❏❏❏ 回顧録:2007年9月23日 東京
ステロイド療法79日目、3回目の手術から46日目
9月23日は日曜日だった。
7歳と9歳の子供たちは週末になると「どっか連れて行って」とねだっていた。
我が家はいつも週末になると家族でお出かけしていた。
しかし、私に「がん」が見つかってからそんな生活は一転した。
週末は入院しているパパの病院にお見舞いに行く、そんなことがずっと続いていた。
2月からだから半年以上、そんな生活だ。
子供たちは最初のころ病院に行くのを楽しんでいたようだ。
見たこともない場所だし、車いすとか、電動ベッドがあるからそれでキャッキャやっている時期があった。
しかし、しばらくすると行きたがらないようになった。
子供ながらに雰囲気を察したのだろう。
入院病棟は暗い。
年寄りが多いこともあるが、深刻な病気を抱えている人が多い。
そして私もその一人だ。
パパが元気ないのはすぐにわかっただろうし、妻が泣く場面を何回も見ていた。
だから、病院という場所へは自然と行きたがらなくなった。
そして半年以上たった先月、私は退院した。
しかし、家にいる私は布団で横になっているばかりで皆で楽しいお出かけなんてない。
パパが「散歩して体力つけてくる」といって一人出ていく場面を見るだけだ。
あまりにも不憫に思った私は、この日久しぶりに夢の島公園に行ってみようと提案した。
案の定、子供たちは大喜びした。
妻の運転する車で夢の島公園に行き、土のグラウンドの中央にある芝のような短く刈られた草の上でレジャーシートを広げお弁当を食べた。
正直言って、私は恐々と外に出ている感じだった。
妻と子供たちはおっかけっこをして楽しんでいる。
私はシートの上でそれを眺めている。
今の私に、おっかけっこなんてできるはずもない。
ゆっくりと15分ほどの散歩がやっとなのだから。
バッタを捕まえた、コオロギがいる、と私に報告する子供たちに癒された。
一時は「あと何日、娘と息子の顔を見られるのだろう?」そんな弱気になっていたときもあった。
6回目の退院をしてまだ46日
決してがんを乗り切ったとは言えない。
いつ再発するかもしれない。
でも、今この瞬間、幸せならいいじゃないか、そんな思いでレジャーシートの上に座っていた。