多部さんが………………


翔くんと……………結婚……………


翔くん…………結婚……………するんだ………


「そうか。」

「よかった。」

って、俺は何度も

自分に言い聞かせるように

自分の心に納得させるように呟いた。




もう………………………………











『大野くんは

いいの?

いいのそれで…………

本当に結婚しちゃっていいの。』

と、多部さんの声が俺を責める。

変なの

結婚しようって人が

これから幸せになろうって人が

なんだか

とても辛そうに見えた。


多部さんは……………

俺が止めてって言ったら

止めてくれるとでも言うんだろうか………


まさかね。



もう、昔のこと……………



翔くんには……………



幸せになってほしい……………



だから

『うん。

おめでとう。

二人で幸せになってください。』

と、もう一度優しく微笑んだ。


俺の笑顔が、悲しみで歪んでませんように………

と、願いながら…………





『櫻井くんは…………

今でも大野くんの事が好きだよ。』

多部さんの言葉に

『まさか。』

と、声が漏れた。

『本当だよ。

わかるもの。

今でも、大野くんのこと………』

多部さんの言葉に被せるように

『勘違いだって。

そりゃあ幼馴染みとして

子供の頃から知ってるから

友達として好きってだけだって…』

と、答えた。

俺の答えに不服そうに

『違うよ。

私、ずっと見てたんだから

大野くんが居なくなってからの櫻井くんを……

ずっと見てたんだから………

中学の時も、櫻井くんと大野くん

いつも神社脇の銀杏の木の下で

二人で楽しそうにしてたのも

私、見ていたんだから。』


そうか、彼女は俺たちが神社の脇で

会っていたのを知ってるんだ。

俺と翔くんが付き合っていたことを知ってたんだ。




『…………そうだとしても………

遠い過去の話だよ。

今は、多部さんを選んで

多部さんと結婚するんでしょ。

もう……………

俺には…………………関係ない。』


そう、翔くんは今

多部さんを選んで

多部さんと共の生きていくって決めたんだ。


俺には………

関係………ない………



『関係がないなら

ちゃんと会って

そして、ちゃんと別れを言ってよ。

じゃないと櫻井くんが可哀想。』

って、とうとう彼女の目から雫が零れた。



彼女の涙を見て

俺は、自分勝手なんだって思い知らされた。

俺の勝手で悲しんでる人

心配してる人

前に進めないでいる人がいるんだって………


初めて知った。



『そ、そっか。

ごめん。

確かに、なにも言わずに

姿を消した俺が悪いんだよね。

多部さんにまで嫌な思いさせて

ごめん。』

俺は、頭を下げた。




『俺ね。

今、ニューヨークに居るんだ。』


俺の言葉に驚いて顔を上げた多部さんは

『え?

ニューヨーク?

それって、アメリカのニューヨーク?』

と、聞いてきた。

『うん。

そう。

そこで絵の勉強をしてるんだ。

平谷先生って言う人が

俺の才能を伸ばしてくれて

ちょっとした個展を開くんだ。』