昨日は久々に日曜日らしい日曜日。
ヨメ・カーでピュイッとお台場まで出掛けて、『相棒-劇場版-』を観る。
かの坂本龍一氏も先頃ラジオで「観たいから日本まで行こうかな」と話していたが、もう観たかなぁ?


『相棒-劇場版-』。
僕はテレビ・シリーズをほんの数回しか観たことのない相棒・初級者なんだが、それでも全然楽しめました。
スピーディーで飽きる場面のまったくない、よく出来た娯楽大作。
こんなんわざわざ映画化せんでも…といったテレビドラマの安易な延長版が多い中、これはなるほど映画的魅力の備わった作品であったなと思う。
題材しかりキャラ設定しかり規模しかりトーンしかり。


ところで。
この『相棒-劇場版-』は、水谷豊にとって『逃がれの街』(83年)以来、実に25年ぶりとなる主演映画なのだとか。
『逃がれの街』(監督は工藤栄一)も当時、僕はちゃんと新宿でロードショーで観た。
島田紳助が『傷だらけの天使』の亨的な立場で「アニキ~」と水谷豊を慕う役をやってもいたこの映画、あれ以来観返していないが、水谷豊が公園の「噴水」に入るシーンがあり、そのあたりからも『傷天』のオマージュ的な匂いを嗅ぎとったりした記憶がある。


『逃がれの街』。
タイトルからも察せられる通り、水谷豊演じる主人公がちょっとした運命の歯車の狂いから殺人を犯してしまい、やくざと警察の両方から追われるといった話だ。

主人公は結局警察に狙撃され、哀れな死を遂げる。


それより何年も前、僕は多感な中3だったか高1だったかに名画座で観て衝撃を受けたのが『青春の殺人者』。
1976年のキネマ旬報ベスト10の1位に選ばれ、水谷豊は主演男優賞を受賞してもいるこの映画で、主役の青年=順(僕の名前と同じ字だったこともあって尚更思いが入ったものだった)は父親を殺して逃げていた。


それからこれは映画じゃないが、松田優作と中村雅俊のふたりがはみ出し刑事のコンビだった元祖“相棒”設定のドラマ『俺たちの勲章』。
その15話「孤独な殺し屋」は、水谷豊演じるナイーヴだが冷徹な殺し屋が、殺しを指示していた「おやじさん」に結局は裏切られ、最後はボート上で松田優作と対決するものの、あえて撃たれて死を選ぶ…という哀しい話だった。


松田優作主演の『探偵物語』に水谷豊がゲスト出演した回の「夜汽車で来たあいつ」でも、水谷豊は追われて逃げていた。


そして有名な『傷だらけの天使』。

直接誰かから逃げていたというわけではないものの、水谷豊演じる亨は言うなれば世の中からはみ出して逃げ続け、最後は風邪で死んでしまう。


『熱中時代』などはほとんど見ていなかったこともあり、だから僕にとっての水谷豊は、(前にもこのブログで書いたが)まず“孤独な殺人者”というイメージで強く刷り込まれていたりする。
根が繊細なばかりにちょっとしたボタンの掛け違いで殺人を犯すなどしてしまい、世の中からはみだし、逃げ続け、多くの場合は結局哀しい死を遂げる。
そういう役をもっともリアルに演じられる役者として水谷豊が好きだったのだ。


そうやって若い頃にひたすら世の中から逃げ続けていた(という演技をしていた)水谷豊は、今、「逃げる」側から、杉下右京として(犯人を)徹底的に「追う」側へと転じている。
ただ、あの頃のどこかシャイで俗世間からはみだしてしまうところは未だ持ち続けているようで、“正義”という概念や生命に対する価値観含め、「順」や「亨」はこんなふうに成長して大人になったんだなぁと、昨日観た『相棒』、そんな捉え方もできなくはなかったのだった。
(因みに昔の水谷豊なら、映画の中で柏原崇が演じていたあの役がもっともはまっただろう)




いくつかの余談として。


25年ぶりの主演映画『相棒-劇場版-』と、22年ぶりのニュー・アルバム『TIME CAPSULE』、その両方のプロモーションもあって、このところいろんなテレビ番組に出ている水谷豊。
僕も気づいたものはなるべく録画して見ていて、「うたばん」や「みなさんのおかげでした」などではテレビの前でグハハハハと大爆笑していると、ヨメからの「そんなに面白い?」という視線が。
思うに、ほかの人だったらこんなには僕も笑わないだろうが、きっと昔からの水谷豊に思い入れがあるからなんともいえずに楽しくも嬉しい気持ちになって、それで笑ってしまうんだろうな。


『SONGS』では、あの頃、歌っていることに何かしっくりこなくて、それで歌の世界から離れたというようなことを水谷豊は話していた。
また、『相棒-劇場版-』を特集したキネマ旬報5月号には、映画から離れたのは「しばらく映画には向かえないと感じてました。その理由のひとつは当時の映画界に対する想いだったかもしれません」とその当時のことを振り返ったインタビューが載っていた。
一度離れてはみたものの、すぐにまた気が変わって戻る人もいる。が、水谷豊は歌からも映画からも20年以上も離れ、そしてまた今の気持ちで楽しんでやるようになった。
そういうところにも、僕はいろいろ感じ入ってしまうものがある。


だから『TIME CAPSULE』という22年ぶりのアルバムがすごく売れているというのは、なんか、よかったよなぁと思う。
因みに歌手としての水谷豊作品の中では、77年のデビュー作を当時愛聴したものだった。
デビュー曲の「はーばーらいと」(作詞:松本隆、作曲:井上陽水)が大好きでした。


キネ旬の水谷豊のインタビューはなかなか興味深い発言がいろいろあったんだが、中でも「おおっ」と思ったのが、『相棒』シリーズで小野田官房室長役をやっている岸部一徳についてのこんな言葉。
インタビューは金澤誠氏(無断抜粋、お許しくださいませ)。
「一徳さんは、『傷だらけの天使』のファンだと言ってくれました。あの作品で最終回、僕が演じた亨の死体が夢の島に捨てられるでしょう。その時にかかる『一人』という歌が僕はとても好きだと、『相棒』シーズン4の打ち上げの時、一徳さんに言ったことがあるんですよ。そうしたら、“あの歌の詞は、僕が書きました”と言われて(笑)。そういうことでも一徳さんとは、不思議な縁を感じますね」
この「一人(I STAND ALONE)」という曲は、井上尭之さんが76年に発表した『Water Mind』という名盤に入っていた傑作で、あの曲が重なる夢の島でのシーンはまさに“傷天”の中でも多くの人の記憶に残った名シーンだったわけだが、そうか、歌詞は岸部一徳が書いてたんだなー。
因みにメロディも歌詞も、元ネタはアル・クーパーの「I stand alone 」ですね。
それに僕が気づいたのは、ずいぶんあとになってからだったんだけど。


その尭之さんを(「太陽にほえろ」の)音楽で起用することを番組プロデューサーに勧めたのも、亨の役を水谷豊がいいと勧めたのも、ベルボトムで長髪が流行ってる時代に革ジャンでリーゼントという亨のファッションを決めたのも、実はショーケンだったと、「ショーケン」本を読んだら書いてあって、それにも「おおっ、そうだったのかぁ」と唸らされたものだった。
というわけで……。
水谷豊さん、今度はぜひショーケンの復活を演出してください、な~んて希望を書いてこの文を終えておく。



(ありゃ、軽く昨日観た映画の感想書くつもりが、長くなっちゃって、自分でビックリ)




TIME CAPSULE(初回限定盤)(DVD付)/水谷豊


↑売れまくってるそうですね。

うん、確かに聴きたくなる。コンサートはやらないんでしょうか?





↑こちらは、「一人」が入ってる井上尭之さんの名盤『WATER MIND』。

確か最近、CDで再発されたはず。

「ちんちん電車」って曲も好きだったなー。