自分達もリングに憧れを持っていましたから、吸い込まれるようにリングに近づいて行きます。
初めて触れるリングの感触。
次第にエスカレートしていき、リングを叩いたり、ロープを触ったり…。
3人でゲラゲラ笑いながら夢中で叩いていました。
隣で叩いていた、内海くんがヒョイと抱えられリングから剥がされました。
間髪入れず自分、三枝木くんも剥がされました。
「テメエら!!リング触んじゃねぇ!!」
と怒鳴られます。
声の主は折原昌夫選手。
当時、新日本プロレスとの対抗戦では、感情を剥き出し、突貫ファイトで人気を集めていました。
テレビに映る折原選手は細身に見えましたが、実際は厚みがありデカかった印象です。
自分達はびびって、その場に固まってしまいました。
担任の先生に怒鳴られるのと比べものにならないくらいで、正に蛇に睨まれたカエル状態。
どうにも出来ない自分達に
「大丈夫?ケガはない?」
と、優しく声をかけていただいた選手がいました。
安良岡裕二選手。
安良岡選手は、自分達、小学生にもわかるように
「僕達は、リングで命をかけて戦っているんだ。だから気安くリングには触ったりしちゃいけないんだ。」
確かこのような内容だったと思います。
その後、安良岡選手は3人にサインを書いてくださいました。
自分は、あいにくサインをして貰うものが無く、先程まで技の名前を書いたメモ帳にシャープペンシルという失礼極まりないお願い。
そんな自分達に嫌な顔をせずに対応していただきました。
現在、共通の知人がいる関係で、折原選手と楽しくお酒を飲む機会があります。
折原選手の昔話や苦労話など貴重な話を聞く時間は楽しみの一つです。
自分が酔っぱらうと必ず、
「初めて観に行ったときにリング触ったら折原さんに首根っこ捕まれて、怒鳴られて自分、小便チビりましたよ。」
と、多少話を大きくして語ると
「その時は申し訳ございませんでした。ヤスは良い奴だなぁ。」
と、笑顔でやりとり。
あの時は、翌日に学校に行って
「折原選手に怒鳴られたよ~。」
武勇伝のように語っていましたが、自分がプロレス業界に入り改めて思い出すと、プロレスの大切な部分を教えていただいた折原選手には非常に感謝しています。

卒業式の写真。
右側が内海くん。左側が自分です。
見ての通りお調子者です。