5月11日(日)
渋谷・DUO MUSIC EXCHANGEで、泉谷しげる。
前の記事の続きです。
2000年代に入ってからだったか、泉谷しげるは音楽活動よりも俳優活動のほうにかなり重きをおくようになった。
スタジオ・レコーディングによるオリジナル・アルバムは2000年発表の『IRA』が最後。
ライヴもほとんどやらなくなった。
俳優としての泉谷の活動は近年、確かに充実していたし安定もしていた。
が、このまま音楽活動がフェイドアウトしていくのは、それはやはり寂しいことに僕には思えた。
2006年に渋谷のDUOで行なわれた本当に久々のフル・ライヴは、そんな泉谷のライヴ歌手としての復活を意味するものだったかもしれない。
もちろん胸弾ませて行きましたよ。
ただこのときは正直に書くと、声のパワーにだいぶ衰えを感じたのも確かで、ブランクの大きさを思ってしまったりもしたものだった。
それから1年。
2007年5月にもまた泉谷は同じ渋谷のDUOでライヴを行なった。
35周年ということで、35周年記念ボックス『黒いカバン』もリリースされ、それに因んで35曲制覇するという無謀なライヴ。
始まった途端、「やるんじゃなかった」「頼むから帰ってくれ」「帰ってくれたら終われるんだから」と弱気発言を連発した泉谷だったが、中盤あたりからどんどん声のパワーもあがってきた上、元来の歌の色気も出てきて、結局はアンコール含め、予定より1曲多い全36曲を歌いきったのだった。
確か約4時間!
相当久々に「FRONT」とか「ELEVATOR」など80年代のニューウェイヴ期の曲も歌ったりしたこのライヴ。
最後のほうで「翼なき野郎ども」が歌われたときには、僕も感極まってどうかなりそうになりつつ一緒に叫んで歌ってましたよ、「あ~~~っ、い~らつ~くぜぇ~~っ」ってね。
これ、泉谷のライヴの超定番曲であり、今まで何十回と聴いてきた曲だったのに。
しょっちゅうライヴを観てたときにはニュートラルにいつもの曲として受け止めていたものだったのに(例えばRCのライヴで「雨上がりの夜空に」を聴くときの感覚と一緒)。
なのに、去年のDUOにおいては自分でも驚くほど胸に刺さったんだよな。
なんだろう、やっぱ3時間とか4時間の長丁場を戦い抜いた状態で歌われるこの曲は、何か説得力が違うというか。うん。ホント、改めてこの曲の持つ圧倒的な力を思い知ったものでした。
さて。
あれからまた1年が経って、今回が3年目の渋谷DUO公演。
去年に引き続いて前半では「帰ってくれ」発言もして苦笑させた泉谷だったが、それも最早芸のうちというか、そう言いつつも去年より余裕があったように僕には思えた。
そう、結論から書くと、一昨年、昨年とやってきた中で、今回の泉谷のコンディションはもっともよかったようだった。
声もハリがあったし、一昨年や昨年に比べると全体の流れもコントロールできていたように見えた。
まあ、(あえてマイクにひろわれるように)ぜえぜえ言ったり、あれこれ文句や愚痴を言いながら進めていくのは相変わらずだったが、そうしつつも、去年の36曲ライヴで自信をつけたこともあってか、どこか余裕があるようだったのだ。
この日のためにここのところ飯もそんなに食べてない、カラダが軽いほうが声がでるから、といったようなことを途中で言ってたが、そのあたりからも本気度が窺えた。
歌手としての泉谷がいよいよ戻ってきたという感を受けた。
そうそう、当日会場で配られた「泉谷新聞」には、見出しでバーンと、“泉谷しげる 再デビュー”とあり、“七年ぶりのアルバムがポニーキャニオンよりリリース決定!”の文字が。
そうなのだ、つまり泉谷は今「再デビュー」の思いなのだ。
60にして!!
またその文を読むと、こうある。
「昨年5月13日に行われた渋谷DUOライヴで、編成したバンドが素晴らしく、オレの本気度に“火”がついたと、泉谷は語る」
つまり、7年ぶりのアルバムを作り始めたり、こうしてまた本気でライヴをやるようになったのは、「バンドとしても」充実してきたからであり、それによって“音楽的なところでの快感やカタルシス”をまた泉谷は思いだしてしまったということなのだろう。
その現在のバンドのメンバーは、ギターが藤沼伸一、ベースが人時、ドラムが大島治彦、キーボードが中西康晴。
ルーザーほど爆音じゃなく、よってロックだけでなくフォーク・シンガーとしての泉谷の持ち味を発揮させる余白部分も持ったバンドである。
ステージ上ではいつも「合わせろコノヤロー」といった暴言の多い泉谷が、この日は「でも本当に素晴らしいミュージシャンたちで、大好きなんです」といったような、とても素直で謙虚な言葉をポロッと言っていたのがなんだか印象的だった。
ライヴは弾き語りによる新曲「すべて時代のせいにして」で始まった。
バンドが入り、2曲目も新曲。こっちは去年のライヴでも披露されたが、そのときはグタグタだったものの、今回はバッチリ。
そして3曲目で、おおっ、『都会のランナー』から「揺らぐ街」! これは過去あんまりライヴで歌われてなかった曲だったので、興奮したねー。盤だと「そんな話、どこかー遠くのことなんだろー」というコーラス部分はプロデューサーの加藤和彦氏の甘い声だったことを思い出したりも。
次がまた新曲の「No.2」という、語り部分の多いユーモラスな曲。
で、5曲目は、これまた嬉しい「ハーレム・バレンタインデイ」。
以下、6曲目「野良犬」、7曲目「街角」、8曲目「里帰り」、9曲目「黒いカバン」、10曲目「おー脳」と定番曲多めでどんどん続く。「里帰り」がよかったなー。
11曲目でまた新曲が披露されて、これは「やさしさの素描」という題。
12曲目はレゲエ・アレンジに生まれ変わった「君の便りは南風」。
13曲目が「陽が沈む頃に」、14曲目が「寒い国から来た手紙」、15曲目が「春のからっ風」、16曲目が「春夏秋冬」。
このへんの感じはフォーク・シンガー泉谷しげるの真骨頂というか、前回の記事で書いた通り僕が初めて泉谷作品を聴いてはまりまくったのが『ライヴ!!泉谷~王様たちの夜~』だったので、やはりグッときまくる。特に「寒い国から来た手紙」は素晴らしすぎるな…。「春のからっ風」は若くて暗い頃に自分の曲のように聴いてたものです。
で、17曲目が大名曲「裸の街」。今回はまたこれにしびれたぁー。
泉谷も今回のこの曲のできには満足がいったようで、「ここで終われば最高なんだがなー」とか言ってたな。
そしてこっから怒涛のロック・モードに。
「Dのロック」「褐色のセールスマン」「火の鳥」「眠れない夜」「国旗はためく下に」と熱狂度の高まる曲をぶっ続けでやって、23曲目で「翼なき野郎ども」を歌って、本編終了。
たまらんー。
アンコールでもまた1曲、新曲を披露。
そして、最後が「野生のバラッド」。
ここでひとつ僕の個人的意見を書かせてもらうと、毎回最後の「野生のバラッド」ではバンド・メンバーと観客全員にジャンプを強要する場面になるのだが、これ、僕的にはちょっと飽きたかなー。もういいんじゃないかなー、やんなくても。だって、そこまでであがったせっかくの音楽的テンションが、これをやることで落ちるから。盛り上がるというよりは、かえってムードがゆるくなるんだよね。
と、僕は思うんだけど。でも泉谷、このコーナー、気に入っちゃってるみたいだからなぁ……。うーむ。
ま、それはともかく、このようないい選曲・いい構成で、余裕も感じさせながら、いよいよ本気モードを見せつけてくれた泉谷。
これで2時間半以上だが、しかし、これでも全25曲。
だが10月4日のZepp東京はオールナイトで全60曲なのだ!
倍プラス10曲なのだ!
開演が22時で、終演予定は朝の5時。
この無謀さこそが、ザッツ泉谷。
だから好き。
こっちも体力つけて臨まねば!
まずは7年ぶりの新作、楽しみに待っとりますです。
あと、どこかの雑誌またはウェブサイトの編集さん、泉谷さんのインタビューを載せる気持ちがおありでしたら、僕にお声をかけてください~。ぜひに。
泉谷しげる10枚組BOXセット「黒いカパン」(DVD付)/泉谷しげる
去年出た旧作10枚のリマスター盤。
まだまだ再発されてない盤がたくさんあるので、これを機会に単体でのリマスター盤再発を望みます。
『イーストからの熱い風』などライヴ盤もね。
こちら、泉谷のウェブサイト。
http://www.wagasha.co.jp/
昨日、部屋を片づけてたら、たまたま見つかった昔のいろんなライヴのチケット。
これは泉谷の文芸坐でのオールナイト・ライヴのもので、上は(昭和)56年12月26日、下は59年1月14日のものだった。
わが人生でもっとも感動したライヴの記録である…。