「RCサクセションがぁ~、聴こえるぅ~。RCサクセションがぁ~、ながれているぅ~」


ぶあついホーンの音をバックに、清志郎がそう歌っている。


胸が熱くなる。

清志郎が「RCサクセション」という言葉を歌うなんて。

RCをやめてから、会話の中でもその言葉を口にすることはめったになかったのに。

それを“歌う”なんて。


これは「激しい雨」という曲で、今、僕は、清志郎のオフィシャル・サイトで試聴したところ。

この曲、10/4に発売される清志郎のニュー・アルバム(!)、『夢助』からのリード曲なのだ。


そう、喉頭癌の治療のため入院中だった清志郎が、既にナッシュビルでレコーディングしていたこのアルバムを、なんと病床で完成させたのだ!

このニュースを今朝知って僕はちょっと泣きそうになったのだが、今、先の曲のフレーズを聴いたら、またグッときてしまった。

このアルバム、プロデューサーに迎えられているのはスティーヴ・クロッパーで、全編ナッシュビル・レコーディング。

そして細野さんやチャボが作家陣に加わっているのだそうな。おおおっ!!

チャボやコーちゃんと一緒にやるはずだったフジロックでも、きっとこのへんの曲が歌われるはずだったんじゃないだろうか。


アルバムの曲タイトルを見てみると、「オーティスが教えてくれた」なんていう曲もあって、もうそれだけで引き込まれる。

「ビートルズが教えてくれた」と歌ったのは吉田拓郎だったが、やっぱり清志郎はオーティスなのだろう。

それを、スティーヴ・クロッパーを迎えてのメンフィス・サウンドでやられちゃあ、もう、グッとくるなというほうが無理というものだ。

因みに僕が初めてオーティスを聴いたのは、清志郎とキー坊(上田正樹)の影響だった。


「夢を忘れずに!」と、清志郎は、癌告白の一文の最後に書いていた。

そして、今作のタイトルは『夢助』。

“夢”。恐らくそれがテーマのようなものなのかもしれない。


清志郎が「夢」という言葉を意識的に使うようになったのは、ラフィータフィーの2枚目のアルバムだったと記憶している。

それ以前に、夢についてを、清志郎はそんなに意識的に歌ったりしていなかった。

その言葉が、そのアルバムで初めてずいぶんと直截的に使われた時、僕は正直、違和感をおぼえた。

そういうことを、それまでの清志郎は、そんなに直截的に歌にしたりはしなかったからだ。

「夢を忘れずに」みたいなことを言葉にして言うようになったのも、その頃が最初だったと思う。

そのラフィータフィーのアルバムが出た時、僕は清志郎に初めてインタビューすることが出来たのだが(実を言うと、こんなにも影響を受け、こんなにも長い間好きなアーティストであり続けるのだが、インタビューをしたのはこの1回のみだ)、そういうことを言ったり歌ったりする清志郎には何らかの心の変化があったのだなと、そう思ったので、僕は訊いてみた。

「以前はそういうことを直截的に歌ったり言ったりしなかったのに、なぜ?」と。


その時に、どういう答えを清志郎がしたのかは、実はもう忘れてしまっている。

ただ、そのインタビュー・テープをおこしたノートはとってある。

今度、引っ張り出して読んでみよう。






『夢助』

(ユニバーサル)


本当に楽しみな新作!