対談27『その瞬間の損得を考えたら、沈黙が得』
対談27 『その瞬間の損得を考えたら、沈黙が得』
翼: あのさー。
さっきからお前らの言ってることは、全然意味ねーよ。
原発に対して自由に意見を言えだと?
そんなん言うワケないじゃん。
七雲: やっぱり言えませんかね。
翼: 口を開いたら、
どうしても否定的な論調になっちまう。
この期に及んで
「原発は安全で事故は起きない」
なんて言ったら、
自分はバカですって公言してるようなもんだからな。
緑子: 実際今、事故は起こっておるんだから、当然の帰結じゃ。
だが、貴様どっちの味方なんじゃ。
翼: とにかくだ。
言ったって意味ないし、
もし言ったら村八分だし、
言わないで放っておけば誰かが何とかしてくれる、かもしれない。
危うい橋も渡らず礼も言わず、ただその果実だけ受け取っておけばいい。
仮に果実が無くても、それはそれで別に構わない。
ホラ、言わないほうが断然得だろ?
七雲: でも黙ってたら、
自分の命が危険かもしれないんですよ?
翼: それは未来の、しかも未確定のハナシだ。
被曝するのは自分かもしれんが、自分じゃないかもしれん。
仮に被曝しても、大したことないかもしらん。
だが、もし今原発にアレコレ言ったら、即刻仲間ハズレになるのは確実だ。
さあ、どっちを選ぶ?
その瞬間の損得を考えたら、沈黙のが圧倒的に得だろ。
緑子: そうやって その場その場で
小っちゃな「トク」を選んでるから、
最後の最後に 戦死とか被曝とか、
ドーンと「大損」が降りかかるんじゃよ。
わからんのかバカ。
翼: わからんね。
体制にノーと言った瞬間、日本では全員を敵に回すんだ。
それに比べれば、将来の命の心配なんて安いもんだ。
反対すれば即、非国民だが、賛成すれば猶予が与えられる。
そうやって死の瞬間まで、賛成を選択し続けるんだよ。
七雲: でも最後には戦死じゃないですか。
ちっとも良くないですよ。
翼: いーか?
枠組みには決して歯向かわず、
その枠組みの中で
どうやって自分だけは死なないように巧く立ち回るか、
それが一番の関心事なんだよ。
それが日本における「見識」であり「常識」なんだ。
大上段に枠組みに立ち向かったって、意味ねぇんだ。
緑子: つまり、戦争万歳と追従しながら、
家では息子の千人針を縫うようなモンか。
翼: そうだよ。
美しい日本女性の鏡じゃねぇか。
緑子: つまり日本人のアイデンティティは、
21世紀になっても戦前から何も変わってないということか。
七雲: 私は戦争万歳ではなく、戦争反対と叫びたいです。
翼: ふうん。可哀相に。
だったら当時の自由平和主義者みたいに、
非国民扱いされて石を投げられるだけだ。
しかも救おうとしたその当の相手によってな。
緑子: うううむ。
しかし翼が出て来ると、どうもそっち系の狂った暴論に引きずられるのう。
正しい理論でないことは明白なんだが、
それを受け入れる世の中であることは残念ながら否定できん。
今はそういう時代だということか。
翼: そういう時代なんだよ。
日本が滅びる前には、
自己陶酔的な国粋主義者がワラワラと湧いてくるものなのさ。
これは歴史の必然だよ。
お前ら程度がジタバタしてもどうにもならん。
七雲: ならわかった!
わかりました!
要するに、損得勘定でしか動けないのが、諸悪の根源なんですよ!
これからは
「アンチ損得勘定キャンペーン」を考えましょう。
緑子: なんじゃ、そのキャッチーじゃないコピーは。
翼: 無理だよ、無理無理。
七雲: 次回はその企画です。
緑子ちゃん、きちんと考えてきてくださいね!
緑子: わ…私が?
七雲が考えるんじゃないのか?
七雲: 続く!
緑子: おい、ちょっと待て。


