ポタ…
ポタ………
ポタ…タタタ………
俺のズボンに紅い染みが出来て
それが広がるのを意味もわからず見ていた。
『大野!!』
俺の名前を呼びながら掛けよって来る先輩。
「何を慌ててるんだろう」と思ったら
急に目の前が暗くなった。
弁当を不味そうに
箸で突っつい食べようとしない大野。
明らかに食が進まないようだ。
「翔くんに残しておいてあげる。」
なんて、言い訳をしてたけど
食欲がないのは、まる分かりだっちゅうの。
でも、なんだか怖くて
それ以上突っ込めなかった。
食べ終わった弁当を片付けてたら
大野がボーッと下を見ている。
そこに目を落とすと
ズボンが真っ赤に染まっていた。
『大野!!』
俺が慌てて走る寄ると
大野は鼻を押さえながら倒れてきた。
『大野!
大野!!』
大きな声で呼び掛けるのに返事はなく
俺の呼吸が早くなる。
俺の恐れていたことが現実になる?
俺は「大野」と叫びながら
全身が震えていた。
冗談じゃない………
冗談じゃない………………
そんなこと……………
信じない……………………
『松岡さん!!』
汗だくで顔を強ばらせて
櫻井君が走ってきた。
静かな病院の廊下に
櫻井君の声だけが響いた。
『ど………どうゆう……ことですか?』
青ざめた顔は不安しかないんだろう。
心なしか震えてた。
『今、診察してる。』
と、言うだけで俺も精一杯だった。
処置室に入っていって
もう、何時間ぐらい経ってるんだろう。
もの凄く長く感じるのは
俺たちが不安に思っているから………
口に出したら現実になりそうで
ずっと、
ずっと仕舞っておいた言葉。
それが何度も何度も頭を過る。
「大丈夫。
大丈夫。
大野は大丈夫。」
って、根拠もなく俺は呪文のように呟きながら
いつ開くかわからないドアをじーっと見つめてた。