7月1日(日)


東京国際フォーラム ホールAで、平原綾香。


最新作『そら』を携えての長いツアー、そのファイナル公演。


最初に書いておくと、音楽的な冒険が多く、とりわけ彼女の作曲した曲にユニークな才が感じられた意欲作『4つのL』に比べ、新作の『そら』は僕には守りのアルバムに感じられ、だからあまり好意的に捉えていない。
「Jupiter」や「明日」を気に入ってくれた人たちに……という思いで初心に帰って作ったというようなことを彼女は話していたが、まだ初心に帰る必要などないし、『4つのL』のときの創作欲をそのままもっと膨らませて攻めていってほしいと思っていたのだ。


今回はそのような正調バラード曲多めのアルバム『そら』を中心にしたライヴということで、ややもすれば退屈な内容になるんじゃないかという危惧が正直あった。

で、実際はどうだったかというと。


まず、開演時のちょっとした演出や、曲ごとに色合いと表情を変える空を映しだすスクリーンなど、コンセプトを明確にした上での仕掛けは、よかったと思う。
どうやら、それ、彼女自身のアイディアによるものだそうで、そういうところにも自らの意見を反映させるアーティストへと成長している様は頼もしい。


が、歌としては、その『そら』からの曲が多く続いた前半から中盤にかけて、やはり一本調子な感をぬぐえず。
途中、シャニースの「I Love Your Smile」をカヴァーして歌うなど、若干の変化を持たせて抑揚をつけようとはしていたが、基本的には似たタイプのバラードが並び、歌唱にもなかなか変化がつかない。
また、魅力的に響く低い声に比べ、やはり高音域の部分になるとところどころやや不安定にもなる。


そういうときに、親しみやすくて、ややオトボケなMCは、いい転換になっていたように思う。
また、大学でしっかり学んでいたサックスを、ついにライヴで初披露なんていう場面も。
以前訊いたとき、まだライヴでサックスを吹く段階ではないというようなことを話していたことがあったが、今年の春に大学を卒業し、今、そういう段階にきたのだという思いがあったのだろう。
なんか、そこ、おおっと思った。


終盤は、歌にも落ち着きがあった。
「Jupiter」から「明日」の流れには、やはり多くの観客も姿勢を正して聴き入っていた。
だが、この日、もっとも多くの人たちの心を震わせたのは、「明日」の次、本編の最後に歌われた「シチリアーナ」(最新作のハイライト的な曲)だっただろう。
その歌唱は実に素晴らしく、僕はグッと引き込まれた。


全体的にはまだ粗さも残るが、その「シチリアーナ」のときのように完全に曲に入り込んで歌っているときの彼女には、やはり並はずれたものがある。
極端に言うなら、この1曲だけで、観にきてよかった、まだまだこれからも追っていこうという気持ちになれたのだった。





下は今回のツアーの主となった最新作『そら』。
ライヴでもっとも強く響いたドラマチックな1曲「シチリアーナ」は、これに収録。

こちらは、彼女の全アルバム中、一番できがいいと僕が思っている前作『4つのL』。
あまり語られることはないが、彼女の作曲センスの高さが、このアルバムの数曲に表れている。