3月18日(火)
丸の内・コットンクラブで、ベン・シドラン&ジョージィ・フェイム(2ndショー)。
いんやー、最高だったなー、素晴らしかったなー、このショーは。
チャージ+ドリンク代で1万円近くという決して安くない料金を払ってるわけだけど、むしろこの料金でこの人たちのこんなに素晴らしいプレイをこんな間近で観られるなんて贅沢なことだわぁと思えちゃった。
行ってよかったぁ。
ショーの話の前に。
実は僕、ベン・シドランには1度だけインタビューしたことがある。
彼がGO JAZZレーベルを立ち上げて、日本ではポリスターから続々と作品がリリースされ始めた頃。
確か90年代の初頭とかですね。
僕はまだanyという情報誌の編集者で、場所は渋谷のホテルだったな。
15年以上前のことなので、そのときどんな話を訊いたかは、ほとんど覚えてない。
ただ、温厚な人だった記憶が漠然とあるけど。
あと、その直後には同じany誌の取材で、ジョージィ・フェイムにも会っている。
そのときのライターは、今はF誌で編集をしているYザワくん。
僕は編集として立ち会った。
正直に言うと、その当時、僕は勉強不足でまだこの人たちの偉大さをそんなに認識しきれていなかった。
だから、そんなに高ぶってそれらの取材に臨んだという記憶はない。
ってか、ジョージィ・フェイムの旧作など、真剣に聴きだしたのは、その取材時よりもっとあとだったのだ。
こんな偉大なミュージシャン(たち)に、わりと軽い気持ちでインタビューしていたことを考えると、なんとも若気の至りというか、ありがたみもわからずアホだったなぁと、今にして思う。
今、ジョージィ・フェイムにインタビューするなんてことになったら、きっと心臓バクバクだろう。
さて。
今回のショー、タイトルはこう付けられていた。
ベン・シドラン&ジョージィ・フェイム“トゥギャザー・アゲイン”。
それで、こんなツーショット写真があるだけで、グッときちゃいませんか? きちゃうでしょう、そりゃ。
というわけで。
まずは、ベン・シドランとベーシストとドラマーとサックス・プレイヤーがステージに登場。
ドラマーはベンの息子のリオ・シドラン。
ベンは、ステージ向かって左側のピアノの前に座る。
そしてステージの真ん中で、もっともフィーチャーされた形で立っているのがサックス・プレイヤー。
ああ、この、いかにも人のよさそうな顔! と、僕はベンの口からメンバー紹介される前にすぐわかった。
GO JAZZでもアルバムを出していたボビー・マラックだ!
ベンの容姿は、僕が会った90年代初頭からそんなに変わってなくて、若々しい。
ピアノのプレイはもう、クールの一言。
歌声もいい。
ベンの歌は決して強く響くものではないし、上手いというのとも違うのだけど、ちょい頼りないぐらいのその感じの中になんともいえない味があって僕はかなり好きだ。
そして確か3曲目ぐらいだったかで、いよいよその人がステージに呼びこまれた。
ジョージィ・フェイム。
会場は一気に沸いた。
それは、ベンの登場時とはまた温度の違う沸き方だった。
スター、登場。
多くの人はやはりジョージィを観に来ていたようで、「よっ、待ってました!」というムードに。
そして、それに応えられる華のようなものが確かにこの人にはある。
どちらがいいとか悪いとかという話では全然ないのだが、何しろそのあたりが、プロデューサー気質のベンとの違いであることがふたりを観ていてハッキリわかった。
パッと見では、ジョージィの方が爺ちゃん顔になったと思う。白髪だし。
けど。
粋なんだなぁ、かっこいいんだなぁ。
そして何より、ヒップって言葉が合うんだなぁ。
そのハモンドの音。
それに、その声!
ぜーんぜん老いてなかった。
で、ベンの反対側…つまりステージ向かって右側のハモンドの前に座り、確か1~2曲やったあとだったか。
あの曲のイントロをジョージィが弾き出した瞬間、僕の中で何かが弾け、なんですかねぇ、ここは60年代のロンドンのクラブなのだという錯覚に陥り……。
だって「イエー・イエー」ですよ!
しかも、ほぼオリジナルのままの。
歌っちゃうさ、僕だって。
そこからはもうけっこう夢の時間って感じで、あんまり細かく覚えてないんですが。
ベンのピアノとジョージィのハモンドの重なり、それにふたりの歌の重なりは、とにかくステキなヴァイヴがあって。
また、ボビー・マラックのサックスも実にこう、“歌って”いて。
ジョージィはたくさん喋り(ゆっくりめの喋りだったので、僕でもけっこう聞きとれた)、よく笑い、それに応じてボビー・マラックもニコニコ笑い……。
リラックスしつつも、演奏が始まるとピリッとしまって、さすがだなぁ、息が合うっていうのはこういうことなんだなぁと思いましたね。
チェット・ベイカー、セロニアス・モンク、ヴァン・モリソン……。
そういうミュージシャンの名前が何度も呼ばれ、そういう人たちの曲に歌やシンギング・トーキングが乗り、まあ、カッコイイったらありゃしない。
ジョージィ自身、本当に楽しそうで嬉しそうで、ハンドマイクで歌いもすれば、ダンスもきめちゃう。
あのダンス、よかったなぁ。
ヒョイヒョイヒョイって足と手を出したり引っ込めたりして、ホント、なんてヒップな爺ちゃんなんでしょう。
こんなふうに歳がとれたら本当にステキだなって思っちゃった。
ってな感じで、目はどうしてもジョージィを追ってしまったりしてたんだけど。
でも、ベンもよかったのよ。
特にあの最後のほうにやった、モンクの曲にのっけてシンギング・トーキングしたあれとか。
クーーーール!!!
で、当然鳴りやまない拍手の中、アンコールはベンがひとりで出てきて弾き語り。
伊達男、夜をしめる。
ああ、これのライヴ盤、出ないかなぁ。
ってか、こんな文を書いてる今夜もまた、彼らはあの場所でキメてるんだな。
もう一回行きゃあよかったな……。
若き日のジョージィ。若き日のベン。
軽妙な感覚は未だ少しも失われず…。


