロ」はやっぱりとてもいい曲。あっちゃんの映画の中でそれがかかった際には心底グッときたが、今回ライブで聴きながら改めてあっちゃんとチャランポが出会ったことの大きさを思った。
「蕾」から「人生のパレード」への流れ。ここ、オープニングの2曲に続いて、僕的にはかなりグッときたところ。ライブでふたりでやる「蕾」、いいですね。
「忘れかけてた物語」。ライブのオープニングに相応しいこの曲をアンコールのエンディングにもってくるというアイディアが面白く、イントロのアレンジが確かに終わりにも相応しい感じになっていてよかった。
といった感じで、日が徐々に暮れてく様子とかも含め、“味わい”と“楽しさ”の塩梅のいいライブでありました。
