19話「公金で食っていくシステム」
鬱ノ宮高校の悲劇
第19話「公金で食っていくシステム」
「鬱ノ宮高校 世界ランク第5位復帰記念 式典会場」
第5位復帰?
…そう。
震災と原発事故を機に鬱高の世界ランクは2ケタまで転落した。
それをたった15年でそこまで反転させたのは、
何といっても奈良時代以来1200年ぶり(笑)に現れた女性指導者、
小沢七雲の存在が大きい。
緑子いわく、どの時代も
国家財政と共生する輩が増えれば増えるほど国力は傾く。
古くは公家・旗本・大名・御用商人。
近代になると軍人・軍需産業。
現代は政治家・土建業、…そして原発。
トップと一心同体であれば
それがどんなに理不尽でもヒラの鬱高生は反抗できない。
ふだんの鬱高ならそのまま長期低落傾向は何十年、
下手すると何百年も続くはずだった。
だが、七雲は理事長に就任すると前例を全く考慮せず、
いきなりこの「公金で食っていく」システムに大鉈を振るい始めた。
なんたら審議会の長い長いガス抜き議論という、
骨抜き行程を一気に吹っ飛ばして。
もちろん特権を失う者たちが
死刑宣告をただ座して甘受するわけがない。
かつて四民平等と廃刀例を押し付けられた武士階級のように、
その反撃は熾烈を極めた。
マスコミに圧力をかけてのネガティブキャンペーン。
連日連夜、些細なことを悪意をもって針小棒大にとりあげ、
七雲を稀代の毒婦に仕立て上げようとする。
それでも敵わないとみるや、
ついに暗殺の魔手までも伸ばしてきた。
普通なら七雲は悲劇の政治家として
その志なかばで夭逝したことであろう。
だが、今回に限って「普通」ではなかった。
それは裏社会に通じた右田家の跡取り、右田翼の存在である。
本来なら暗殺者のほうにまわるべき彼が七雲の味方についたことにより、
形勢は五分以上に逆転した。
さすがは蛇の道は蛇、裏社会が仕掛けてくる死のトラップを次々と見破り、
翼は七雲を影から守りきった。
こうして活力を奪っていた上の重しが綺麗に取り除かれると、
鬱高の経済は一気に活性化した。
今まで無駄な目的に浪費されていた膨大なエネルギーが全て復興へと回り、
その目覚しい進捗ぶりは維新後や終戦後を彷彿とさせた。
鬱高は上のバカさえ取り除けば、その勤勉ぶりはいつでも世界一なのだ。
そして、一時期2ケタまで落ちていた世界ランクも、
急速に上昇に転じる。
緑子に言わせると、まだ余力のあるうちに方向転換に成功したのは
有史以来初めてのことらしい。
「鬱ノ宮高校 世界ランク第5位復帰記念 式典会場」
風に翻る横断幕の下、七雲が言う。
「私が今、
生きていられるのも翼君のおかげだね」
後方を歩いていた翼が応える。
「ん? ああ。緑子に言われてるからな。
お前の代わりはいくらでもいるが七雲の代わりはおらん、と」
「ん もう! 緑子ちゃんたら!
…でも、ありがとね」
「ふん。まったく。好き放題に物事を進めやがって。
お前を守るほうの身にもなってみろ」
二人は式典の会場へと入っていく。
緑子: …なあんて結末になればいいんじゃがのう。
七雲: ………。
あ、あたし暗殺されかかるんですかぁ?
緑子: …むう。
これは覚えておくとよい。
この国ではホントに最後の最期、いよいよ断末魔になると
政治家の暗殺が横行し始める。
それが終わりの始まりじゃ。
ここでハッキリ予言しておくぞ。
七雲: もし…そうなったら…どうしたらいいんですかぁ。
緑子: 本編でもくどいほど言っておるが、
そうならんためには一人一人が自分のアタマでモノを考える。
それに尽きる。至極簡単なことなんじゃがのう。
アジア人種にはこれが意外に難しいらしい。
七雲: ところで、風評被害という、
魔法のぉ言葉ぁ~♪
が独り歩きしてますね。
緑子: コレについてはいずれじ~っくりと
文句を言う必要があるな。


