「そこ…入ろうか?」


「うん…」



初詣の人混みで、私が痴漢に遭ってしまった事で、参拝客が少なくなった頃にまた来ようと言う事になり神社の外に出た私達……

少し歩くと、すこし古めかしい…でもとても落ち着いた雰囲気の喫茶店の前に来た


そっとドアを開いて中を見ると、こんな日だからか、店内の席は全部埋まってる様子


准一さんは、振り返り首を横にふった



諦めてドアの取っ手を離すと、閉まり切る寸前に中から声が聞こえた



「席…空きますよ…」





慌ててドアを開くと、少し年輩のカップルが、レジの前に立って、入り口近くの窓際席を指し示している




「ありがとうございます。」



彼がお礼を言い、私はそれに合わせておじぎをした



「参拝は、もう済ませましたか?」




男性が支払っている後ろで、婦人がにっこり微笑みながら声をかけた





「いえ…まだです。
凄い人ごみで…少し時間を置いて行こうかと…」



「謙明ですね…」




婦人がそう言ったタイミングで男性が婦人の背中に手を添えると二人で笑顔で会釈をして出て行った


私達も軽くお辞儀をして席に着いた







「あのご夫婦…素敵だね」



「やっぱり、夫婦だと思う?」



「うん…長年連れ添って、信頼し合ってる…」



「えっ…准一さん、解るの?」



「いや…そんな気がするだけ…

そこに居るだけで、そんな雰囲気が滲み出る…

そう言うの、憧れるね…」



「うん♡」


(私達もそんな風になれたら…)



そう思った瞬間、彼と目が合い
照れくさくなって、目を逸したら

タイミング良く珈琲が運ばれて来て
そそくさと、珈琲カップを手に取った


ふと窓を見ると、外に参拝客の列が見える




「ここからだと、人の列が見えるから
よかったね…」




「うん…………あ、そう言えば…
さっき、笑ったよね?……何か思い出してたの?」




「えっ?…さっきっ…って……

あ〜あの時?」





彼は、参拝客の列を見て、思い出したのかも…


私をかばって、列の外に出た時に、私が、ふと思い出し笑いをしてた事…




「ふふっ……去年の6月に二人でハワイに行ったでしょ?
あの時、二人の男性に絡まれて…
准一さん、覚えてる?」



「うん…もちろん…」




「あの時も、今日みたいに、護ってくれた」




「でも…そこ、笑うとこじゃないでしょ?」




彼が少し拗ねたように言って、珈琲を口にした




「笑った…のとは!ちょ違うわ…

あの時も、今日も…私だけのエスピーみたいで、嬉しくてつい…顔が緩んだのよ…」




「何だ…そうゆう事か……
お望みなら、24時間警護しましょうか?」



なんて、ニヤリと笑うから



「それじゃあ…正式に依頼しようかしら?」


と、返すと…



「承知しました…では、契約書にサインを…」



と言いながら内ポケットから何かを出す振りをして、目が合うと思わず吹き出した




「ハハハ……でも、冗談抜きで

24時間は無理だけど

かずの事は、いつでも守るから…」





そう言って、真っ直ぐに見つめる彼の瞳と

私の手を握る彼の手のぬくもりは、大きな安心をくれた。














「そう言えば…ハワイから帰って出社した時

上手く誤魔化せたかな?」





「ん〜・・・・どうかしら?
私の旅行の写真が少ない事…怪しんでたけど…」




「ハハハ…二人で撮った写真はいっぱい有るけどね…」






珈琲を飲みながら、旅行の思い出を語り合っているうちに、時は過ぎ、参拝客の列が少し空いてきた




「今のうちに、行こうか…」




私達は、店を出ると、改めて初詣に向かった。











【春夏秋冬〜夏〜】

おわり。








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【春夏秋冬】夏編…長々と読んで頂きありがとうございました。
次は、少し間を置いて、秋編になりますので
その時までしばらくお待ちください。(*´∇`*)