《初詣に訪れた神社》
拝殿へ向かう参拝客の列の中、前方はあまり動かなくなり、後方から押し寄せる人々の間で動く事もままならない状態になっていた…………
(ハァ……何だか…苦しくなってきた……)
「かず…大丈夫か?」
私の表情を読んだ准一さんが、左腕にしがみつく私の手に自分の右手を重ねて聞いた
「…う、うん…大丈夫………」
「もう少しだよ……
でも、こう動か無いんじゃ……思ったより時間……かかりそうだな…」
彼は、少し背伸びするように列の前方を見渡していた
すると、背後に違和感が………
(えっ⁉……誰か触って……る?)
押される人の圧迫感以外に、お尻の方に気持ち悪い動きを感じた
コートの厚い生地越しでは無い!
その内側?
恐らく、コートの後ろのスリットの間から手を入れている…
そしてその手は、モゾモゾとスカートをたくし上げようとしていた
(や、やだ………どうしよ?……)
私は、声を上げられずに准一さんの腕を力強く握って顔を見上げると
異変に気がついた彼が私と視線を合わせた
私は『後ろ………』と、小さな声で言いながら視線で示した
私の背中をチラッと覗き、事態を察知した彼は、左手にしがみつく私の手を解き、右手で私の身体を抱き寄せると同時に左手でお尻を触る腕を掴み上げた
すると、その腕の主(男)は、私の直ぐ後ろでは無く、そのまた後ろから手を伸ばして触っていた。
准一さんは、男を睨みつけ
思いっきり力を入れて握ったのだろう…
その男は、苦痛で顔を歪めていた。
「……二度とするなっ!」
力を込めた重いトーンでそう言って手を離すと、男は腕を擦りながら人混みの間をかき分け逃げて行った
その直後、准一さんは私の手を引き、列の外へと出た
「准一さん……もう少しで拝殿……」
「いいんだ!」
参拝を諦めたのか、准一さんは私の手を引いたまま人混みから離れ、少し開けた場所に出た
「今日は止めよう!」
「えっ?!…だって、あんなに長い時間待ったのに……」
私は、痴漢より、准一さんと初めての初詣を元旦に出来ない事の方が嫌だった
「ダメだ!……また、変な奴が……」
そう言いながら、眉間に皺を寄せ、大きな目を更に見開いて、まるで刑事が犯人を探すように拝殿に向かう列の方を睨んでいた
この人混みではどうしたって密着せざるを得ないわけで、“そんなつもり”が無くても、周りの人々全てが怪しくなってしまうし、私も少し怖い………
このままでは、きっと彼も気が気じゃなくて、ずっとこんな顔をしたまんまかも知れない………
「准一さん……」
「何?………」
「ここ…………怖いよ」
彼の眉間に人差し指を当ててグリグリすると
クスッと笑って私の手を握った
私を気遣ってくれた手
私を守ってくれた手
そして、笑顔で両手を握ってくれている
その手のぬくもりが、優しさがとても嬉しかった
「心配してくれ…ありがとう」
「彼女を護るのは当たり前だろ…かずに卑劣な事する奴は絶対許さない!
さっきだって、周りに人が居なかったら、ぶっ飛ばしてやったよ」
そう言いながら、視線をまた群衆の中へと泳がせた
そして私は、昨年の夏のある事を思いだして口元が緩んだ
「何笑ってんの?」
「んふっ………何でも無い
それより、ちょっと寒いね…」
人混みでは熱気で感じなかったけど、
離れると、冷たい空気が体を包んだ
「あ、じゃあ何処かで少し時間潰して、空いた頃また来ようか?……」
准一さんはそう言って私の手を握りコートのポケットに入れると出口に向って歩き出した……………
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《前の年の夏》
某デパートで買い物途中に准一さんに電話をかけた
「ねぇ、准一さん…写真、見てくれた?」
〔見たよ…〕
「で、どっちがいい?」
〔どっち……って……
どっちもイイって言うか
どっちも良くないって言うか……〕
「もぉ~どういう事?…はっきりして!」
来月(6月)准一さんが、二人で初めての旅行を計画してくれた
4月の初めに、「GW何処か行きたいね」と互いの口から出るものの
「何処も混んでてのんびり出来そうも無いね…」と、半ば諦めかけた時……
日本では梅雨の時期だけど、ハワイは逆に雨も少なくハワイを満喫するには最適だという情報をもとに、難なくハワイに決まった
そして、出発を1ヶ月後に控えた頃、思い切って水着を買おうと一人で買い物に来ていた
でも、迷いに迷って准一さんに決めて貰おうとLINEで写真を送ったのに、「どっちもイイ」とか、「どっちもダメ」とか……よく分からない返事が返ってきた………
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忘れた頃にやって来る…小説【春夏秋冬】の更新(笑)
さて、〜夏〜なのに何故…初詣なんだ?と思った皆さん…
〜春〜の時と同様、この物語は初詣にお尋れた和が、ふと思い出すのをきっかけに進むストーリーなので、冒頭は初詣の途中から始まりました。
と、言うわけで、〜夏〜……終りまでお付き合い宜しくお願いします。