東大とハーバードの大きな差
《東洋経済オンライン 11月27日(火)11時30分配信

今年度からスタートした、東京大学の外国人留学生向け秋入学コース。入学式には、世界から多様な国籍の学生が集まった。

グローバル化による影響を受けるのは、ビジネス界だけではありません。教育の世界にも、グローバル化の波が押し寄せています。今、世界と日本の教育はどう変わろうとしているのでしょうか。ビジネスパーソンや学生、そして、子どもをもつ親たちは、何を知っておくべきなのでしょうか? 
この連載コラムでは、ベネッセコーポレーションでソーシャルイントラプレナー(社内起業家)として活躍し、米国トップ大学進学塾「ルートH」 を担当する藤井雅徳さんに、東大とハーバードに代表される、日米大学の教育の違いをわかりやすく説明してもらいます。日本の教育の問題と可能性を示すことによって、日本の新しい「教育のかたち」を考えていきます。
 東大が外国人留学生向けの秋入学コース「PEAK」を今年度、スタートさせた。また、5年後をメドに、秋入学への全面移行を検討するという。

 その背景にあるのは、東大のグローバル化の遅れである。4学年合わせた学部生、約1万4000名のうち、在学中に海外留学する学生はどのぐらいいると思われるだろうか? 

 2011年(平成23年)のデータは、わずか53名。全学生の0.3%という驚くべき少なさだ。

 東大だから極めて低いという事情もある。東大には、進学振り分け制度(以下、進振り)というものがあり、2年次までの成績を基に、3年次からの進学先、つまり専攻が決まる。そのため、東大に入学しても、すぐにまた猛勉強しなければならないのだ。

 それなら3年次に留学しようと思っても、今度は就職活動が始まってしまう。あるいは資格試験の勉強を始める生徒も多い。というわけで、留学に行こうにも行けないのが東大生なのだ。

 一方、海外から東大にやってくる外国人留学生の数はというと、学部生約1万4000名のうち、わずか199人(平成22年)。全学生の1.4%である。

■ 留学生は3%しかいない

 では、日本全体ではどうだろうか? 

 経済産業省の調査によると、日本の大学に在籍している外国人留学生の比率は3.5%。世界の主要先進国と比べて極めて低い。現役の大学生だけではない。日本に居住する大卒者のうち、外国人が占める比率も0.7%と、一層低い。つまり、優秀な外国人が日本に来ていないのだ。

 IMD(国際経営開発研究所)の調査によると、日本はグローバル人材の育成でも後れを取っている。企業のマネジメント層の国際経験は59カ国中、54位、企業ニーズに合致した語学力は同58位という状況である。

 こうした実態に国や大学が危機感を持ち、日本の大学のグローバル化を促進すべく、秋入学構想を打ち出している。生徒や保護者、教員もこの実態を踏まえたうえで、日本の大学に進学するか、海外の大学に進学するかを検討する必要があるだろう。

 日本の大学に進学する場合と、海外の大学に進学する場合の具体的な違いをさまざまな観点から比較してみよう。

 日本の大学に進学する場合、学習するフィールドは、当たり前だが日本だ。海外はそれが海外である。

 日本の大学に進学する場合、不景気の影響もあり、自宅から地元の大学に進学するケースが増えている。早稲田、慶応の学生では、現在、1都3県出身が7割だ。その7割はほとんど自宅からの通学である。昔のように、県外に出て下宿して大学に通う、という意思自体が減っている。となると、生活するフィールドも慣れ親しんだ地元、親元ということになる。》