11月27日(火)
ニューヨークのBOWERY HOTELで、シェリル・クロウにインタビュー。
ちょっと遡るけど、これについては書いとこう。
L.A.にスパイスのライヴを観に行ったその前の週、ニューヨークで久しぶりにシェリルに会ってきた。
前作『ワイルドフラワー』のときは、僕は取材する機会がなかったので、シェリルに会ったのは『カモン・カモン』の完成時以来、実に約6年ぶり。
って書いてて自分がビックリするな。あれからもう6年も経ったなんて。
早っ。
因みに初めて彼女に取材したのは、1st『チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ』が出たばかりの頃(まだ「オール・アイ・ウォナ・ドゥ」がヒットしてブレイクするずっと前)に、東京で。
2度目が3rd『グローブ・セッションズ』が完成したときに、NYで。
3度目が4th『カモン・カモン』の時に、L.A.で。
今回が4度目となる。
いつも彼女の取材の印象は、とてもいい。
なんというか、人としてとても真っ当で、バランスのとれた大人の女性なので、気持ちよく会話ができるのだ。
別にヘンにクールなわけではなく、音楽そのものの話で楽しく盛り上がったりもする。
たとえばよく覚えているのが、3rdの音をNYで初めて聴き、「ネイバーフッド」について「ホーンがストーンズっぽいよね」と僕が指摘すると、「よくわかったわねぇ」といった感じで、「この曲はボビー・キーズが吹いてくれたのよぉ」と、はしゃぐように喜んでいたこと。
前にどれかのライナーにも書いたが、彼女と僕は1コ違いの同世代ということもあり(シェリルが1コお姉さんです)、通ってきた音楽がけっこうカブッてて、話がなんか合うのだ。
逆に、面白いもので、『カモン・カモン』の時にご一緒した女性ライターさんも、『グローブ・セッションズ』の時にご一緒した別の女性ライターさんも、インタビューしたシェリルに対し、わりとあっさりしてて、物足りない印象を持ったというようなことを言っていた。
思うにシェリル・クロウという女性は、たとえば何がしかの心の闇とかトラウマを抱えていて、それをどうにかするために音楽をやっているというような芸術家肌タイプではないので、心の奥底の部分を探って引き出そうとしても面白い答えが返ってこないのだろう。
自分の心の中のことを話すよりも、単純に好きな音楽やサウンドの話をしているほうが楽しいという、根っからの音楽好きなのだ。
なんというかあんまりオンナオンナしてないっていうか、情念系だったり不思議ちゃんだったりするようなアーティストとは真反対の、とてもちゃんとした女性なのだ。
そんな人なので、シェリルのインタビューは僕はまったく緊張もしないし、いつも非常に楽しんでできる。
とはいえ……。
それでもさすがに今回ばかりは、最初、ちょっとかまえちゃったな。
なにしろ、この2~3年、シェリルは本当にたいへんだったから。
ファンの方ならご存知の通り、この2~3年の間に、シェリルの身にはいろんなことがおこった。
元ツールド・フランス・チャンピオン、ランス・アームストロングとの、直前での婚約解消。
そして、乳癌の発覚。
当然このあたりのことが(1月リリース予定の)新作の曲にもなんらかの形で反映されているわけで、だからそのことについてまったく触れずにインタビューをすることなどできないわけだが、どのようにそのへんの話に触れていいのか、僕は困ってしまっていたのだ。
アーティストの不幸話や苦労話を好んで聞きたがるインタビュアーもいるが、僕はなるべくそういう話よりも音楽そのものの話をしていたいほうだし、シェリルも性格柄、あまりそういう話をつっこんで聞かれたくないタイプだと知っていたので……けど、新作に関してはそれをまったく聞かないままでは話を前に進めることができなくもあったので、さあ、どうやって聞けばいいのかとヘンに気を遣ってしまったわけなのだ。
でもね。
インタビューを始めて、やっぱりシェリルはいい人だなぁ、大人だなぁと僕は思いましたよ。
シリアスな表情して、どう聞いたらいいかと遠回りしている僕を察して、彼女、笑いながらこんなふうに言ってくれたのだ。
「そんなに気を遣わなくても私なら大丈夫だから、普通に訊いてくれていいのよ(笑) なんていうか、もうすっかり健康なんだから」
とはいえ、やっぱりその二つの件に関しては、具体的にはほとんど触れずに、少しだけ言葉をもらう程度に僕はしておきましたけどね。
きっとイギリスあたりの雑誌やテレビとかだったら、グイグイこのあたりの話をつっこんで訊いていくんだろうけど。
わしゃ、そういうことはできんのだ。やりたくもないのだ。
さて、インタビュー(新作用の正式なインタビューは、僕のやらせていただいたこれが世界で最初だそうな)の内容は、これからいくつかの雑誌やウェブやライナーノーツなどで書いていくので、ここでは書けないが。
とりあえず、新作のタイトルは『ディトアーズ』といって、プロデューサーは1stアルバムで組んだ以来となるビル・ボットレル(!!)
ひとつだけ書いておくと、1stアルバムが好きだった人なら、今回の新作は絶対好きになるアルバムだろう、と。
ハデさはないですよ、むしろある意味、地味っちゃ地味かもしれないけど。
1stを聴いた瞬間にやられた僕としては、もう、好きにならないわけがないっていう。
もうね、相当やられちゃってます。
相当、感動させられちゃってます。
リリースは1月末(予定)。
とりわけ初期のシェリル好きの方は、楽しみにしててください!
そうそう、新作にはシェリルが養子にした赤ちゃん=ワイアット君に捧げた「ララバイ・フォー・ワイアット」という胸にしみるバラードが収録されているのだけど。
インタビューが終わるやいなや隣の部屋でおとなしくしていたワイアット君の面倒をみにいくシェリル。
抱っこしながらインタビューを終えて部屋を出る僕を見送ってくれたのだけど、ワイアット君、ムチャクチャ可愛かったですよ。
チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ/シェリル・クロウ
この1stアルバムが好きな人なら、新作もきっと気に入るはず。
ここで、セットアップ・シングルの「シャイン・オーヴァー・バビロン」と、1stシングルの「ラヴ・イズ・フリー」が45秒視聴できますよ!
http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/sheryl/
「シャイン・オーヴァー・バビロン」のPVは、こちらにアップされてます。