11月13日(月)
南青山・ブルーノート東京で、サム・ムーア。
パンクなヴァイオリニスト、ナイジェル・ケネディの公演が直前でとび、急遽決まったのが、なんとサム・ムーア公演!
普段のブルーノートは二部入れ替え制だが、本公演は1日1ショーだ。
サム・ムーアの日本でのライヴといえば、僕なんかの世代が思い出すのは、なんといってもあれですよ。
1982年の横浜スタジアム。
ブレイクしたてで最も勢いのあった頃のRCサクセション、それにチャック・ベリーとサム・ムーアという3組出演による、あのイベント。
そこからのほんの一部分をつまんで編集したライヴ盤『The Day of R&B』は、比較的最近になってやっとCD化されたようだけど。
あのイベントで思い出されるのは、チャック・ベリーさんが、演奏中であるにも関わらず、バンドメンバー(確かキーボードだったか)のプレイに苛立って、その場でステージから降ろしちゃったこと。初めて観たベリーさんの印象は、その時ちょっと悪くなっちゃった。
RCはもちろん、いつもの通りにバチバチオーライだった。
そして、やはり初めて観たムーアさんのライヴにも心を動かされた……という覚えがある。
ムーアさんのライヴを観るのは、それ以来だから、実に24年ぶり!
今やムーアさん、71歳だそうな。
しかし、先頃リリースされた新作(30数年ぶりだそうな)『オーバーナイト・センセーショナル』での歌いっぷりも素晴らしく、今回のライヴはもう本当に楽しみだった。
さて。
曲目や構成やバンドについてなどの詳しいことは、もうだいぶ日にちが経っちゃったことだし、観に行かれた多くの方が各ブログでとっても熱く書いているので、それを読んでいただきたく思うのだが。
ざっくりと、僕が思ったことも少しだけ。
まず、バンドに続いて、遂に主役のムーアさんが登場した時のこと。
楽屋のほうからゆっくり歩いてきたムーアさんに、「この時を待っていた!」といった感じの熱烈なファンの人たち(もちろん年配の方、多し)が握手を求めて手を出すと、ムーアさんはとても丁寧にひとりひとりの手をギュッと握って、感謝の言葉を述べていた。
ささっと済ませるのではなく、丁寧に、手が差し出されればひとつも無視せず。
そこに、この人のライヴというものへの向き合い方を感じたりもした。
歌えば、そこに喜びが溢れ出ていた。
だから、観客は心の底から拍手をする。
そうすると、ムーアさんはまた本当に嬉しそうな笑顔を見せて歌う。
もっともシンプルなこの循環こそがライヴってものなんだよなと改めて思った。
声はもう、70過ぎてたってな~んの問題もなく、嬉しくなるほどに出ていた。
張りもあったし、色気もあった。
これが真のソウル歌手の“うた”ってもんだよなと、そう思わせる深みも説得力もあった。
が、重くなりすぎたり渋くなりすぎたりするのじゃなく、ある意味の軽やかさのようなものもあって、そこもステキだなと思った。
「Rainy Night In Geogia」では、マイクを通さずとも響いてくる声通りのよさに圧倒されたりもした。
新作収録の歌い慣れてない曲では、目を細めて歌詞を一生懸命読むという真面目な場面も。
なんかそれ、微笑ましくもあった。
後半、オーティスの「I Can't Turn You Loose」で、これぞソウル・ショーってなコテコテの盛り上げ方をしたあと、じっくりと歌い上げた「When Something's Wrong With My Baby」。
これには鳥肌がたち、涙腺がゆるんだ。
この緩急のつけ方。さすがベテランのエンターテイナー。
グッと引き込まれずにはいられなかった。
さらにラストの「You Are So Beautiful」。
深く深く歌が沁みて、カラダが内側から熱くなった。
と、そんなこんなを含め、心底感動してしまったソウル・ショー。
僕は観ながら、こんなことも考えていた。
「ああ、清志郎が元気だったら、きっと24年前の恩返しでここに来て、一緒に歌ったりもしただろうになぁ……」。
その翌々日から僕はノラ・ジョーンズの取材のためにL.A.に飛んだのだが、翌週帰国して、Blue1981さんのブログ(「Blueの雑記帳」。左のブックマークからどーぞ)を見てビックリ!
なんとムーアさんの最終日の公演に、清志郎が出てきて「I Thank You」をデュエットしたという。
じ~ん。うぐっ。
オフコースの歌じゃないが、この感じ。「ことばに~できない~」。
また胸が熱くなってしまったのだった。
<地味変>の<忌野日報>に、その時の写真が掲載されてました。
http://www.kiyoshiro.co.jp/topics/topics/36.html
間違いなく、来年のグラミー候補でしょ。
