先月のライヴ日記がまだまだ途中なのだが、昨日観たKUMAMIのライヴに激しく胸を揺さぶられたので、その思いが生々しく残っているうちに先に書いておく。



6月7日(土)


南青山MANDALAで、KUMAMI。


当ブログでも何度か書かせていただいているが、KUMAMIは今年2月に「雨の翼」(同名映画のサウンドトラック・シングル)でEMIよりメジャー・デビューした福岡出身のシンガー・ソングライター。
詳しくはこちらを。

http://www.kumami.info/


KUMAMI Tour2008 but…Life goes on。
イベント出演などは積極的にしていたが、ワンマン・ライヴとしては約1年ぶり。
メジャー・デビュー後、初となるワンマン・ライヴだ。
チケットはSOLD OUT。地方から観に来た人も大勢いたと聞く。


濃密な、とても濃密な時間だった。
終わってしばらく声を発することができなくなり、少しの間、僕はそのまま椅子に座っていた。
多分、知り合いと感想を言い合うことで自分の心に渦巻いたいろんな思いをヘンに具体化させたくなかったのだろう、僕は。
いい映画を観終えて、心にズシンと響いたときなどは、すぐに誰かと喋るよりもひとりでその余韻を噛みしめながらしばらく浸っていたいと思うじゃないですか?  その感じと同じだ。
(そういえば、お客さんたちも、「よかったねー」と友人と軽く声をかけ合いながら帰る感じではなく、それぞれが何かをじっくりと噛みしめながら出口へ向かっているように僕には見えた)


まったくもってKUMAMIは表現というものに真摯で、ひたむきな、まさしく“表現者”という言葉の相応しいミュージシャンだ。

繊細さを持ちつつも、それをタフな表現に転化させる。
ユルさやヌルさのカケラもない。
全身全霊でピアノを弾いて歌う彼の思いと音楽そのものがダイレクトに胸に刺さり、心の中に広がっていった。

大きく。宇宙のように。
きっとそれは、そこにいたひとりひとりの胸にも。


久し振りに来た南青山MANDALA。
ステージを半円状に囲むような形にもなるここは、ライヴハウスというより芝居小屋っぽくもあり、アーティストとの近さを感じられることもあって好きなヴェニューのひとつだ。


彼も僕も大好きなカーディガンズの曲が流れる中、開演時間を15分ほど過ぎて会場が暗くなると、いくつかの観客席のテーブル前に数台設置されていたモニターにイメージ映像が流れ、イマジネイティヴなインストゥルメンタルがかかる。
デヴィッド・シルヴィアンあたりの表現法を想起させるそのアプローチがいい導入となり、その間にグランドピアノの前に座ったKUMAMIの演奏が始まる。


因みにこのモニターには、ライヴ中のほとんどの時間、KUMAMIが鍵盤を弾くその手先が映されていたのだが、ときどきで曲によってちょっとした映像処理が施されていた。

例えばポップめな曲ではキラキラ輝く粒子がその鍵盤から弾けるように飛び散っていたり、(確か)「涙雨~透花のテーマ」の始まるあたりでは雨粒が落ちて水面が揺れるような映像がピアノに重なったりと、非常に効果的な処理がなされていた。

KUMAMI自身のアイディアなんだろうか。

そうじゃないにしても、彼の表現をとても理解しているクリエイターの映像表現であることがわかる。
なぜなら、まさしくKUMAMIのピアノの音は、そのようにキラキラと輝いて飛び散る音の粒子のようだったり、水たまりにポトンと雨粒が落ちてそこから静かな波を何層もたてながら広がっていく水面波のようだったりするものだから。


「悲しい時、楽しい時」で始まったこの日のライヴは、まず構成が練られ、今までの彼のライヴとは異なる編成が組まれていた。
頭から数曲はKUMAMIのピアノ弾き語り。

(確か)5曲目でギタリストがステージに加わり、その後、ベーシストとパーカッショニストも加わってのバンド編成で数曲。

後半はまたバンドの3人が去り、再びピアノの弾き語り。

と、そのようにひとつのライヴの起承転結を感じさせる構成・編成だ。


因みにバンドの3人は恐らくみなKUMAMIと年齢も近いのであろう20代前半と思しき男のコたち。
普通に考えればこうしたバンド編成はオーソドックスなものであるはずなのだが、例えば去年観た彼のワンマン・ライヴが女性の弦楽器隊をフィーチャーしてのものだったこともあり、なんだか逆に新鮮だった。


そのバンド編成による中盤の数曲の中で、とりわけバンド効果といったものが出ていたのは、「POOL」。
ライヴにおいては特にグルーヴがものを言う曲であり、そのグルーヴがより強靭なものになれば将来的にもっとパワフルな曲になるはずだ。


この日は新曲も2曲披露された。
弾き語りによる「Song Letter」という曲と、バンドで演奏された「カラーセラピスト」という曲。


「Song Letter」は、彼らしくじっくり歌われるスローで、心の底に響く曲。
歌詞は比喩的にせず、あえて直截的な言葉を選んでいるようで、だからその思いの強さは10代の若いコから大人にまでそのまま伝わり響くはず。
この歌は紛れもなく彼が“その人”個人を思って書いているわけだが、その相手は聴く人それぞれにとっての誰かにそのまま置き換えられるもので、つまり普遍的。
この歌を聴いて「救われる」人は世の中にたくさんいるはずだ。
例えば、逃げたくなったり、死にたくなったりしても、自分にとってそういう相手がいることがわかるだけで踏みとどまれる。

この歌はそのことを確認させてくれるものであり、だから生きる難しさを感じている世の中の多くの人にこの歌が届けばいいのにと僕は思った。
(そういう意味でシングルにしてほしい曲。あるいは何かそうした生きることについて考えるドラマなり映画なり討論番組なりのタイアップがついてほしい曲だ)


一方、「カラーセラピスト」は彼のこれまでの作品の中でも、もっともポップでラジオフレンドリーとも言えそうな軽快な曲。
こういう新曲ができてくるあたり、彼の意識は内側だけでなくどんどん外にも開かれているようで、うん、いい感じいい感じ。


そう、彼の曲は音楽的にとても構成の豊かな練られた曲が多いのだが、その一方、ポップであるということの意識もちゃんと働いていて、だからどんな年代にも伝わりやすく響くものである。
深層を表現するにしても決して難解なやり方に逃げることはなく、基本はポップ・アート~ポップ・ミュージックだという芯がぶれない。
そこは個人的にとても共感できるところでもある。


アンコールでは、カヴァーが1曲歌われた。
ライチャス・ブラザーズの超有名曲「アンチェインド・メロディ」。
意外な選曲と唸った方も多いんじゃないか。
僕も最初は、「へぇ~っ」と思って聴き始めたのだが…。
僕も子供の頃から親しんでいた曲だったが、KUMAMIが心をこめて歌うそれを聴いていたら、改めて歌詞の強さにたまらなくグッときてしまった。
祈りにも似た思いが綴られたこの歌詞…。
タイトルからしてアンチェインド…つまり鎖を解き放つメロディであるわけで、どうしてこの曲を取り上げたのか、今度ちゃんと訊いてみたいところだが、なんとなくわかったような気もした。


不覚にもこのライヴ中、僕は3度、涙が滲みそうになった。
「涙雨~透花のテーマ」。
映画『雨の翼』の劇伴として書かれたこのインストゥルメンタルは傑作であり、ここでまずグッときて、そのまま「雨の翼」に気持ちがズンと入り込んだ。
それからアンコールの「明日もし」の、まさに♪明日もし~ と歌われる優しいメロディ部分。
そして、「アンチェインド・メロディ」の祈りにも似た歌で高まったところ、最後に歌われた「キンモクセイ」。
彼自身もとても気に入っているというこの曲「キンモクセイ」は、本当にいい曲だ。
“いい曲”なんて陳腐な言い方しかできなくて申し訳ないが、いつも聴くたびに「ああ、いい曲だぁー」と心底思う。
因みに「キンモクセイ」も「涙雨~透花のテーマ」も、アルバムには未収録で、シングル「雨の翼」に収められているだけなので、アルバム買った人もこのシングルはちゃんと買っておくべき! と書いておく。


雨の翼/KUMAMI


この日のライヴ、何しろ全身全霊で歌って演奏していることがビンビン伝わってきたことに加え、歌い手としての表現力がグンと高まっていたことに感心した。
1年前の渋谷・7th floorとかとはまったく違う声そのものの出し方であり、レベルが何段も上がっている。
さすが、負けん気の強い博多っこ。
成長著しいなぁー。


まだ多少は荒削りなところも残ってるし、もちろんこれがパーフェクトなものではないだろう(そもそもパーフェクトなライヴとは何かという定義もわからないけど)。
でも、例えばこの日のライヴがそのまま武道館で行なわれていても何の遜色もないというか、たとえそこが武道館であってもひとりひとりにこうして1曲1曲が届いている、その図が僕にはイメージできた。

(武道館でやるのが偉いとか、そういう話ではないですよ、念のため)


「内本さん、それは大袈裟ですよ」と言われるかもしれないけど…。
大袈裟じゃなく今回のライヴ、僕にとって生涯忘れないであろうものになった。



因みに、ライヴが終わって流れてきたBGMは、シェリル・クロウ。
終わってチラっと楽屋で会うと、「始まりがカーディガンズで終わりがシェリル・クロウ。内本さん仕様ってことで」と笑うKUMAMIくん。
ナハハハ。また今度ゆっくりカーディガンズやシェリルの話をたくさんしようね~!



but...Life goes on/KUMAMI


映像喚起力の強い美しいメロディと、妥協を許さず選び抜いた言葉の合わさりが素晴らしい1stアルバムです。

先入観なく、ひとりでも多くの人に聴いてもらいたいと素直に思うなぁ。







KUMAMIについての過去の記事はこちら。


http://ameblo.jp/junjunpa/entry-10026666931.html


http://ameblo.jp/junjunpa/entry-10040738542.html


http://ameblo.jp/junjunpa/entry-10058008187.html


http://ameblo.jp/junjunpa/entry-10068246165.html