12月3日(水)

めぐろパーシモンホールで、プリシラ・アーン。

英語曲と日本語曲、ニューバンドでの演奏から弾き語りまで、今回はずいぶんいろんな見せ方をした公演だったが、とりわけよかったのは「In A Closet In The Middle Of The Night」。テノリオンと多重コーラスによるこの曲が今回のハイライトと言っていいだろう。
いつもならプリシラのライブの最大の見どころ(聴きどころ)となる足元のペダルを使ってのループや神秘的な多重コーラスを駆使した表現が今回はほとんどなかったのだけど、この曲でようやく多重コーラスが聴けたときには、ああ、やっぱこれだよなと。うん、あれは美しかった。引き込まれた。

引き込まれたと言えば、最後にひとりで歌ったユーミンの「ひこうき雲」(の、特に前半を無演奏で歌ったところ)も素晴らしかった。

バンドとの曲では、やはり歌い慣れてるからか「When You Grow Up」のような旧曲が、プリシラ自身リラックスして歌えているようでよかったな。

それから、新しいバンドのメンバーの中にチェロのオリヴァー・クラウスがいたのが嬉しかった。デビュー時からのプリシラの音楽における、ある意味キーパーソン。「ドリーム」もまさしくレコードで何度も聴いたあの美しいチェロの音だった。

と、このようにいい場面ももちろんいくつもあったのだが、全体的にはホールにおいての初ワンマンだったからか、あるいは新バンドで始めてまだ3~4公演目だったからか、プリシラはちょっと緊張していた様子。曲によっては珍しく歌詞がとんだり、演奏をミスったりしたところがあり、テノリオンの操作にも手間取ったりと、ハラハラさせられる場面が少なくなかった。

いろんな見せ方をした公演と先に書いたが、大好きな日本だから日本語の曲もたくさんやって、MCも日本語でして……というようなサービス精神がむしろ散漫さを漂わせる結果に結びついてしまったかなという気もちょっとする。足元のペダルを使ったループの音作りをほとんどやらなかったのも気になったところで、あれはプリシラのライブの最大の魅力のひとつなのだから、それをやらないのは勿体ないとも思った。

しかし、バンドはとてもいいバンドで、ツアーを続ければどんどんよくなっていくだろうポテンシャルの大きさを感じた。できればこのバンドでもっとツアーを続け、さらにまとまりができたときにもう一度観たい。そう思った。