1月9日(金)


九段下・日本武道館で、Ne-Yo。


天晴れ、Ne-Yo!!!
やっぱりキミは“やれる”男だったんだね。
お見逸れしやした。


予想してた以上に素晴らしいショーだった。
やっと……やっと本気を出したんだな。
で、本気を出せば、やはり彼はこのぐらいのものをしっかり見せることができる器の持ち主なのだ。


デビュー前にマイアミでジョン・レジェンド公演のオープニングアクトを務めたのを観て以来、渋谷VUENOS、横浜べイホール、渋谷WOMB、新木場スタジオコースト、赤坂BLITZ、幕張メッセなど(ほかにもあった気がするが忘れてもうた)、僕はこれまで何度もNe-Yoのライヴ(及びショーケース)を観てきたが、ハッキリ言って今回はこれまでのものとは比較にならないハイ・クオリティなショーだった。
そりゃもう、“今までのはなんだったんだ”と言いたくなるぐらいに。


Ne-Yoがバンド・セットによる“ちゃんとしたライヴ”を初めてやったのは、去年4月のSpringroove公演・及び赤坂BLITZ単独公演。
それ以前は毎回バンドなしのDJセットでやっていて、前にもこのブログで書いたが、07年の新木場スタジオコースト公演の頃にはもう、こういう(DJセットでお茶を濁すような)ライヴが繰り返されるほどにアーティストとしての価値がむしろ下がることになるんじゃないかとまで危惧したものだった。


で、そんな思いをようやく払拭してくれたのが、去年4月の初のバンド・セットによるSpringroove公演と赤坂BLITZ単独公演だったわけだが、しかしそれでも正直まだ僕には不満が残っていた。
まだまだこんなものじゃない、本気になれば彼ならもっといいものを見せられるはずだ、と。
というのも、その2公演にしても、ようやくバンドが入ってはいたものの、中にDJがいて、そのDJの出し音に頼っている部分が多かったから(つまりナマのグルーヴが希薄だったということ)。
また、バンドもそのときの日本公演に間に合わせるべく急いで結成したのがわかる演奏で、かなり粗かった。
とりあえずNe-Yoにとっては、ようやくバンドでライヴを始めました……というスタート段階。
それが08年4月の2公演だったのだ。


あれからわずか9ヵ月での今回の武道館公演が、じゃあなぜ見違えるほど格段にいいものになったのか。
それは要するに、今回はNe-Yoがちゃんと“ショーを作り込む”ことに集中し、それなりの時間をかけたからだと思う。
逆に言うと、今まではやはりその時間が取れなかったのだろう。
彼の意識としても一義は楽曲~作品制作のほうにあり、まずはそっちで名を成すことを目標にしていて、そっちで自身が満足のいく成果を上げるまでは、ライヴは二の次だというふうに考えていたんじゃないか。
で、去年の3作目で作品作りにおいてはそれなりにやれることをやりきれたから、ここでようやくライヴ・パフォーマーとしてきっちり評価を得られるものをやろうと……その時期が来たのだと考え、それを実践したんじゃないか。


もっと言うと……僕はこう思っている。
彼は最初っからライヴに対するビジョンをハッキリと持ってはいたのだが、それを具現化させるのはアルバムを3枚作ったあとだと考えながらやってきたんじゃないか。始めからそうプランを立ててやっていたんじゃないか、と。


実はそう思いあたるようなことを、彼はデビュー前の取材時の段階でも言っていたものだったのだが……。

ま、そのあたりのことはまたいつか対面取材が叶ったときにでも改めて本人に訊いてみて検証するとして。
では、今回の武道館がどうよかったのかってところを書いていくとしましょうね。


まず、今回はバンドをちゃんと大きなハコで映えるものに“作っていた”ということ。
基本編成はギター、ベース、ドラム、キーボード×2で、そこに3人のホーン隊。

で、いつものように女性ダンサー4人。プラス、今回は男性ダンサーも。
ここで特筆すべきは、ホーン隊ね。
とにかく今回、このホーン隊がサウンドを華やぎのあるものにするための要になっていたのだ。

もう、このホーン3人が大活躍!
で、アレンジもそのホーン・セクションが活きるよう、盤のオリジナルのものとも、前回のライヴのものとも、大きく変えられていたのだった。
っていうところにまず僕は感心。


で、そのようにホーン隊が活きるアレンジにした理由ってところにも結びつくと思うのだけど、今回Ne-Yoがヒントにしていたのであろうショーのあり方は、以下の3つだった(と僕は考えている)。

まず、60年代や70年代のソウル・レビューのような華やかなステージング。
それと、彼が大好きなマイケルやプリンスら80年代以降のエンターテイナーのパフォーマンスのあり方(動きは完全にマイケル、エロ系演出はプリンスね)。
プラス、これまた彼の大好きなサミー・デイヴィスJr的な……ジャズで踊る感覚というか、まあそういうものがミックスされた、ザッツ・エンターテインメント!なショー。

だからアレンジもそこに着地させる方向性のものだったと思うのだ。


象徴的だったのが、たとえば「DO YOU」で、この曲なんか原曲とも前回のライヴのときともまるっきりアレンジ変えて、今回はブラジリアンなテイストを加味しつつムード歌謡みたいにしちゃったりしてたもんね。

つまりR&Bである必要も、最早なく。

より大衆的なアプローチっていうのかな。


まあ、そうしたアレンジを含め、総じて“オレはエンターテイナーなのだ”という自負と矜持に満ちたステージングであったわけです。


ただ、そんな中で僕が面白いなぁ、これがNe-Yoならではのよさなんだなぁと思ったのは、彼ってその見せ方で「圧倒する」タイプのエンターテイナーじゃないんですよね。
例えばプリンスやマイケルが、絶対に手が届かなくて、ミステリアスで、普段は何考えてんのかよくわからなくて…言わばステージ上の住人であるぐらいに思えてしまうようなカリスマ性の強いエンターテイナーであるのに対し、Ne-Yoはすごく親しみやすくて、なんなら手が届きそうで、何考えてんのかわからないようなとこが全然なくて、要するにそんなに遠くにいるわけではない気のいいあんちゃんっぽくて、その上でみんなを楽しませている…ってか一緒に楽しもうとしている、そういう感じが一貫してあるわけで。


例えばこの日も途中でいくつか日本語で煽ったりもしていたのだが、何度も言ってたのが「さわごー、さわごー」っていうそれで。
「さわげー」っていうヒップホップ的な命令口調じゃなく、「さわごー」なわけですよ。そこ、「らしいなぁ」と。
それとか、途中で「たらしい」とかなんとかよくわからない日本語を発して、前のほうのお客さんから「たのしい」だよと発音を正され、それで「あ、そうだ」と言うように照れた顔してもう一度言い直してた場面とかね。
いい意味でつっこみどころがあるというか、決してパーフェクトじゃない、その可愛さが魅力になってるわけです。
だってマイケルやプリンスが観客に言葉を正されて言い直す……なんてことはありえないからね。


で、そういう場面が彼のショーの場合は必ずいい方に働いて、一段と盛り上がる。楽しいものになっていくっていう。

そこで僕が思ったのは、Ne-Yoってのは「人間力」が大きくものを言ってるエンターテイナーなんだよなということなのです。


終盤、サプライズ的にメンバーの誕生日をみんなでお祝いする場面なんかもあったけど、ああいうところにもまさに彼の温かな人間味が出ていたし。
あの人間性、あの性格があってこそ、あのエンターテインメントが成立しているんだなぁっていう。
それって、従来のエンターテイナーのあり方、成り立ちとはやっぱり違っていて、そこがユニークだよなぁ。こういうのが2000年代型のエンターテイナーのあり方なのかもなぁと。

まあそんなことを今回僕は考えてみたりしたのでした。



あと、今回のショーは新作『イヤー・オブ・ザ・ジェントルマン』からの曲を中心にして組み立てられていたわけだけど(=思ってたよりも前2作からの曲は少なかった)、この3rdアルバム、今までの2枚以上にライヴで映える曲が多いなということを改めて感じたりも。
オープニングのいきなりの「ビコーズ・オブ・ユー」に続いて、「ノーバディ」「シングル」「マッド」とアルバム通りの順で3曲続けたあたりとか、終盤で「ミス・インディペンデント」(←この曲のイントロなんかホント「キターっ!!」って気分になるもん)から「クローサー」へと続いたあたりとか、かなり気持ちが昂ったものだったしね。


「マッド」のような王道バラードの歌いあげっぷりも、ずいぶんさまになってましたな。
それと、確かこの前のアメリカン・ミュージック・アウォードでのパフォーマンスもそうだったけど、「クローサー」の前にOO7のテーマがイントロ的に用いられるあのアイディアもグッドね。
ああやって聴くと、この曲が007のテーマだったらよかったのにとも思えるもんね。


最後、アンコールのあとの終わり方がやや唐突だったこと(あそこでもう一回「ビコーズ・オブ・ユー」をやったら盛り上がっただろうに…とは思いました)と、あと、女性ダンサーにはもうちょい若いコを起用すればいいのにと思ったことを除けば、ほぼ文句のつけようがなかった今回のライヴ。

繰り返すけど、ショーに対して遂に本気になったNe-Yoくんを感じられ、僕は大満足でありました。


因みにNe-Yo、武道館のショーのあとは渋谷のVUENOSに行って楽しんでたんですってね。
タフなあんちゃんやのぉ。


イヤー・オブ・ザ・ジェントルマン/Ne-Yo(ニーヨ)



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