日本を離れる前に
どうしても行きたいところがあった。
また、いつ日本に帰って来れるかわからないから
どうしても………………
其は、父ちゃんと母ちゃんの墓参り。
ずっと
ずっと……………
来れずにいたから………
先輩が俺を連れてきてくれたんだ。
白百合を供え
そっと手を合わせ
父ちゃんと母ちゃんの眠る墓の前で
今までのこと
これからのことを話して聞かせた。
突然の事故によって両親を失い。
住む家も居場所も失った。
俺には…………何も残ってなかった。
その俺に手を差し伸べてくれたのが潤くん。
でも、その潤くんのために
俺はまた全てを失うことになった。
まあ……………いいさ。
俺はもう、15の時とは違う。
大丈夫……………
『先輩。
色々、ありがとうございました。』
先輩に深々と頭を下げた。
先輩に出会えてよかったって思ってる。
今、こうして前を進めるのは
先輩があってこそだから………
心を込めて
今までの全てに感謝した。
先輩はちょっと照れながら
『そんなこといいよ。
それより
ここまで来たんだから
ちょっと案内しろよ。』
と言って、車に乗り込んだ。
『何もない田舎ですよ。
つまんないですって』
と、俺は車の助手席に座った。
『でも、暫く帰ってこれないんだぞ。
会いたい人とかいないの?
例えば………ほら……
あの………翔くんだったけ?』
先輩の口から翔くんの名前が出てきて驚いた。
『ははは………
よく覚えてましたね。
俺が、忘れてましたよ。』
って、本当は嘘。
ここに来てからずっと
あちらこちらに中学生の翔くんがいる。
会いたい……………
でも………………
あっちゃダメだ。
『なあ、あれは何?』
不意に先輩に呼ばれて顔を上げると
目の前の神社を指差した。
『あっ、あれは……………』
参道にづづく鳥居の列。
あれは、俺たちが待ち合わせてた神社だ。
『行ってみようか。』
と、車を降りて参道を入って行く先輩。
俺は………
行きたい気持ちと
行きたくない気持ちと
半分半分。
今さら、どの面下げて
翔くんとの思い出の場所に行けようか
でも、今行かなければ
今度いつ行けるだろう………
もし、あそこにいって
もし………………
あそこに………………
翔くんがいたら……………
どうしよう…………
でも………………
会いた…………………
でも……………
会えない……
と、考えているのに
体は正直で、自然と動いて
気が付くと、俺は銀杏の木の下にやって来ていた。
大きな銀杏の木に
『デカイ木だな。』
と、先輩が驚嘆してる。
その銀杏の木の下に
中学生の翔くんが立っていた。
2年前と変わらない風景。
翔くんは俺を見つけて笑って手を振る。
俺も翔くんに手を振る。