バスルームを出ると、早速ルームサービスでワインと、軽いおつまみを注文した
「かず…おいで。」
彼がドライヤーを持って“ここに座って”とソファーをポンポンと叩いて待っていた
私は、促されるままソファーに座ると
彼は、後ろに回り
濡れた髪を解しながらドライヤーの風をあてる
長い指を髪の間を梳くようにすべらしている
その感触は、どんな高級な櫛や、超一流の美容師さんとかより…(知らないけど…たぶん)
彼の手櫛が一番気持ち良くて、凄く優しい・・・
「ありがとう…」
「気持ちいい?」
「うん…とっても…」
「……そう?……良かった……」
とても気持ちよくて、(このまま寝ちゃいそう…)と思った瞬間・・・
ピンポ〜〜ン♪
「あ、来た!」
彼が、ドアに駆け寄り開けると、ボーイさんがワゴンを押して入ってきた
そして、テーブルの上に、注文していたワインと、色とりどりのカナッペが乗った大きなお皿が、置かれた
サーモンや、ローストビーフ、チーズ、トマト……
彩りも華やかで見てるだけで楽しくなる
「乾杯しようか!」
「うん♪」
何に乾杯するわけでもなく、ただ…
こうやって二人でグラスを合わせるだけで、特別な時間を過ごしてるようで幸せを感じていた。
ハワイアンなBGMが流れ
ワインを飲み
ガイドブックを開き
翌日のスケジュールを相談・・・
「何か…ガイドブックの情報って、ありきたりだよね…」
「ん〜…そぅ…だねぇ……
よし!…明日、コンシェルジュに相談してみよう………『穴場教えて下さい!』って…」
「そうね♪…それが良いわ!」
やっぱり、現地のプロに相談するのが一番!
って事で、ミーティングは終了!
その後は、他愛もない話しをしたり、オアフ島に着いてからの写真を見ながら過ぎたばっかりの思い出話しで盛り上がった
「ふぅ〜…何か熱くなってきたわ……
ちょっと、外の風にあたってくる…」
少し酔いが回った頃、顔の火照りを冷まそうと二人でバルコニーへ出た
ハワイの夜は、やっぱり肌寒い……
吹き抜ける風は、潮の香りを運んで来て
今日の出来事を、鮮明に思い出せてくれた
「准一さん……」
「ん?…」
手すりにもたれ掛かり、月明りにぼんやりと見える夜の海を眺めながら、肩がが触れる距離の彼に声をかけると
グラスを口につけながら、チラッと横目で私を見る…
目鼻立ちがはっきりしてて、その大きな瞳でジッと見られると、少し照れる…
「……あの、海でのこと…
凄く嬉しかった…
それに、すごく格好よかったよ♡」
「…そ?…俺は、後悔した…
かずを、一人っきりにした事…
でも、かずにカッコイイって思われたことは、嬉しいな…」
「フフッ……准一さんは、私のヒーローだから」
「…かずだけの、ね…」
肩に腕を回し、覗き込む彼に応えるように首を傾けると、やさしく唇が重なった
軽く啄むようにキスを繰り返すと、彼は私の後ろに回り、お腹に腕を巻き付け、ギュッと抱きし めた
「かず…」
「何?」
彼の低い声が耳の側で聞こえる
「…上手く言えないけど……俺…
戸惑ってる…」
(戸惑ってる…どういう事?…まさか後悔?)
小さな不安が胸の奥で靄(もや)の様に現れた
“そんな事は無い”と思ってはいても、自分に100%の自信がある訳でも無いから、ちょっとした事で不安になってしまう。
微かに震えた私の肩に顔を埋めて
囁くように言う
「こうやって………ずっと一緒にいると
どんどん好きになって…どうしようもなくて…
絶対、他の奴に触れさせたくない!
これって……………束縛…なのかな…」
男性にそこまで思われた事なんて無いし、彼になら逆に束縛されたいと思ってしまう。
多分、交際期間がまだ浅いから、お互いにそう思ってるのかも知れない
でも、純粋に、今の気持ちは
大好きで
大好きで
本当に、大好きでたまらないから…………
「准一さんになら……束縛されたい!」
と、返事をした
私のその言葉に応えるように
抱きしめる腕にギュッと力が込められ…
彼の頭がもぞもぞと動き
首筋に唇を這わせながらキスをしていく………………。