舞台は夕暮れ時。
高台の公園から見下ろすと、学校があって、その裏手に林があるのが見える。
林の中の足元にゴミが散らばってるのはその学校の学生の仕業らしい。
なんで俺はそれを知ってるのか分からねぇけど、そんな認識があった。
林の際から傾斜があって、その天辺に公園が広がっている。
俺は誰だか知らないおばさんといる。
俺は布団を背負ってる。
まさかこれをそこに不法投棄するんじゃねぇだろうな。
そもそもこんなとこで何してんだかの理由が分からなかったが、次の瞬間には気にならなかった。
辺りは暗くなっていき、俺とそのおばさんの他に誰もいない。
学校にも通りにも、誰もいない。
そんな世界が暗くなっていく。
何だかえらく物寂しい風景だと思った。
大体そこがどこだか分からない。
とりあえず背負った布団がすげえ重たくて、容易に動けそうにない。
用事が終わったのか、次の場面はもう午後八時前で、八時から約束があるのを俺がしきりに気にしている。
布団はなくなっていた。
早く行かねぇと。
気持ちが競りだす。
公園でおばさんとお別れして、俺は約束のある駅まで走った。
途中道端で用をたしたら失敗して片手がやられたから、通りっぱたのスーパーの外付けの蛇口を捻ったら、ホースの中に残ったぬるい水がちょろっとしか出てこなかった。
きたねぇし、それはどうでもいいけど、そこで初めておばさん以外の人と会った。
店員とか客とか、なんつうか、みんなニヤニヤしていた。
声も出さずに。
気持ち悪いな。
なんか日本じゃないみたいだった。
俺はまた走り出す。
あんまり厚手の格好じゃないから、そんなに寒い時期でもないんだろうけど、季節感もない。
夜だからしょうがねぇけどやけに暗いし。
駅前に着いて、そこは来たこともない駅なのに、知ったように飲み屋に入った時に、途端に約束の正体が分からなくなった。
あれ?
俺、誰かに会いに来たんだよな。
誰も知ってる顔がいない。
なんかすげえ気持ち悪い。
誰かとの約束に高揚していたのが、一気に全部なくなる。
で、ただ知らない場所に取り残される。
居た堪れなさが酷い。
誰と会うのかも思い出されない。
しかも、自分が一体どこにいるんだか分からねぇし。
と、バツッと目が醒める。
夢だ。
何だかほんと変な夢が続くよな。
布団が重たい→布団から出られない。
八時に約束→それまでに電車に乗らないと会社に間に合わない。
約束への高揚→起こすための釣り。
安易な結びつけだけど、多分これだろうな。
会社に遅刻しちまう事を懸念した俺が作り出したしょうもない幻だったという事だね。
目覚ましかけ忘れてたし。
あのおばさんは一体誰だったのかな。
なんかどっかで会った気はするんだけどね。
一言も交わさなかったけど。
あとあの約束だけど、あれは一体何だったんだろう。
そこからくるあの高揚は、並みの事じゃないのよ。
昔幼稚園に通っていた時、珍しくおんなじクラスの連中から遊びの誘いを受けて、普段遊んでる公園と別の公園に行った時の事を思い出した。
もう随分時間が経ったくせに、紛れもなくその記憶の中の感覚と夢を見てた時の感覚とが合致した。
知らない世界に行った感覚ってのが、まさにそれだった。
普段暮らしてるとこから、たった数百メートル先に行っただけだったんだけどね。
これは結構分かる人がいると思うんだけどな。
しかし何だったんだろ、あの約束は。
しつこいし、夢の中の事をいちいち蒸し返してもしょうがないんだけどね。
今までお座なりにしてきた約束が多いから、そんな事に少し苛まれてるのかも知れないな。
起きたら全部忘れといてくれねぇと困るよ。
だってどのみち、取り返しがつかねぇんだからよ。
さて、それではここらでごきげんよう。
これからもし夢を見たら、あの約束の正体が分かったりしてな。
そんな訳ねぇか。
最初からないもんを、時にあるって信じちまう。
俺の悪い癖だ。
とりあえず今度こそ、おやすみなさい。