「あー…………
もしもし………………」
不審感ありありのニノの声。
ちょっと可笑しくなって
俺もわざと変な声を出した。
『し…もし……も…………』
なのに、受話器の向こうで
「え?
うそ。
もしかして…………さとぴ?
ほんとにさとぴ?
どうしたの突然?
ビックリしたじゃん。
マジで?」
と、喜ぶ声が聞こえてきた。
あんな声出したのによくわかったな………
日本最後の夜。
俺は空港の近くのホテルにいた。
日本を離れる前に
父ちゃんと母ちゃんに報告したくて故郷に帰った。
2年ぶりの故郷………
もう、帰って来ないであろう故郷………
懐かしい風景を、俺はしっかり
脳裏に焼きつけて
もう、思い残すことはない。
もう、大丈夫。
って、思ってたのに………
帰り際にニノを見つけた。
ニノの声を聞いて…………
もっと、ニノの声が聞きたくなった。
俺の大事な親友。
もう、本当に会えないと思ったら
思わず掛けてしまった電話。
俺が電話を掛けて
迷惑そうなら直ぐに切ろう
でも、
もし………
喜んでくれるなら…………
そんな思いが俺にダイヤルを回させた。
「なんだよ。
さとぴが掛けて来たくせに
黙ってないでなんか言えよ。」
俺は、目を瞑りながら
ニノの顔を思い浮かべてた。
ニノのちょっとひねくれた顔。
優しく俺を見つめる顔。
笑った顔。
怒った顔。
はにかんだ顔。
意地悪するときの顔。
どれも懐かしくって
鼻の奥が痛くなった。
『…………うん。』
と、返事をしただけで
ポロッと雫が落ちた。
ゆっくり呼吸を整えて
目を上げるとカレンダーが目に留まり
『あっ、そう言えば…………
ニノの誕生日。』
と、思い出した。
「ああ、もうすぐな。
え?
もしかして、それで電話くれたの?」
と、驚いているニノ。
すごいタイミングだって
自分でも驚いた。
『う、うん。』
……………偶然…………だったけど
いい口実ができた。
「ほんとに…………
嬉しい。
俺のこと忘れてなかったんだ。
さとぴってばそっちに行ってから
すっかり都会の人になって
俺たちのこと忘れてんじゃないかって
いじけてたんだぞ。」
って、嬉しそうなニノの声。
だから、
わざと素っ気なく
『都会の人って、
ここだって、そっちとかわりないよ。』
と、答えた。
「そうか。
それでも俺たちからしたら都会だよ。
それより…………
元気か?
元気にしてたか?」
と、俺の心配ばかりするニノ。
『…う…うん。
元気だよ。
元気過ぎるぐらい元気だよ。
皆は?
元気?』
俺は、少しでも心配をかけないように
わざと明るく返事をする。
「うん。
多分な。
あんまり会ってないからさ。
翔ちゃんと同じ学校だけど
科が違うから最近会わないし……
まーくんは仕事が忙しいみたいで
遊びにも来ないよ。」
『そうなんだ。
近くにいたとしても
そんなもんなんだね。』
と、呟いた。
すると、ニノが
「そ、そうかもしれないけど
会おうと思えばすぐ会える。
いつでも会えるんだから。
でも、さとぴは違うよね。
会いたくても会えないじゃないか。
元気かどうかもわからないじゃないか。」
と、怒り出した。
『そうだね。
ごめん。』
「いや、
ごめん。
責めてるんじゃないんだ。
ただ、会えないんだから
せめて……手紙でも、
今みたいに電話でも………
くれたらいいのにって
いつも思ってた。」
『うん。
……………ごめん。』
「そうだ。
夏休みにたまに帰ってこいよ。
俺んちに泊まってさ
色々語り合おうぜ。
いいだろ。
その時に誕生日プレゼント貰ってやるから
用意しといてよ。」
『ふふふ、うん。
そうだね。』
俺は笑って答えた。
曖昧な返事をしたものだから
ニノが
「俺から話そうか?
潤に俺から話してもいいんだぞ。
それとも………
仕方がない。
潤も連れて来てもいいし………」
と、俺が潤くんに言えないんだろうって思ってる。
『はははっ
潤くんに振り回されるよ。』
「あー………
目に浮かぶわ。」
『だろ。
またその頃になったら連絡するよ。
…………………ニノ……………
元気でね。
体に気を付けて…………
みんなにもよろしくね。
じゃあ…………バイバイ。』
バイバイ……………
本当に…………………
バイバイ……………………
みんな………………元気でね。