いよいよ今週・15日に発売となるSuperflyの3rdアルバム『Mind Travel』。
ここに行き着くまでに度々取材をしてきた僕としてもちょっとした感慨があり、この発売タイミングに合わせて微力ながらも何かしたい。
そう思ったので、マスコミ向けのプレスリリース用に書かせていただいた文章を、今日・明日・明後日と3日連続でここにアップすることにした。
10thシングル「Wildflower & Cover Songs:Complete Best 'TRACK 3'」までは、以前、当ブログにもアップした。
従って、今日は11thシングル「Eyes On Me」、明日は12thシングル「Beep!! / Sunshine Sunshine」、そしてアルバム発売日となる明後日に「Mind Travel」の文章をアップしたい。
まずは昨年12月にリリースされた11thシングル「Eyes On Me」のプレスリリース原稿をどうぞ。
(書いた時期が昨年冬であることを踏まえてお読みください)
**********************************************************
現在の思いを素直に歌にした、「暖炉のような」ラヴソング
Superfly、11 thシングル「Eyes On Me」
『Box Emotions』の成功によって、Superflyは“ロック・アーティストである”ことを世間に知らしめた。
わけても(ドラマに使用された)「Alright!」や、最近なら(サッカー番組のテーマ曲になった)「タマシイレボリューション」が広い範囲で浸透したことが大きく、Superflyと言えばアッパーなロック・ナンバーで聴く者を高揚させるダイナミックなヴォーカリストであると認識した人が相当増えたはずだ。
その認識は間違いじゃないし、志帆自身、『Box Emotions』前くらいからそのこと……つまりSuperflyはロック・アーティストであるということを前面に押し出す意識を持って動いてきたものだった。
ならば、その目的はある意味で達成されたとも言えるわけで、例えばフジロックのグリーン・ステージで堂々たるパフォーマンスを見せ、初日のトップバッターにも関わらず多数の観客による大きなうねりが起きたこともまたひとつの証左であっただろう。
だが、そうなると今度はもう一方の魅力であるバラード表現のよさをもっと広く伝えたいという思いにも筆者などはなるわけで、そうした意味でこの11枚目のシングルは「待望の」と言えるものだ(そのような気持ちでこの新曲を迎える以前からのファンは少なくないだろう)。
「Eyes On Me」。
シングルでは「My Best Of My Life」(7thシングル)以来となるバラードであり、純粋な意味でのラヴソングとしては「愛を込めて花束を」(4thシングル)以来のものとなる。
「ラヴソングをシングルで歌わなかったのは、やっぱりロック・アーティストでいたいってことをすごく意識していたからだと思います。特に去年は」と志帆は言い、こう続ける。
「去年は自分と向き合って闘わなきゃっていう気持ちが強かっただけに、感情のアップダウンが激しかったんですよ。長いツアー期間とか、けっこうメンタルを維持するのが大変で。でも今年の始めに1ヵ月くらいお休みをいただいてからは、穏やかな気持ちで過ごせるようになった。そうしたら去年は見えてなかったものが見えてくるようにもなって、それを今、歌いたいという気持ちになったんです。
フェスにいろいろ出させていただいたことも繋がってるところがありますね。何も気にせず駆け抜けるようなライヴをたくさんしたことで肩の力が抜けたというか、なんか気が楽になった。去年よりも楽しんで歌えるようになったんです。
で、『Wildflower』は今年1発目のリリースということもあり、自分に向き合って闘ってる曲を多く入れたんですが、その反動もあって、優しい曲を歌いたいなと。歳を重ねたってこともあるのかな。今年になって私のなかの女性的な部分が出るようになってきてて、去年だったらそういう自分に蓋をしとこうと思ってたんですけど、今はそういうことを表現したい自分を許せるようになった。気持ちに逆らわず、自然でいたいと思うようになったんです」
歌っておきたいことが先にあった。
こういうことを今は歌いたいのだというイメージがまず、志帆にはあった。
それを彼女はつらつらと日記のように書き綴って多保孝一に渡し、「この気持ちに合うメロディを作ってほしい」と依頼した。
これまでになかった作り方だ。
「今までは多保くんの作ったメロディに引き出される形で自分の気持ちが歌詞になっていくことが多かった。メロディによって自分のモヤモヤした感情が言葉になっていくというか。でも、いつもそれだと受け身すぎるなって思って。逆に“こういうことを歌いたいんだけど、メロディに表すとどうなりますか?”っていうのをやってみたかったんです。最初にテーマを投げて、話し合いながら高めていくことで、メロディと歌いたいこととの距離がもっと狭まるんじゃないか、曲自体がもっと強いものになるんじゃないかと思って」
成果は聴いての通り。
この歌詞はこのメロディと合わさることが予め運命づけられていたんじゃないかと思えるほどのものになっている。
シンプルでオーガニック。
言葉とメロディが完全に一体となって、じんわり心の深くに沁み渡っていく。
「“リンドン リンドン”の部分のメロディが特に気に入りました。始めはここ、別の英語詞だったんですけど、私には“リンドン リンドン”って聴こえてきて、もともと冬の景色を思い浮かべていたこともあり、ピッタリだなって。“愛を込めて花束を”のようなインパクトには欠けるかもしれないけど、じんわりじんわり入ってくる。暖炉のような曲だなと思いましたね」
因みに志帆がもともとイメージしていた“歌いたかったこと”とは、どのようなことだったのだろうか。
「あるときふと、自分が幸せな瞬間に浮かべる笑顔って、ガラスとか鏡に偶然映ったりしない限りは自分じゃ見ることができないんだなって思ったんです。私の場合は映像とかで見る機会もあるけど、でもリアルタイムにその瞬間を見たり感じたりすることはやっぱりできないわけで。
で、私はよく“人はどうして誰かと一緒に生きていくんだろう”って考えたりするんですけど、“ああ、自分じゃ見ることのできない笑顔を誰かに見てほしくて……きっとそう思える人とずっと一緒に歩いていくものなんだな”って思って」
そして、このメロディであれば、優しく、自然に、そんな思いをそっと伝えることができると感じたそうだ。
ラヴソングとは言え、ことさら「愛している」を繰り返すようなことではなく、「会いたくて」や「切なくて」と繰り返すでもなく、志帆は情景を出だしに描いた上で控えめに思いを歌っていく。
だからこそ聴く者の胸のなかにじんわりと広がりもする。
また蔦谷好位置のアイディアでハープやオーボエの音が加わったことにより、曲の温かみが増し、スタンダードなウィンター・ソングになりうるある種の風格も備わった。
毎年この季節に……できれば“ずっと一緒に歩いていきたい”と思える人と聴きたくなる、まさしく「暖炉のような」名バラードだ。
*
カップリングの2曲についても簡単に触れておこう。
「Rescue Me」と「プリマドンナ」。
おお、ついにこの2曲がレコーディングされたかと、筆者は嬉しくなった。
1stアルバムが世に出る前年……そう2007年いっぱいまでは、この2曲ともSuperflyのライヴに欠かせないレパートリーだったのだ。
「覚えてます?」と志帆。
忘れるはずがない。
あの頃、「Rescue Me」はいつもライヴの2曲目に配置され、一気にドライヴさせる役割を果たしていたし、「Hello,We Love You Tour」(2007年に行われたSuperflyの初ツアー)では子供の頃からの夢を語ったあとに歌われた「プリマドンナ」も強い印象を残していた。
因みにどちらも志帆と多保が上京した当時に作られた曲だ。
「何度も(レコーディングの)候補にあがりながら、ずっと寝かせていて。で、起こしました(笑)。これでまたライヴでも歌えます!」
寝かせた分だけの向上がある。
かつてタイトに演奏されていた「Rescue Me」は、ワイルドなブラスロックに生まれ変わった。
ドラムはThe Birthdayのクハラカズユキだ。
また「プリマドンナ」は、かつてはもう少しロックよりだったものを、歌詞に則したノスタルジックな味付けがされた。
「この曲を歌うと、初心に戻れるんです」と志帆は言う。
あの頃の思いと、現在の思い(=「Eyes On Me」)。
一周してまたそれが繋がりを見せた、Superfly、11枚目のシングルである。
(内本順一)
- Eyes On Me(初回限定盤)/Superfly
- ¥1,600
- Amazon.co.jp