昨日の記事の最後に書いたとおり、もっとたくさんの人に聴いてもらえるように、そしてもう何度も聴いているという方もより深く楽しめるように、アルバム『Superfly』の解説文をここに公開します。
これはメディア向けのプレスリリース原稿として以前書かせていただいたものなんですが、全曲についての彼女自身の言葉も含め、せっかくならSuperflyを好きなみなさんにも読んでいただきたいと思いまして。
ライナーノーツ代わりに読んでいただければ幸いです。
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- 「ハロー・ハロー」でデビューしてから1年と1ヶ月。
- 誰もが待ちに待ったSuperflyの1stアルバムが遂に世にでる。
- まさしく満を持しての発表であるわけだが、4thシングル「愛をこめて花束を」が広く人々の胸に沁み渡り、続く「Hi-Five」が華やいだ気分を誘発している今、結果として絶好のリリース・タイミングになったと言えるだろう。
これまでシングルを発表するごとに異なる方向性を見せてきたSuperflyだったが、それがひとつに統合され、“これこそがSuperfly!”と言えるアルバムになっている。
Superflyの世界観のなんたるものかを明確に示したアルバムになっている。
しかも、一時チャートを賑わして消費されるものではなく、やすやすと風化しないであろう耐久力が備わっている。
この曲のためにこの曲がある……といった具合に全13曲が意味を持って繋がり合い、この流れ(曲順)で聴いてこそ得られるカタルシスと感動がある。ドラマ性がある。
ゆえに、曲単位でのダウンロードが全盛の時代にあって、これはパッケージとして持っていたくなる。
目先のヒットのことしか考えていない泡沫ポップの量産傾向に対しても、これはひとつのカウンターになるんじゃないか。
そんなふうにも思えるものであり、まさにこれが“新しいスタンダード”なのだと言いたくなる盤だ。
では、志帆の言葉を紹介しつつ、1曲ずつ追っていこう。
1. Hi-Five
現在、au「LISMO」CMソングとして大量オンエアされている5thシングル。
「アルバムの1曲目は、やっぱりアッパーなロックでいきたいと思ってたんです。しかも、歌始まりっていうのがいいんじゃないかと」
2. マニフェスト
2ndシングルであり、ライヴでもっとも盛り上がりを見せる1曲。
「Hi-Five」からこの曲へと続く最初の流れで、まずはSuperflyのベーシックがどこにあるかを表明してみせている。
「Superflyは一言で言うならロック・アーティストである……っていうところを、最初にしっかり伝えたかったんです」
3. 1969
愛媛時代からあたためてきた曲であり、ライヴでもずっと歌われてきた曲。
歌詞はそもそものSuperflyの始まりを歌った、テーマ曲のようなところもある。
「歌い方は、マリア・マルダーの、裏声のところでフッと抜くクセを参考にしました」
4. 愛をこめて花束を
Superflyの存在を広く世に知らしめることとなった4thシングルであり、ひとりになってリ・スタートした、その最初の曲。
「これは4曲目か5曲目だなって決めてました」と志帆は言うが、それは70年代あたりのロックの名盤においても、最も重要な曲が配置されるポジションであり、この曲を大事に思う気持ちがそこにも表れている。
恐らく彼女はこの曲をずっと歌い続けていくことだろう。
5. Ain’t No Crybaby
キース・リチャーズ直系のギター・リフは、多保孝一によるもの。
間奏のドライヴしていく感覚もまさにストーンズ的で、血が躍る。
歌詞はひとりになったときの不安と、それを乗り越えるモードになった上での覚悟や決意感が直截に反映されたもの。
「なんか私、ヘンに気まじめで考えすぎるところがあるんですけど、でも肩の力を抜く大事さをあるときに気づいて、それからパッと開けたんです」と話す彼女に、“ゴールまで戦うわ”ってところがいいよねと言うと、「もうね、行きますよー、私は!」と力強く答えてケラケラ笑うのだった。
6. Oh My Precious Time
これまでのSuperflyにはなかったタイプの、ロマンティックで切なさもある夏ポップ。
「上京してすぐの頃に多保くんとセッションしながら作った曲で、夏の終わりの切ない感じを出したかったんです。初恋にも似た、あの甘酸っぺえ(笑)感じですね」
ビーチ・ボーイズっぽいとよく言われるが、「私はバーズっぽい感じをちょっと浮かべてましたね」とのこと。
蔦谷好位置のキラキラしたアレンジはジェフ・リンっぽくもある。
7. バンクーバー
「この曲はもう、雰囲気に酔えますね。“i spy i spy”とかもそうですけど、このムードの中に入り込んでしまう」
そう志帆が話すこの曲のメロディは、デビュー前に多保が作っていたもの。
詞は、「プロの方が書いた歌詞を歌いたいと思って」尾上文氏に依頼した。
フルートが異国の夜の独特の雰囲気を表していて印象的。蔦谷氏のアイディアで、ハービー・マンのフルートを参考にしたそうだ。
8. i spy i spy
日本でも高い人気を誇っていたオーストラリアのバンド=JETとのコラボレーションで完成した3rdシングル曲。
「あのレコーディングは本当にいろんな発見があって、自分でも知らなかった私を彼らに引き出してもらえた。それからなんです。もっと自分を表現したいという気持ちが前よりずっと強くなったのは」と以前にも話していた通り、まさに表現者・志帆の覚醒の曲。
異色曲のため収録場所は悩んだそうだが、「バンクーバー」からの流れもよく、アルバムの中でいいアクセントになっている。
9. 嘘とロマンス
ストーンズ流のイントロからビーチ・ボーイズ的展開になだれ込むこの曲は、「60年代のダンス・パーティふうのイメージで作りました」。
もっとも陽性なダンス・ロックで、歌詞も言葉遊びを入れながら楽しんで書いたそうだ。
「ずっとアルバムの曲の歌詞を書いていたらいっぱいいっぱいになってきて、現実逃避したくなってバーっと書いたのがこれなんです(笑) メッセージ性の強い曲が多いので、こういうトリップした曲があってもいいかなと」
10. 愛と感謝
Japan FM League主催の“Power of Music”キャンペーン・ソングとして登場し、のちに「愛をこめて花束を」のカップリングに収められた曲。
ライヴでの人気が高く、観客たちによる合唱が自然に起こるほど。
「この曲でSuperflyを知ったという人もたくさんいるんです。ライヴでみんなが歌ってくれるのは、本当に嬉しいですね」
11. ハロー・ハロー
記念すべきデビュー曲であり、歌詞の一節になぞるなら、まさにここから全てが始まった。
「こうやってアルバムの中に入ると、改めて“強い曲やな”って思います。ライヴでもイントロだけでパッと明るくさせる要素を持っている。流れを変えられる曲なんですよね」
12. Last Love Song
志帆がひとりで作詞・作曲・編曲を手掛けたこれは、キャロル・キング的な手触りを持ったピアノ弾き語り曲。
一発録りによるここには飾りなど何もなく、だからこそ彼女の思いと願いが聴く者の胸にリアルに響き、揺さぶられる。
「岐路に立ったとき、どっちの道に行けばいいのか答えが欲しくなる。けど、答えなんてどっからも降ってくることなんかなくて。だからもう、流れに任せて信じるしかないというか。答えはあとからついてくるやろって、そのとき思ったんです。そう思わせてくれたのは、ひとりのツアーを待っててくれたお客さんたちだった。お客さんの後押しでできた曲ですね」
“シンガー・ソングライター=越智志帆”の覚醒の曲という意味で、重要曲のひとつだ。
13. I Remember
なぜ私はここに生き、なぜ歌うことを始めたのか。そしてなぜ今、私は歌うのか。その問いかけが歌になった最重要曲。
「人と話すのが苦手」で、「何人かといても自分だけ遠くにいる気がしてた」学生時代。
「誰にも認められなかった」けれど、「好きな歌をうたうことでなんとかバランスをとっていた」かつての志帆は、やがてその歌に対して拍手をもらうようになり、歌によって人と繋がれる手応えを持つと同時に、自分の夢を発見する……。
「あの頃が自分にとっての原点であり、それを忘れたら私はダメになると思ったんです。ただ強いだけじゃ何も生まれない。弱い部分を知ってるから少しは強くいられる。私は特にそうで。うん。だからあの原点を絶対に忘れちゃダメだなって思って、この詞を書いたんです」
ジャニス・ジョプリンをモデルにした映画『ローズ』でベット・ミドラーが泣きながら歌うシーンを想起させもする感動的な曲である。
デビューからの1年間(いや、歌うことの意味を探し始めた10代から数えれば、この数年間とも言えるが)の、志帆の様々な思い、ドラマ、経験、考え方の変化などが反映された、この1stアルバム『Superfly』。
「24歳の等身大の私」だと言うこの作品には、彼女の“これまで”と“ここから”が、ある。
“再会”を歌った歌詞がやけに多いのは、過去の自分と未来にどんな顔で再会できるのか、それを考えている彼女がここにいるからでもあるのだろう。
が、僕には見える。
未来の志帆が昔の志帆と再会し、笑顔で迎えている姿が…。
