前の記事の続きです。
11月17日(月)
日本武道館で、ザ・フー。
4年前のロック・オデッセイでの初来日も観たが、今回は単独公演なので、あのときとは期待感がまったく違う(それにあのときはトリでエアロが控えていたし)。
しかも昨日書いた通り、僕は映画『ザ・フー:アメイジング・ジャーニー』を9月末に観たことで、“あんなふうに紆余曲折ありながらもここまで生き延びてきたピートとロジャーがここに現れるのだ”という感慨も抱いていたのだ。
お客さんの年齢層はやはり40代以上が多く、7割以上が男性だったと思う。
まあそうだろなとか思いつつ、Tシャツとパンフを買ってから会場入り。
(昔からの習慣で、気持ちの入ってる洋楽アーティストのライヴは、僕は当たり前のようにパンフも買うのだ)
席は……2階の西側のだいぶ上のほう。
なので、流れてたデヴィッド・ボウイの「ジーン・ジニー」がフェイドアウトして客電が落ち、さあいよいよだという感じでグッと気持ちがあがったものの、聴こえてきた音はやはりずいぶん小さかったのでガクっときてしまった。
ほかの人のブログとか見てたら「轟音」とか書いてる方もいらっしゃって、いいなぁ、アリーナとか1階正面の前のほうとかはきっとそうだったんだろうなぁ、と歯ぎしり。
アリーナで観れた人たちはきっとライヴハウスぐらいの感覚が味わえてるんじゃないかというのは見降ろしててわかったが、武道館とはいえさすがに2階の上のほうとなると音がちっちゃくてツライ…(涙)
とはいえ、1曲目は「アイ・キャント・エクスプレイン」ですからね。
そりゃあ「キターっ」という思いにはなりますよ。
なので、頭の中でステレオのヴォリューム・スイッチをイメージして、それを右にグッとまわしてみた。
無理やりイメージで「でかい音が聴こえてる」ってことにしたのだ。
そっからはもう……。
ロジャーはマイクをグルングルンぶんまわしている。
コードがカラダに巻きついたりしないのか、マイクがピートに当たったりしないのかと心配にならんでもないが、マイクぶんまわし歴数十年なのでそういうことはない。
ピートはといえば腕をグルングルンまわしている。
こちらも腕回し歴数十年で、それは芸のひとつなので、最初にぶんまわした時の「でたー!」といった拍手と歓声たるや凄いもんだった。
どうしたって目はこのふたりばかりを追ってしまうが、バンド全体がほとんどオリジナルのザ・フーの音になっていたのが素晴らしかった。
オリジナル・メンバーふたりとサポート・メンバーたち……ではなくて、これでひとつのバンドだったということだ。
ザ・フーそのものであることが感じられたのだ。
いやぁ、ザック・スターキーは上手いねぇ。
実は僕、彼がICEってバンドで日本デビューした1990年にインタビューしてるんですが、あの子がこんなにしっかりしたドラマーに成長するとは思いもしなかったな。
メンバー紹介したとき、彼への拍手はとても大きくて、彼はフーのファンに愛されてるんだなぁとも思ったし。
ピノ・パラディーノのベースもよかった。
見せ場らしい見せ場は「マイ・ジェネレーション」のあの部分(映画でスティングが、ベーシストなら真っ先に弾きたくなるフレーズだと言っていたあれ)だけで、もっと前に出てきてもいいのにとも思ったけど、とにかく彼とザックによるリズム隊の素晴らしさがザ・フーのダイナミズムを今に蘇らせているんだなと感じた。
やってくれた曲の中では、たぶん多くの人がそうだろうけど、やっぱり「ババ・オライリー」にジーンときた。
アンコールでやった「シー・ミー・フィール・ミー」でもちょっと泣きそうになった。
けっこう始めの方でやった「フー・アー・ユー」は、僕がリアルタイムで買ったザ・フーの最初のレコードだったので、試験勉強とかしてたあの頃の自分を少し思い出した。
少し時間にあきがあったあといきなり「マイ・ジェネレーション」のイントロが鳴ったときには興奮して「ウワャオッ!!」とヘンな声をあげてしまった。
昨日も書いたけどロックは衝動なんだと思った。
何千回演奏された曲なのか知らないが、この曲の持つ衝動は色褪せない。
スクリーンに映された映像も非常に凝ったもので、曲の暴れっぷりを煽るものだった。
2階の上のほうだったので、そんなにちゃんと見えたわけじゃないが、DVDとかでちゃんと見たらそのクオリティに唸ることになるはずだ。
最後、ロック・オデッセイのときはピートはギターを叩き壊したが、今回は壊さなかった。
ロジャーとふたりで何度もサンキューとかラッキーとかニコやかに言って、肩組んで、それはあの映画のようで……。
ファンに感謝しているのと同時に、なんというか自分たちの人生、自分たちが生きてこうしてステージに立っていることにも感謝しているようで、僕は力いっぱい拍手しながらジーンときてた。
ということで、そういえば途中からもう音が小さいのも気にならなくなっていたし。
んんん、ほんっと、いいライヴだったにゃー。
ダメになりそうになったら、とりあえずここに立ち戻ろう…。
