「久々にビックリしたわ」
人影が木陰から全身を晒した。
真っ黒なシルエットでしかない。
どんな顔をしているかもわからない。
ただ、ナカタが思ってた程の体躯はそこになかった。
「あんたは何をしてんだ」
ナカタはボソッと尋ねた。
「俺はバイトだよ」
人影がそう答える。
バイトって事は、ナカタが自分の推理をその答えに重ねる。
「おたくは死ぬって、どうやって死ぬつもり?」
ナカタは答えなかった。
「さっき首吊りの遺体は見たんでしょ?あの人と同じようにするつもり?」
やけにズケズケ聞いてくるじゃねぇか。
「関係ないじゃねぇか。」
ナカタは答えた。
「いや、何なら力貸してやろうかと思ってね」
?
ナカタは沈黙する。
「力を貸すってどうやって」
「楽にしてやろうかって事よ、そんなに死にたきゃ」
男は少し笑い混じりに答えた。
「言っとくけど、俺は人殺しじゃないよ」
尚も笑っている。
ナカタは顔のひきつりを必死に抑えた。
完全に相手のペースだった。
「まぁ、俺もあんたみたいなのと会うのは初めてじゃねぇんだわ」
男は懐中電灯で自分の顔を照らした。
ナカタはそれに戸惑った。
男はナカタの想像よりずっと若々しかった。
下手すりゃ俺より若いんじゃねぇか。
首からは大仰なゴーグルみたいなもんを提げている。
「どうするかは自分で決めれば良いけど、せっかくだからオススメスポットを教えてあげるよ」
男はそう言うとゴーグルを掛けてナカタの脇を奥へと進みだした。
「あんた名前は?」
ナカタは尋ねながら男の後に続いた。
「それ聞いてどうすんのよ」
と笑われる。
「気が向いたら教えてあげるよ」
なんだこいつは。
不思議な事にてき何だか分からねぇけど、興味わいちまったよ。
ナカタは黙って男の後を歩いた。
「なんで死のうと思ってんの」
ナカタに肝心な質問が飛ぶ。
「まあこれも何かの縁だし」
逆の立場なら俺も聞くよな。
「慢性的な鬱でね」
言葉に起こすと何とも安っぽく響く。
「病院行った?」
「行ってねぇよ」
行ったとこで知れたもんだろ。
多分こいつもそれは分かってるだろうと思った。
「鬱の人結構いるよね」
また惚けたような男の返事があった。
「俺もここへ初めて来た時は死のうと思ってたのよ」
ナカタの動きが止まった。
「人生色んな事があるよ」
「そうだな」
専ら悪い事ばかりが続いてね。
ナカタは男にそう続けようと思ったが、何となくそれが言えなかった。
※上記一切は創作につきフィクションです。