昨日の続きです。


まず、さらにしつこく前ふりを。

あれから20数年経って、去年の話。

2005年は、あの頃、僕が夢中になって聴いていたバンドの貴重な音がたくさんCD化(またはDVD化)された年だった。

えっ、こんなの出ちゃうの? こんなの、残ってたの? というようなものが、だ。

ジョニー、ルイス&チャーが79年に日比谷野音でやった「フリー・スピリット」の完全版とか、RCサクセションの80年の久保講堂ライヴ(←これ、行きました!)の完全版『ラプソディー ネイキッド』とか、プラスチックスの79年のライヴをまとめたDVDとか、PASSレーベルの一連の作品のリイシューとか。それに、リザードの前身である紅蜥蜴の復刻シングルも!

中でも驚愕ものだったのが、フリクションの『軋轢』レコーディングより前のライヴ音源の発掘盤と、リザードの『東京ROCKERS’79 LIVE(完全版)』。

どちらも資料的価値の高さはもちろん、今聴いても興奮しないではいられない信じられないくらいの熱量で、やっぱこんなの聴いちゃうと、最近の日本の若いバンドものがどれも生温く聴こえちゃうのはしょうがないよな……と。そう思ったものだったのだ。

というわけで、去年の僕は、今のR&Bとかシンガー・ソングライターものもいろいろ聴きながら、一方で80年前後の日本のパンク~ロックの音をかなり聴き返していたわけで。

そんな僕にとって、この日のロフトのライヴは、気持ちが昂ぶらずにはいられないものであったのだ。


はい、こっからようやく本論。9日のロフトのライヴのレポートです。


1番手はオート・モッド。

なんかもう、とんでもない見かけ。

ジュネも自分たちのことを「化け物」と呼んでいたが、まあ確かにそういう方向性。

昔もそうだったが、今に至ってもアクの強さは変わらず……というか、よりいっそうのものになっている。

包帯グルグル巻きの男が縄で繋がれ、舞台下でもカラダをくねらせ……。

今も精力的にゴス・イベントをやったりしてるようだが、その、「続ける」ことの姿勢含め、どこまでもアンダーグラウンドであり続けよう、異端であり続けようと腹を括ってる感じには頭がさがる。

が。音楽性としては、今の彼らのあり方は、わかりやすく、ゴス。そのスタイルの中に収まってやってる感じ。

ヘビメタなんかもそうだけど、音楽に関しては様式美みたいなものに拒否反応を起こす僕としては、これは正直、きつかった。古臭く感じられてならなかった。


2番手は恒松正敏グループ。

恒松さんがやってたE.D.P.S.も去年、80年代前半のライヴの発掘音源がCD化されたりして僕も即買いしたが、ただ、オート・モッド、リザートとは、やや、派が違うというか、聴き手の層も違っているはず。

この日も恒松さんだけを目当てに来ている感じの人がけっこういたように思う(大体、カッコでわかるんだよね)。

3組の中ではダントツで“今の音楽”。今、この3組の歴史を知らない若いロック好きが初めて聴いたとしたら、古臭さを少しも感じないのは、恒松さんの音だけだろう。

ギターのソリッドさという意味では、やはりあの頃のナイフのような切れ味とは種類のことなるものだが、その分、厚みがあって、時にブルージーですらある。

ザ・バンドの「アイ・シャル・ビー・リリースト」をブルースっぽくやったりも。


そして、遂に……。

遂に、モモヨの登場だ。


声はちゃんと出るのだろうか。

それより、そもそも、どんな風貌になっているのか。

どっかで読んだが、今は(確か)コンピュータ系の会社で働いているはずで、恐らくこのように公のライヴの場に出るのは久しぶりなはずだが……。

僕はドキドキしていた。


「トカゲの祝祭にようこそ」

そんな一言で幕があがると、そこにモモヨがいた。

ヘンにおっさんくさくなってたり禿げてたり太ってたりしてないかと不安だったのだが、そんなことはなかった。

頬はこけ、髪もそれなりに長めで、まあ強引に喩えるならイギー・ポップっぽい雰囲気と言えなくもない。

つまり、危ないロックの雰囲気をちゃんと漂わせている。

バックは今のオート・モッドのメンバーたちで、リザードのメンバーはモモヨ以外、いない。

モモヨ&リザードと表記されていたが、モモヨが歌えば、バックは即ちリザードになるということなのだろう。

もともとのリザードの音よりも厚く、ちょっとだけ違和感があるが、まあ、そのくらいはいい。

1曲目は「セレブレーション」。

この時点では、まだモモヨの歌は心許なかった。

音の厚さに対し、声が小さい。やはり緊張もあるのだろうか。

だが、曲が進むにつれ、徐々によくなっていった。

音程はフラフラだが、それはある程度意識的なものだとわかったし、リザードの後期もこんな感じで歌っていたし。

2曲目は「ガイアナ」(!)。

このあたりで僕はもう興奮して頭をガンガンふるようになっていたので記憶が定かじゃないのだが、そのあとは確か「マーケティング・リサーチ」をやって、そして「サカナ」をやって、もう1曲くらいなんかあったかな……で、「王国」をやって、それであっさり引っ込んでしまった。

全部で5~6曲だが、代表曲ばっか。文句があろうはずがない。

モモヨは今に至っても十分妖しく、ある種のカリスマ性もある。

これだけ代表曲を歌えるというのも、年をとって、いろんなことがふっきれた証だろう。

演奏が終わり、SEが流れ、ああこれで終わりかと思っていると……唐突にモモヨとメンバーがステージに戻ってきた。おしっ。

そして一言。「30年振りのパンクをやります」。

で、始まったのは、おおおおおっ、紅蜥蜴の時代の「ロック・クリティック」!!!

♪オレをガキだと思って~、甘く見るんじゃね~ぜ~

ロック評論家に対する辛辣な言い分をそのままパンクにしたこの曲で、もう僕の血は踊り狂い、その時僕は10代のパンク小僧に戻っていたのだった。


モモヨのステージが終わり、最後に出てきたのは再びオート・モッド。

1曲目は、おおっ、聴きたかった「ラヴ・ジェネレーション」。

最初に出てきた時のノリとは違い、ジュネもラフな感じで、楽しみながら昔の曲……「時の葬列」や「レクイエム」などを歌う。

ゲストとして呼び込まれたのは、バクチクのヤガミ・トール、パーソンズの渡辺貢、さらにパーソンズのジル。異端のヴォーカリスト、ジュネも、この時は楽しさをそのまま表していたのが印象的だった。


それにしても、モモヨ、である。

まさか、またあの人が歌ってるところを観る日が来ようとは。

帰って、ビール飲みつつ、しばらくリザードのレコードを聴いた。

「T.V.マジック」という、テレビに生活を支配された人々を皮肉った曲があるのだが、今なら「P.C.マジック」になるのかな、などと考えてみたりもしながら……。