5月9日(日)


恵比寿・リキッドルームで、サンハウス。


チケットは発売日に買った。
この日を本当に楽しみに待っていた。
ライヴというものを観に行く回数はけっこう多い方だと思うが、これほど待ち遠しかったライヴは久しぶりだ。


そりゃそうだよ。
だってサンハウスなんだから。


サンハウスは1970年に福岡で結成され、78年に解散。
さすがにこの時期のライヴは観ていない。
僕がサンハウスを知ったのはルースターズやモッズらがデビューして所謂“めんたいロック”のムーヴメントが起こり、それにはまってからだから、80年代に入ってからだ。
が、最初に就職したデザイン会社の先輩が福岡出身で、その人は何度もサンハウスのライヴを観ていて、いかに凄いかをいつも熱く話していたので、とにかくほかとは比べ物にならないレベルにあるバンドだということは勝手にわかっていた気になっていた。


そしてその凄さを実感として理解したのは、1983年の日比谷野音における再結成ライヴ。
そう、盤にもなったクレイジー・ダイアモンズ、あれで初めてサンハウスのステージを観た。
鳥肌が立ちっぱなしだった。
なるほど、それまで観た日本のどんなロック・バンドとも異なる“やばさ”があった。
やばさの度合いが違っていた。
ヘンな譬えでなんだが、彼らに影響されて出てきたいくつもの福岡のバンドをチンピラのかっこよさとするなら、サンハウスはヤクザの怖さのようなものがあったのだ。


CRAZY DIAMONDS/サンハウス

その後、1998年にも再結成しているが、僕はその情報を得られなかった。

よって今回、僕がサンハウスをナマで観るのは83年以来で、2度目ということになる。
そりゃ、待ち遠しかったに決まってるでしょう。


しかも、先月には柴山さんと鮎川さんにインタビューすることもできたし(めっちゃ緊張したぁ)。

↓インタビューの前編はこちら。後編も今週アップ予定です。

http://musicshelf.jp/?mode=static&html=special69/index



さて、先月買ったヒステリックグラマーのサンハウスTシャツ(『有頂天』のジャケのあのシルエットのやつ)もばっちり着て行った恵比寿・リキッドルーム。
ソールドアウトになっただけあって後ろまでぎっしりで、開演前からなんともいえない熱気だった。
やはり40代以上のロックおやじが大半で、みなこれから始まるライヴに異様な興奮をおぼえている様子。
もちろん僕も。
だってサンハウスなんだから。


*えっと、ここからはネタバレになる記述も含みますので、これから観に行かれる方はあとでお読みくださいねー。


今回は『有頂天』や『仁輪加』レコーディング時のオリジナル・メンバー。
菊こと柴山俊之、鮎川誠、篠山哲雄、奈良敏博、鬼平こと坂田紳一の5人だ。


1曲目はいきなり「キングスネークブルース」で、菊は間奏時にマイクスタンドを股間に挟んで、何度もしごく。
お客さん、やんややんや。


続いて「爆弾」がきて、「借家のブルース」がきて……始めっからこんなに代表曲を続けてやっちゃって、後半にとっとかなくていいのかとか一瞬よぎったんだが、いらぬ心配でしたわな、もう最後の最後まで「でたーっ」と嬉しくなる曲ばっか。

とっておきの曲ばっか。


そうだったのだ、サンハウスの曲は全部そういう曲だったのだ。
全部が全部とっておきの曲だったのだ。
さんざんレコードで聴いただけあって、最後までほぼ全曲ソラで一緒に声だして歌っちゃってる自分がいたもの。

ってか、そういうお客さんがたくさんいた。
客席のおやじたちの多くが、好きな曲の始めのギター・リフでいちいち「おおーっ」と声をだし、一緒に歌ったりもしていたのだ。


とりわけ大きなどよめきがあったのは、「久しぶりにやる曲」と菊が言い、続けてこの曲のタイトルを言ったとき。
「雨」!
いやー、僕もこれをやってくれるとは思わなかったのでビックリ。
グッときたー。


いや、それにしても、演奏が素晴らしい。
ずっとこのメンバーでやってたんじゃないかと思えるような見事なバンド・アンサンブル。
久しぶりだなんて全然思えない。
そしてそれは、どこをとってもサンハウスの音、この5人だからの音なのだ。


まず、リズム隊が鉄壁だわな。
奈良さんのベースがまあスゲェこと。
なんでもない顔してとんでもないフレーズを平気で弾く。
そんで、鬼平さん!
今回の再結成は、鬼平さんが今年還暦だってことがきっかけだったそうだけど、この人のドラム、ひとつひとつがドスンと重い。
なんかこう、ひとつひとつの叩きに魂と情が入っているというようなドラムなのだな。


ギターはといえば、鮎川さんはもう言うまでもないが。
12年ぶりの参加となった篠山さんのリズム・ギターも本当にいい味が出ていて。
そんなふうに現役で続けていたメンバーも、そうじゃないメンバーも、そこにヘンな違いはなく、このメンバーだからこそという音になっていたのが素晴らしいと思ったなぁ。


菊さんはといえば、僕は4月に久しぶりにジライヤのライヴも観たんだが、やはりヴォーカリストたるもの観客の熱狂の度合いがでかければでかいほど気も入るというもので。
声の出とその迫力がやはりとてつもなかった。
発する毒々しさと猥雑さがハンパじゃなかった。

3曲目で早くも上半身裸だし。

男性客の熱い声援は、「うるさい!」と一喝するし。


それにしても5人のうち3人が還暦を過ぎているそうだが、なんなんだろうか、このやばさは。このかっこよさは。

繰り返すけど、本当に見事なバンド・アンサンブル。
それはもう奇跡的と言いたくなるくらいに。


アンコールで「ビールスカプセル」を聴きながら僕は、いつもいんなことに苛立っていた自分を思い出したりしつつも、なんともいえない力が内側からぶわわわわっと湧いてきて、これがロックなんだよオラぁとかなって。
同時に、こんな曲やれるバンドはもうないよなとか、今の若いのでこれだけ猥雑さを持ったバンドなんてないよなとか考えて、その圧倒的な独自性と存在感に改めて感じ入ったりもした。


終わってからもその興奮が簡単におさまるはずもなく、やっぱり観に来てた友達Kと居酒屋直行。
因みにふたり揃って、Tシャツは『有頂天』の菊のあのシルエットっていう(笑)


次はフジロックですよ、サンハウス。
楽しみすぎるわ。


有頂天/サンハウス

THE CLASSICS/SONHOUSE~35th anniversary~(DVD付)/SONHOUSE



↓1998年の再結成ライヴから、「爆弾」!

http://www.youtube.com/watch?v=uVYNuvLaTZo

↓同じく1998年のライヴ映像から、こちらは「キングスネークブルース」!

http://www.youtube.com/watch?v=P3wMY_IQSoU&feature=related