11月22日(水)
恵比寿ガーデンルームで、中孝介。
メジャー・デビューから8ヶ月目にして行なわれた、初の東京・ワンマン・ライヴ。
これがもう、本当に素晴らしかった。
心の底から感動してしまった。
「感動」というバカ素直な言葉を使うことにも照れをおぼえなくなるほどに、だ。
なんというか、中孝介という歌手の、器のでかさを感じてしまったな。
まずは堂々たる歌唱表現力。
今、日本の若手でこんなにうまい歌手はいないんじゃないか。
こんなに(広義な意味で)ソウルを感じさせる歌手はいないんじゃないか。
大袈裟じゃなく、心に響く歌をうたえる若手男性歌手・ナンバー1なんじゃないか。
少なくとも歌唱力に絶対的な定評のあるあの人とか、あのグループの誰々とかよりも、中くんの歌唱表現力は間違いなく上を行っている。
それ、ナマに接すれば、一聴瞭然である。
歌唱に関して、これはまさしく天の与えた才能だなと、そう思っちゃうほど。
因みに、それをダイレクトに伝える会場として、恵比寿ガーデンルームは音響・照明設備ともに最適だったとも僕は感じた。
また、これまでの東京でのライヴはピアノと中くんの二人だけという形だったが、今回はそこにパーカッションとギターも加えてのバンド編成。ヴォーカルをそっと引き立てる、それらの音の鳴り方も、非常によかった。
波の音から「ホノホシの風」に流れるオープニング。続く「白と黒の間に」。そして3曲目の「真昼の花火」。
“魂の3連曲”といった始まりだが、とりわけ僕は「真昼の花火」に震えた。
この曲の終盤、一瞬の演奏ブレイクがあり、そこからのさらなる展開の際に中くんの首にかけていたストールがふわっと彼の腕とともに高くあがったのだが、その場面が静止画のように焼きついている。
鳥肌がたった。
6曲目の「moontail」には、動きがあった。
アレンジもモダンで、この曲はライヴの中で、ひとつのいいアクセントになる。
だからこそ次の「街」がまた、沁みた。
この日は初披露曲も4曲あったのだが、後半で披露された「星空の下」と「Goin'on」(どちらも仮題)は、今まで彼が歌ってきていないアップめのテンポだった。
手拍子をしながら、“のれる”曲。
“じっくり聴く”だけでなく、“みんなで一緒に”という場面を作るのに、こうした曲は必要だ。
アンジェラ・アキにおける「MUSIC」のようなものといえば、わかりやすいか。
中孝介の歌といえば、大抵の人がまずスローでじっくり聴かせるものをイメージするだろう。
そうした曲ばかりが1時間半以上続くライヴだったとしたら、果たしてどうなのか、と。
正直、僕は最初、少しばかりそんな危惧の念を抱いていた。
が、杞憂だった。
基本がスローであることには間違いないが、ブルージーな曲を入れたり、後半ではアップめの曲を入れたりと、持ち味を殺さぬまま、きちんとアクセントがつけられ、だからダレる時間などまったくなかった。
なかなかに多様な行き方でライヴを展開させていたのだ。
「喋りがヘタで」と本人は言うのだが、そう言いながらもこの日のMCはけっこうな笑いをとっていた。
自分の言葉でなんとか伝えようとするところに、人柄の誠実さが表れていた。
それに、案外、面白い(笑)
いい味出てるよ、中くん。
終盤、彼はピアノの弾き語りも披露した。
おっ。ピアノ、うまいんじゃん。
なんだか、今まで知らなかった彼のいろんな面、いろんな才能が、この日どんどんオープンになっていく。
カッコイイよ、中くん。
器、でかいじゃないか。
それに、あれだ。
まだ出してない武器だって、ある。
彼はまだ三味線を自分の(島唄じゃないほうの)ライヴでは用いることをしていないのだから。
アンコールでは「なつかしゃ」と「それぞれに」を歌った。
そして最後の最後。
彼は感謝の言葉を述べてから、「それぞれに」の一節をアカペラでもう一度歌った。
「いつの日か微笑んでまた会えるそのときまで~」
感極まって、彼はここで泣いた。
僕ももうダメだった。
もらい泣き。
客電がついて回りを見ると、涙をぬぐっているお客さんが大勢いた。
ああ、本当に、本当にいいライヴだったよ、中くん!!
↓ この日のダイジェスト映像が配信されてました。
http://atarik.exblog.jp/4645809/
(EPIC)
