11月28日(金)

『Get On Up』(原題)、試写。

*ややネタバレありなのでご注意を。

2015年春に公開が予定されているジェイムス・ブラウンの伝記映画。制作をミック・ジャガーが手掛け、『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』を撮ったテイト・テイラーが監督している。

ああ、こういう切り取り方をしたか。というのが観終わってまず思ったこと。どういう切り取り方かは書かないが、言えるのは、これはJBのひとつの側面であり、ある部分を強調してドラマにしたものだということだ。

主演はまだ若い新鋭チャドウィック・ボーズマンで、彼はとてもいい。ライブにおけるJB独特のあの動きを完全にものにし、もちろん股割りも見事に決め、高めの声で訛る独特の喋りのトーンもまさしくJB。実にたいした存在感だ。

この映画の鍵を握るボビー・バードを演じているネルサン・エリスも素晴らしい。ほかにもダン・エイクロイドがいい味出してたり、あの(シンガーの)ジル・スコットがJBの2番目の奥さん役を好演してたりする。役者はみんないい。

年代ごとにけっこうしっかり時間を割いて描かれもするライブシーンはどれも迫力あって最高だ。実にダイナミック。ライブシーンがしょぼかったらこういうのは成り立たないものだが、その点はミック・ジャガーがプロデュースということもあってか妥協がない。観てて「かっけー!」と昂揚する。

だがお話に関しては、これはちょっと映画的に凝ったところが裏目に出てしまっている感も否めないのではないか。
通常の伝記映画のように時系列通りに話を進めず、いきなり80年代のあの事件から始まって、そこから幼少時代に遡る。そのあとは50年代、60年代と追って話を進めていくのだが、その合間にもまた何度も子供の頃の回想が挿入されたりして、その撮り方がどうもそれほど効果的に働いているようには僕には思えなかったのだ。

JBがどういう歌手でどういうふうに生きてきたか、多少なりとも知っている人ならまだついていけるだろう。が、知らない人にはその進め方がかえってややこしさを印象付けてしまうのではないか。そうじゃなくても説明的な繋ぎのエピソードがほとんどないまま、いきなり場面や年代が変わったりするので、どうしてここでJBはこういう行動に出たのか、史実を知らない人が観たらハテナマークがいくつも浮かぶことになるに違いない。

例えば『レイ』を観れば、レイ・チャールズがどういう音楽家で、どういう人間で、どういう人生を送ったかがよくわかる。レイ・チャールズをリアルに知らない人が観ても感動する作りになっている。しかし『Get On Up』を観てもJBがどんな人間だったのかは、よくわからない。ある側面はわかる。が、ある側面しかわからない。極端に言うなら、とりあえず凄いライブをやる人だったことと、あとはなんだかずいぶんと厄介な人間だったことがわかるだけだ。
まあ実際にそのへんわかりづらい人であったのは確かだけど、もうちょっとこう成功していく過程とか、どうしてそうなっていったかとか、端折らないで丁寧に描いてほしかったというのが正直なところ。

いや、面白かったんですけどね。ゾクゾクするシーンもいくつかあるし。メンバーに独自の音楽理論説いてるところとか非常に興味深いし。でも映画的にここまで凝らずにもっとまっすぐ描いたほうが多くの人の心に響いたんじゃないかとは思ったな。たぶんこれ、けっこう賛否がハッキリ分かれる映画だと思います。