大津市の坂本は、かつて比叡山延暦寺や日吉大社の門前町として栄えました。

その後、安土桃山~江戸時代、延暦寺の僧侶が隠遁した際の里坊(僧侶の隠居所)が多く作られ、独特の街並み、史跡、文化財が残され、「重要伝統的建築物保存地区」に認定されているのです。

 

 

織田信長の比叡山焼き討ちの際にこの町も焼失しましたが、徳川家康の側近で天台宗の僧・慈眼大師が延暦寺と共に坂本の町を復興したと云われています。

 

 

 

町のあちこちで石垣が見られ、日本では珍しい石畳の道も幾つか見られます。

 

 

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坂本と云えば、おそば。日吉大社の大鳥居のそばに、老舗のお蕎麦屋さんが二軒あります。

 

 

 

その内の一軒、『本家・鶴㐂そば』は創業が享保元年(1719)。口開けの朝十時に訪問すると、そば打ちの真っ最中で、打ち立てのお蕎麦を戴くことができました。

 

  

 

戴いたのは、名物の「かけそば」と「かやく飯」のセット。打ち立ての蕎麦はキリッとしまって美味しかった。

 

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それでは、坂本の山側に向い、日吉大社に参拝いたします。

ここは、全国に約2~3000社もあるとも云われる、日吉・日枝・山王神社の総本社です。

 

 

古事記に「大山咋神…日枝(ひえ)の山に坐す」の記述があり、創建は崇神天皇(3~4世紀)の代とも云われています。

 

  

 

上の画像・三つの橋は、日吉三橋と呼ばれ、国の重要文化財の認定を受けています。左から大宮橋、走井橋、二宮橋で、日本最古の石橋、穴太衆の作とも云われています。

 

 

日吉大社は東宮、西宮、そして山頂にある奥宮がありますが、今回は奥宮までは行かず、東西を歩きました。

延暦寺と共に、日吉大社も、織田信長に焼き打ちにあいました。しかし、その後、豊臣秀吉が復興に尽力したと伝えられています。彼は山王信仰に篤かっただけでなくく、幼名が「日吉丸」でした。更に、日吉大社が猿を信仰の対象とし、秀吉のあだ名が「猿」だったことが、特別扱いした理由と考えられています。

 

 

西本宮本殿は、1586年の建立。檜皮(ひわだ)葺きで、屋根形式は「日吉造」と呼ばれる、日吉大社特有のもの。正面から見ると入母屋造に見えますが、背面中央の庇(ひさし)部分の軒を切り上げ、この部分が垂直に断ち切られたような形態(縋破風)になっているのが特色なのだそうです。

 

 

西本宮の本殿の横にある桜門も、立派な構えです。

日吉大社には三千本のもみじがあり、毎年11月10日頃〜12月上旬、関西屈指の紅葉名所として賑わうのだそうです。

 

最近の話題としては、日吉大社は、漫画『曇天に笑う』に登場する、曇神社のモデルとなった神社で、2018年3月に実写映画『曇天に笑う』(主演:福士蒼汰、監督:本広克行)が公開され、ここは撮影地なのだそうです。

 

さて、琵琶湖の北東から西南へ、半周する近江路の旅も、終点に近づいてきました。次回の最終回は、比叡山に登ります。

近江路を往く⑦ 最終回 三井寺と比叡山延暦寺